右京医師会との懇談会 12.20 右京医師会館

「災害医療における地区医師会の役割」,「地域医療構想と医師偏在対策にかかわる諸問題」,「令和時代の医師会のあり方,存在意義」について議論

 右京医師会と府医執行部との懇談会が12 月20 日(金),右京医師会館で開催され,右京医師会から10 名,府医から7名が出席。「災害医療における地区医師会の役割」,「地域医療構想と医師偏在対策にかかわる諸問題」,「令和時代の医師会のあり方,存在意義」について,活発な議論が行われた。

災害医療における地区医の役割

右京医師会の取組み

 右京医師会では災害対策委員会を年4回程度開催。災害時の対応について議論,準備が進められている。委員会には区担当者も参画し,LINE での連絡体制を構築中である。また,2020 年にはEMIS 運用を想定した災害時連携運用訓練を医師会,区役所および地域病院で実施予定である。

医師会の災害医療対策

 災害時の対策として以下の項目が医師会には求められる。
  1. 医師会の組織力,ネットワークを最大限に活用して,医療支援を行う
  2. 災害発生前の段階,災害発生直後から地域医療の復興まで支援を行う
  3. 災害発生時は,被災地の都道府県医が管内の被害状況を把握するとともに,行政の対策本部に参画する
 日医の災害支援の最終目標は,被災地に地域医療を取り戻すことであり,行政,多職種との連携が重要である。

災害時の医療体制(京都府)

 府医は保健医療調整本部(行政)に入り,コーディネーターの役割を果たす。
 地区医は,その下の地域保健医療調整本部(被災地の保健所)に入り活動,またJMAT・DMAT・日赤等の各保健医療チームと連携する(厚労省通達より)。

災害時の医療体制(京都市) 

 府医は市災害対策本部(行政)と連携し,地区医はその下の市救急医療調整班(行政)の地域医療コーディネーターとしての役割が求められる。

地区医に求められること

災害時:
地域の医師の安否,診療所の被災状況の報告
平時:
システムの整備やBCP(事業継続計画)の作成(例:電話やインターネットが繋がらなくなった場合の対応等)
 現在,京都府では災害拠点病院だけでなく,二次救急医療機関も含めてBCP を作成しており,今後はその他の病院・診療所にもBCP 作成の要請があると思われる。また,年3回,BCP 作成を内容とした災害対応力強化研修を実施している。

 令和元年9・10 月に発生した台風15・19 号による千葉での停電時は電話・インターネットとも不通になり,想定以上の事態が起きている。そのような場合に,EMISの情報を基に,自転車または徒歩で病院に医師が集結し,必要な場所に医師を振り分ける等を想定,検討する必要がある。

 大阪で南海(トラフ)地震が発生の場合,京都は被災小に分類されてJMAT・DMAT が来ないと想定すると,被災後3日のみならず,1~2週間を地域の診療所で対応しなければならない。さらに,被災者対応だけでなく,日常の診療の継続(薬の供給等)も考える必要がある。災害時の薬に関して地区からは,行政を通すと停滞するため,民間で融通できないか,また,府医が事前に協定してもらえればスムーズに動ける,等の意見が出された。

質疑応答

◇「 右京区に災害拠点病院はなく,災害時には市立病院が拠点病院として最も近いと考えられる。内部体制は取れているのか」と質問が出された。
 体制は取れているはずだが,市立のため,定期的に人事異動があり,対応に慣れた事務方が定着しないという課題がある。医師,看護師に関しては長期勤務のため,問題はないとの認識を示した。

◇「 行政も交えた EMIS の運用訓練は地区医も交えて行う計画はあるか」と質問が出された。 
 現在,二次医療機関に対して基幹災害拠点病院研修会にてEMIS 訓練を行っており,医師会,災害拠点病院以外の医師の参加も可能である。但しEMIS にはID,PW が必要であり,現在地区医には付与されていない。今後,運用方法等の検討が必要であると説明した。

地域医療構想と医師偏在対策にかかわる諸問題

 平成31 年4月1日の医療法・医師法改正の趣旨・概要を説明。今回の改正で医療計画に新たに「医師確保計画」および「外来医療」に関する事項の記載が求められることになった。また,京都府の医師確保計画(中間案)の内容,京都市域地域医療構想調整会議4ブロック意見交換会の開催状況等も併せて説明した。

概要

<医師確保計画(中間案)>
  1. 厚労省公表の医師偏在指標を基に,府内二次医療圏の医師少数区域,医師多数区域を設定
  2. 二次医療圏ごとに医師確保方針を定め,目標医師数を設定
  3. 「 2.」の目標医師数を達成するための施策を定める
  4. 産科および小児科に限定した医師確保計画についても定める
<外来医療に係る医療提供体制の確保>
  1. 府内二次医療圏ごとに外来医師偏在指標を定め,外来医師多数区域を設定
  2. 外来医師多数区域で開設する新規開業者に対して地域で不足する外来医療機能を担うことを求め,外来医療計画に明示
  3. 二次医療圏単位の外来医療機能について,区域に不足する機能,医療機関の所在地等の情報も外来医療計画に明示
 厚労省は上記に基づいて,「医師確保計画」を策定するよう都道府県に求めているが,京都府としては,厚労省が示した医師偏在指標が,地域の実態に即していない点を問題視し,「京都式医師偏在指標」を算出し,可能な限り地域の実情に応じた内容とすべく協議が行われた。また,中間案では,医師少数区域の丹後,南丹を医師確保の重点区域とし,医師確保のための短期的,長期的施策の方針を策定。
 外来医療についても,①診療所の充足状況等を可視化し情報提供,②府医をはじめとする関係団体が開催する在宅医療等の研修情報を提供するなど,独自の取組みを策定。

平成30 年度京都市域地域医療構想調整会議(4ブロック意見交換会)の開催状況

 開催状況,各ブロックにおける主な議論のテーマ,今後病床機能等の変更予定の病院を説明。また2040 年の医療提供体制の展望を見据え,まずは5年後の2025 年までに①地域医療構想の実現,②医師・医療従事者の働き方改革,③実効性のある医師偏在対策,を推進していくとした。

質疑応答

◇「 外来医師多数区域での新規開業希望者に対して多数区域以外へ誘導,また地域で不足する医療機能について協力を求める等の記載があり違和感がある。地域で不足する医療機能は新規開業者に押し付けるのではなく,医師会全体で担うべき」と意見が出された。
 在宅医療等,地区のニーズは増えていくため,新規開業医にのみ押し付けるのではなく,既存の開業医にも在宅医療等の研修を一緒に受けてほしいと要望した。
◇「 先日,厚労省より再編統合の候補となる全国の公立・公的病院が発表され,右京区内の病院も名指しされた。この病院は地域にとって不可欠の医療機関である。地域の状況を把握せず唐突に発表し,患者を不安に陥れたことは,地区医としても受け入れられるものではない」と意見が出された。

令和時代の医師会のあり方,存在意義

 入会率を維持し,財政的に安定した運営を図るため,入会費や会費などをどのように考えるか。専門のクリニックが増える中,かかりつけ医は不足している。学校医,産業医の負担は増え,欠員の補充が難しくなっている。活気があり,様々な課題に対応できる医師会を作るためにはどのようにすればよいか等についての議論が行われた。
◇「 医師会に入会してもらっても,学校医,産業医や医師会の活動等に参加してもらえない,また,活動に参加したくないため,医師会に入会しない医師もおり,学校医が高齢化,世襲化し,負担が増えて悪循環である。国で強制できないか」との質問が出された。
 国で強制することは開業制限につながる。慎重な議論が必要であるとし,府医としてはコミュニケーションを取りつつ,徐々に活動に参加してもらえる方向に誘導できればと回答した。また,研修医の間に教育を行い,将来,府医に戻ってもらえる仕組みづくりに取組んでいることを補足した。
◇「 医師会に入会しない医師はコンサルタントに相談している。医師会がコンサル業務をしたらどうか」との意見が出された。
 開業融資斡旋,市場調査,コンサルタントが過剰な請求をしていないかの判定は可能であるとした。
◇「 地区医師会は 24 も存在しており,多いと思う。統合の可能性はないのか」と質問が出された。
 過去に統合の話はあったものの,地区ごとで入会金,会費,財政状況等が異なるため,実現は難しいのではないかと回答した。

2020年4月15日号TOP