2022年12月15日号
伏見医師会と府医執行部との懇談会が10月28日(金),伏見医師会館にてWebとのハイブリッド形式で開催され,伏見医師会から18名,府医から6名が出席。「新型コロナウイルス対策の現時点での総括と問題点」,「オンライン資格確認システムの導入状況等」をテーマに活発な議論が行われた。
〈注:この記事の内容は10月28日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合がございます〉
~府医における新型コロナウイルス対策~
2019年12月31日に中国の武漢市での発生から現在までを振り返った。早期発見・発熱患者等への対応のために,2020年4月からドライブスルーによる京都府・医師会京都検査センターを最大で6か所に設置した。その後,集合契約による診療・検査医療機関で唾液や鼻腔PCR検査だけでなく抗原検査も可能となり,京都検査センターでは診療・検査医療機関への紹介業務を実施していたが,診療・検査医療機関の増加とともに,診療・検査医療機関の公表がなされ,京都検査センターは2021年4月に検査業務が休止,2021年10月には紹介業務が休止となっている。
第3波以降,患者の急増にともない保健所の機能低下や病床の逼迫が顕著となり,入院可能な病院が減少するなど入院コントロールが難しくなってきたことから,京都市からの委託を受けて府医会館内に「京都市電話診療所」を設置し,会員の協力を得て,リスクの高い自宅療養者(待機者)へのフォローアップを行った。現在は,軽症の自宅療養者は診療・検査医療機関による健康観察(電話診療・オンライン診療)が行われている。
また,かかりつけの産婦人科医でスペース等の問題で自院で診療できない新型コロナウイルス感染症陽性の妊婦に対し,産婦人科医会と連携の下,府医会館駐車場にコンテナハウスを設置し,産科的診療を2022年9月30日まで行った。
~今後の課題~
今冬は,季節性インフルエンザとの同時流行に備える必要があり,国は重症化リスクの低い者とそれ以外(重症化リスクが高い者,高齢者や妊婦,子ども等)に分けて対応する体制を示している。発熱外来の逼迫を避けるため,リスクの低い者の場合は,自己検査によって新型コロナウイルス感染症の検査を行い,ハイリスク者の場合は発熱外来が対応することとなっているが,現在,京都府は各医療機関に対し,季節性インフルエンザ流行時における患者の受け入れ可能枠に関するアンケートを行っており,この結果から具体的な対策について検討する予定である。
現状では,季節性インフルエンザがどの程度流行するのか不明瞭であるが水際対策が緩和され,オーストラリア(6,7月に流行していたが,9月に収束)や東南アジアから季節性インフルエンザが持ち込まれる危険性があることから,府医の「インフルエンザ発生状況マッピングシステム」を再開し,感染拡大傾向の早期把握に努める。
~新型コロナウイルス感染症の発生届~
新型コロナウイルス感染症の発生届については,現場の負担軽減のため,発生届の対象範囲が変更され,①65歳以上,②入院を要する,③重症化のリスクがある,④妊婦―の4種類のみとなり,発生届対象外の患者については,1日に1回,年齢別に患者数を入力していくこととなったが,患者数に発生届分が含まれていない等の誤りや,受付時間が午後5時までであるため,夜診での診察分は翌日,報告となることから報告数にずれが発生する事態が多発しているとして,注意を呼び掛けた。
最後に,質疑応答ではワクチンに関する疑問や接種券に関する要望が出された。
オンライン資格確認システムは国が強力に導入を推進しているが,日医も「安心・安全で質の高い医療を提供していくデータヘルスの基盤」となりうるという前提の下,推進の立場を示している。
導入状況については,直近の厚労省のデータ(10月16日時点)では京都府内2,256件の診療所の内,実際にシステムの運用ができる「本番接続」に至った診療所は538件(23.8%),病院は164病院中95病院(57.9%)となっている。
医療機関における対応の実情を調べるため,京都医報10月1日号でアンケートを行ったところ,300件を超える医療機関から回答をいただいた。
アンケート結果を見ると,「申込」,「業者への相談」は多くの医療機関がすでにされているが,その次の「カードリーダーの到着」,「運用開始の目途」等の段階で「時期不明」等の回答が増え,導入時期の見通しが付かなくなっている状況であり,医療機関は導入に向けて努力しているが,機器や回線の調達等,業者等の対応が必要な場面で苦慮していることが伺えた。
日医は12月の中医協に向けて医療機関から集められた意見を集約し,「やむを得ない事情」で来年4月の導入に間に合わない医療機関への対応や,補助金の取り扱い等について,国に必要な対応を要望する意向を示しており,府医としても,療担規則も改正されていることを踏まえ,医療機関がスムーズに導入できるよう呼び掛けていくとともに,日医が行う「やむを得ない事情」や具体的事例の収集に協力していく意向である。
~質疑応答~
「来年4月までにオンライン資格確認を導入できなければ,罰則があると聞いているが本当か。現状,来年4月までに全国民がマイナンバーカードと保険証の紐づけを完了させるには無理があると感じている」との質問があった。
まず,オンライン資格確認の義務化とマイナンバーと保険証の紐づけは別の問題であり,マイナンバーと保険証を紐づけていなくても受診できる仕組みを作る意向を国は示している。次に,罰則については業者対応等,医療機関がやむを得ない事情で導入が遅れる場合は罰則が科せられることはないと回答した。
さらに,従来は大きな閣議決定の際には日医の意見も聴取するようにしていたが,昨今においてはそれもなくなったことから,オンライン資格確認の義務化のような政策が行われるようになっていると明らかにした。
~入会率の向上について~
医療機関を開業する際,医師会に入会することによって義務が課せられることを懸念し,入会しない事例があったとして,これに対して対策できないかとの意見があった。
府医としては,医師会に入会する意義や重要性を若手医師のころから根付かせていくなど地道に活動することが重要であると回答。さらに,会費を理由に入会を拒否されることも多いが,医師会全体として医師を守る活動や地域医療に貢献していく重要性を示していくことで,組織力向上に努めたいとの意向を示した。
新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的取り扱いについて解説するとともに,個別指導における主な指摘事項について資料提示した。また,療養費同意書の交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書の発行に理解と協力を求めた。