保険だより – 【必読】新型コロナウイルスの感染拡大防止策としての電話等を用いた診療等の臨時的・特例的な取り扱いについて(その2)

 3月15 日号にて既報のとおり,慢性疾患等を有する定期受診患者等が継続的な医療・投薬を必要とする場合の電話等を用いた診療や処方箋の取り扱いに関する通知が示されているところですが,今般,臨時的・特例的な取り扱い(その2)が示されましたのでお知らせします。

 慢性疾患等を有する定期受診患者等に対する診療については, 対面診療が原則であるところ,医師が来院による感染の危険性や当該患者の疾患の状態等を考慮した上で治療上必要と判断した場合,発症が容易に予測される症状の変化に対して,医療計画や診療録への記載等の要件のもと,電話等を用いた診療により処方することが可能とされています。

 あわせて関連する診療報酬の取り扱いのQ&Aも示され,特定疾患等の患者に対して電話再診した際に,診療計画などに基づき療養上の管理を行った場合,特定疾患療養管理料等の「情報通信機器を用いた場合」の点数(100 点)を準用して算定できることとするものです。オンライン診療料の届け出をしていない医療機関でも算定できます。

 なお,これらの取り扱いは,今後の流行状況の変化等を踏まえ,変更・廃止される際には,厚労省からその旨の連絡がされる予定です。

臨時的・特例的な取扱いについて(3月19 日厚労省事務連絡) 

1.慢性疾患等を有する定期受診患者等に対する診療等について
(1)これまでも処方されていた慢性疾患治療薬の処方について
 既に診断されている慢性疾患等について,これまでも処方されていた慢性疾患治療薬を電話や
情報通信機器を用いた診療により処方する場合は,2月28 日事務連絡(3月15 日号参照)で示
した留意点に沿って実施すること。
(2)発症が容易に予測される症状の変化に対する処方について
 既に診断され治療中の慢性疾患等を有する患者について,当該患者が複数回以上受診している
かかりつけ医等が来院による新型コロナウイルスへの感染の危険性や当該患者の疾患の状態等を
考慮した上で治療上必要と判断した場合に限り,当該患者の原疾患により発症が容易に予測され
る症状の変化に対して,これまで処方されていない慢性疾患治療薬を電話や情報通信機器を用い
た診療により処方することは,可能であること。ただし,次に掲げる場合に応じて,それぞれ次
に掲げる要件を満たす必要があること。
①既に当該患者に対して定期的なオンライン診療を行っている場合
 オンライン診療を行う前に作成していた診療計画に,発症が容易に予測される症状の変化
を新たに追記するとともに,当該診療計画の変更について患者の合意を得ておくこと。なお,
上記により追記を行う場合においては,オンライン診療により十分な医学的評価を行い,その評価に基づいて追記を行うこと。また,本事務連絡の取扱いの廃止後においては,直接の対面診療を行うこと。
②これまで当該患者に対して定期的なオンライン診療を行っていない場合(既に当該患者に対して(1)により電話や情報通信機器を用いた診療を行っている場合を含む。)
 電話や情報通信機器を用いた診療により生じるおそれのある不利益,発症が容易に予測される症状の変化,処方する医薬品等について,患者に説明し,合意を得ておくこと。また,その説明内容について診療録に記載すること。なお,本事務連絡の取扱いの廃止後においては,直接の対面診療を行うこと。
(3)処方箋の送付や薬局における調剤,服薬指導の取扱いについて
 上記(2)の場合における処方箋の送付や薬局における調剤,服薬指導の取扱いについては,上記(1)の場合と同様に,2月28日事務連絡で示した留意点に沿って実施すること。なお,処方箋には,本事務連絡に基づく処方であることを明記すること。
2.新型コロナウイルスへの感染を疑う患者に対する診療等について
(1)新型コロナウイルスへの感染を疑う患者の診療について
 継続した発熱等,新型コロナウイルスへの感染を疑う患者の診療については,2月28日事務連絡においても示したとおり,「視診」や「問診」だけでは正確な診断や重症度の評価が困難であり,初診から電話や情報通信機器を用いて診療を行った場合,重症化のおそれや他の疾患を見逃すおそれもあることから,初診で電話や情報通信機器を用いた診療を行うことが許容される場合には該当せず,直接の対面による診療を行うこと。
(2)新型コロナウイルスへの感染を疑う患者に対する健康医療相談や受診勧奨について
 新型コロナウイルスへの感染を疑う患者からの求めに応じて,電話や情報通信機器を用いて,対面を要しない健康医療相談や受診勧奨を行うことは可能であること。(遠隔健康医療相談やオンライン受診勧奨の定義等については,「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(平成30年3月厚生労働省策定)に記載のとおり)
(3)感染が拡大した場合の症状が無い感染症患者等に対する在宅での経過観察について
 現行では,新型コロナウイルス感染症と診断された場合は,原則として,感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)に基づき入院措置を行って治療することとされているが,今後の感染拡大により,入院を要する患者が増大し,重症者や重症化するおそれが高い者に対する入院医療の提供に支障をきたすと判断される場合,PCR検査の結果が陽性の患者であっても,高齢者や基礎疾患を有する方等に該当せず,症状が無い又は医学的に症状が軽い患者については,在宅での安静・療養とすることも想定される。
 新型コロナウイルス感染症の診断や治療が直接の対面診療により行われた患者に対して,在宅での安静・療養が必要な期間中に,在宅での経過観察結果を受けて,当該患者の診断を行った医師又は,かかりつけ医等からの紹介に基づき新型コロナウイルス感染症の診断や治療を行った医師から情報提供を受けた当該かかりつけ医は,患者の求めに応じて診療を行う場合は,その医師が必要と判断した場合に限り,電話や情報通信機器を用いた診療により,それぞれの疾患について発症が容易に予測される症状の変化に対して必要な薬剤を処方して差し支えないこと。

新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その6およびその7)

問1  オンライン診療料の留意事項では,「診療計画に基づかない他の傷病に対する診療は,対面診療で行うことが原則」とされているが,3月19日事務連絡の「1(2)①」にあるように,慢性疾患等を有する定期受診患者等に対する診療等について,既に当該患者に対して定期的なオンライン診療を行っている場合であって,発症が容易に予測される症状の変化に対する処方を行うとき,診療報酬の算定に当たっては,どのようにすればよいか。

(答) 通常のオンライン診療料と同様の取扱いとして差し支えない。

問2  3月19日事務連絡の「1(2)②」にあるように,慢性疾患等を有する定期受診患者等に対する診療等について,これまで当該患者に対して定期的なオンライン診療を行っていない場合であって,発症が容易に予測される症状の変化に対する処方を行うとき,診療報酬の算定に当たっては,どのようにすればよいか。

(答) 「新型コロナウイルス感染症患者の増加に際しての電話や情報通信機器を用いた診療や処方箋の取扱いについて」(2月28日事務連絡)に関連する臨時的な診療報酬の取扱いと同様の取扱いとして差し支えない。

問3  3月19日事務連絡の「1(2)」の場合について,ファクシミリ等により処方箋情報を受け付けた保険薬局において,当該処方箋情報に基づく調剤を行った場合,調剤報酬の算定に当たっては,どのようにすればよいか。

(答) 2月28日事務連絡に関連する臨時的な診療報酬の取扱いと同様の取扱いとして差し支えない。

問4  3月19日事務連絡の「2(3)」の場合について,新型コロナウイルス感染症の診断や治療が直接の対面診療により行われた患者に対して,在宅での安静・療養が必要な期間中に,在宅での経過観察結果を受けて,当該患者の診断を行った医師又は,かかりつけ医等からの紹介に基づき新型コロナウイルス感染症の診断や治療を行った医師から情報提供を受けた当該かかりつけ医が,患者の求めに応じて,電話や情報通信機器を用いて,それぞれの疾患について発症が容易に予測される症状の変化に対して必要な薬剤を処方した場合に,診療報酬等の算定に当たっては,どのようにすればよいか。

(答) 2月28日事務連絡に関連する臨時的な診療報酬の取扱いと同様の取扱いとして差し支えない。

問5  A001再診料の地域包括診療加算及びB001-2-9地域包括診療料の施設基準に規定する慢性疾患の指導に係る適切な研修について,2年毎の届出が必要とされているが,新型コロナウイルスの感染拡大防止のため,当該研修が中止される等のやむを得ない事情により,研修に係る施設基準を満たせない場合においても,届出を辞退する必要があるか。

(答) 届出を辞退する必要はなく,引き続き算定可能である。ただし,研修が受けられるようになった場合には,速やかに研修を受講し,遅滞なく届出を行うこと。

問6  A234医療安全対策加算の医療安全対策地域連携加算及びA234-2感染防止対策加算の感染防止対策地域連携加算の施設基準に規定する年1回程度の評価について,新型コロナウイルスの感染拡大防止のため実施できない場合においても,届出を辞退する必要があるか。

(答) 届出を辞退する必要はない。ただし,実施できるようになった場合には,速やかに評価を実施すること。

問7  事務連絡により,慢性疾患を有する定期受診患者に対して,電話や情報通信機器を用いた診療及び処方を行うことが可能とされた。この場合であって,当該患者に対し,電話や情報通信機器を用いた診療を行う以前より,対面診療において診療計画等に基づき療養上の管理を行っており,電話や情報通信機器を用いた診療においても当該計画等に基づく管理を行った場合,どのような取扱いとなるか。

(答) 電話や情報通信機器を用いた診療を行う以前より,対面診療において診療計画等に基づき療養上の管理を行い,「情報通信機器を用いた場合」が注に規定されている管理料等を算定していた患者に対して,電話や情報通信機器を用いた診療においても当該計画等に基づく管理を行う場合は,当該管理料等の注に規定する「情報通信機器を用いた場合」の点数を算定できる。
 なお,当該管理を行う場合,対面診療の際の診療計画等については,必要な見直しを行うこと。

問8  問7における「管理料等」とは,何を指すのか。

(答) 特定疾患療養管理料,小児科療養指導料,てんかん指導料,難病外来指導管理料,糖尿病透析予防指導管理料,地域包括診療料,認知症地域包括診療料及び生活習慣病管理料を指す。

 問9  保険医療機関の所在地と患家の所在地との距離が16 キロメートルを超える往診又は訪問診療(以下,「往診等」という。)については,当該保険医療機関からの往診等を必要とする絶対的な理由がある場合には認められることとされており(「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和2年3月5日保医発0305 第1号)),具体的には,①患家の所在地から半径16 キロメートル以内に患家の求める診療に専門的に対応できる保険医療機関が存在しない場合,②患者の求める診療に専門的に対応できる保険医療機関が存在していても当該保険医療機関が往診等を行っていない場合などが考えられる(「疑義解釈資料の送付について(その7)」(平成19 年4月20 日付医療課事務連絡))とされている。例えば,自宅で療養する新型コロナウイルス感染症患者に往診等が必要な場合であって,対応可能な医療機関が近隣に存在しない場合や対応可能な医療機関が近隣に存在していても往診等を行っていない場合は,「16 キロメートルを超える往診等を必要とする絶対的な理由」に含まれるか。

(答) ご指摘の事例は,「絶対的な理由」に含まれる。

2020年4月15日号TOP