保険だより – 【必読】新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話等を用いた診療の時限的・特例的な取り扱いについて

  新型コロナウイルス感染症緊急経済対策(4月7日閣議決定) において,「新型コロナウイルス感染症が急激に拡大している状況の中で,院内感染を含む感染防止のため,非常時の対応として, オンライン・電話による診療,オンライン・電話による服薬指導が希望する患者によって活用されるよう直ちに制度を見直し, できる限り早期に実施する」とされたことを踏まえ,4月10 日付で電話や情報通信機器を用いた診療等の取り扱いおよび診療報酬上の臨時的な取り扱いが見直され,下記の事務連絡が出されましたのでお知らせします。

  これにともない,前号にてお知らせした「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その6およびその7)」の問7および問8が廃止されていますのでご留意ください。

診療報酬上の臨時的な取扱い(その10) 

1.初診からの電話や情報通信機器を用いた診療の実施について

  次頁の4月10 日事務連絡1.(1)に規定する初診から電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方をする場合には,当該患者の診療について,A000 初診料の注2に規定する 214 点を算定すること。その際は,4月10 日事務連絡における留意点等を踏まえ,適切に診療を行うこと。

  また,その際,医薬品の処方を行い,又はファクシミリ等で処方箋情報を送付する場合は,調剤料,処方料,処方箋料,調剤技術基本料,又は薬剤料を算定することができる。

  ただし,4月10 日事務連絡1.(1)に規定する場合であっても,既に診療を継続中の患者が, 他の疾患について初診があった場合には,電話等再診料を算定すること。

2.慢性疾患を有する定期受診患者に対して,電話や情報通信機器を用いた診療及び処方を行う場合について

  新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から,慢性疾患を有する定期受診患者に対して, 電話や情報通信機器を用いた診療及び処方を行う場合であって,電話や情報通信機器を用いた診療を行う以前より,対面診療において診療計画等に基づき療養上の管理を行い,「情報通信機器を用いた場合」が注に規定されている管理料等(※1)を算定していた患者に対して,電話や情報通信機器を用いた診療においても当該計画等に基づく管理を行う場合は,B000 特定疾患療養管理料の2に規定する「許可病床数が100 床未満の病院の場合」の147 点を月1回に限り算定できることとすること(※2,※3)。

※1 特定疾患療養管理料,小児科療養指導料,てんかん指導料,難病外来指導管理料,糖尿病透析予防指導管理料,地域包括診療料,認知症地域包括診療料,生活習慣病管理料

※2 4月9日までに電話再診等で療養上の管理を行った患者は,「情報通信機器を用いた場合」(100 点)を算定し,4月10 日以降の患者は147 点を算定する。

※3 例えば小児科療養指導料の対象患者に電話再診等で療養上の管理を行った場合も,4月10 日以降は147 点を算定する。

新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて(4月10 日事務連絡) 

1.医療機関における対応

(1)初診からの電話や情報通信機器を用いた診療の実施について

  患者から電話等により診療等の求めを受けた場合において,診療等の求めを受けた医療機関の医師は,当該医師が電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方が当該医師の責任の下で医学的に可能であると判断した範囲において,初診から電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方をして差し支えないこと。ただし,麻薬及び向精神薬の処方をしてはならないこと。

  診療の際,できる限り,過去の診療録,診療情報提供書,地域医療情報連携ネットワーク(※) 又は健康診断の結果等(以下「診療録等」という。)により当該患者の基礎疾患の情報を把握・確認した上で,診断や処方を行うこと。診療録等により当該患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は,処方日数は7日間を上限とするとともに,麻薬及び向精神薬に加え,特に安全管理が必要な医薬品(いわゆる「ハイリスク薬」)として,診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤(抗悪性腫瘍剤,免疫抑制剤等)の処方をしてはならないこと。

(※) 患者の同意を得た上で,医療機関間において,診療上必要な医療情報(患者の基本情報,処方データ,検査データ,画像データ等)を電子的に共有・閲覧できる仕組み

  なお,当該医師が電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方を行うことが困難であると判断し,診断や処方を行わなかった場合において,対面での診療を促す又は他の診療可能な医療機関を紹介するといった対応を行った場合は,受診勧奨に該当するものであり,こうした対応を行うことは医師法(昭和23 年法律第201 号)第19 条第1項に規定する応招義務に違反するものではないこと。

(2)初診から電話や情報通信機器を用いた診療を実施する場合の留意点について

① 実施に当たっての条件及び留意点

  上記(1)により初診から電話や情報通信機器を用いて診療を行う場合は,以下アからウまでに掲げる条件を満たした上で行うこと。

ア 初診から電話や情報通信機器を用いて診療を行うことが適していない症状や疾病等,生ずるおそれのある不利益,急病急変時の対応方針等について,医師から患者に対して十分な情報を提供し,説明した上で,その説明内容について診療録に記載すること(※)。

(※) 説明に当たっては,「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(平成30 年3月厚生労働省策定。以下「指針」という。)Ⅴの1.(1)に定める説明や同意に関する内容を参照すること。

イ 医師が地域における医療機関の連携の下で実効あるフォローアップを可能とするため,対面による診療が必要と判断される場合は,電話や情報通信機器を用いた診療を実施した医療機関において速やかに対面による診療に移行する又は,それが困難な場合は,あらかじめ承諾を得た他の医療機関に速やかに紹介すること。

ウ 電話や情報通信機器を用いて診療を行う場合においては,窓口での被保険者の確認等の手続きが行われず,また,診療も問診と視診に限定されていることなどから,対面で診療を行う場合と比べて,患者の身元の確認や心身の状態に関する情報を得ることが困難であり,患者のなりすましの防止や虚偽の申告による処方を防止する観点から,以下の措置を講じること。

・視覚の情報を含む情報通信手段を用いて診療を行う場合は,患者については被保険者証により受給資格を,医師については顔写真付きの身分証明書により本人確認を,互いに行うこと。その際,医師にあっては医師の資格を有していることを証明することが望ましい。

・電話を用いて診療を行う場合は,当該患者の被保険者証の写しをファクシミリで医療機関に送付する,被保険者証を撮影した写真の電子データを電子メールに添付して医療機関に送付する等により,受給資格の確認を行うこと。

・電話を用いて診療を行う場合であって,上記に示す方法による本人確認が困難な患者についても,電話により氏名,生年月日,連絡先(電話番号,住所,勤務先等)に加え,保険者名,保険者番号,記号,番号等の被保険者証の券面記載事項を確認することで診療を行うこととしても差し支えないこと。

・なお,被保険者証の確認に加えて患者の本人確認を行う場合には,「保険医療機関等において本人確認を実施する場合の方法について」(令和2年1月10日付け保保発0110 第1号,保国発0110第1号,保高発0110第1号,保医発0110第1号厚生労働省保険局保険課長,国民健康保険課長,高齢者医療課長,医療課長連名通知)等に留意して適切に対応されたい。

・虚偽の申告による処方が疑われる事例があった場合は,その旨を所在地の都道府県に報告すること。報告を受けた都道府県は,管下の医療機関に注意喚起を図るなど,同様の事例の発生の防止に努めること。

② その他

  患者が保険医療機関に対して支払う一部負担金等の支払方法は,銀行振込,クレジットカード決済,その他電子決済等の支払方法により実施して差し支えないこと。

(3)2度目以降の診療を電話や情報通信機器を用いて実施する場合について

① 既に対面で診断され治療中の疾患を抱える患者について

  既に対面で診断され治療中の疾患を抱える患者について,電話や情報通信機器を用いた診療により,当該患者に対して,これまでも処方されていた医薬品を処方することは事前に診療計画が作成されていない場合であっても差し支えないこと。

  また,当該患者の当該疾患により発症が容易に予測される症状の変化に対して,これまで処方されていない医薬品の処方をしても差し支えないこと。ただし,次に掲げる場合に応じて,それぞれ次に掲げる要件を満たす必要があること。なお,感染が収束して本事務連絡が廃止された後に診療を継続する場合は,直接の対面診療を行うこと。

ア 既に当該患者に対して定期的なオンライン診療(※)を行っている場合

  (略)

イ これまで当該患者に対して定期的なオンライン診療を行っていない場合(既に当該患者に対して2月28日事務連絡に基づき電話や情報通信機器を用いた診療を行っている場合を含む。)

  電話や情報通信機器を用いた診療により生じるおそれのある不利益,発症が容易に予測される症状の変化,処方する医薬品等について,患者に説明し,同意を得ておくこと。また,その説明内容について診療録に記載すること。

(※) 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(平成30年3月厚生労働省策定。以下「指針」という。)が適用され,指針に沿って行われる診療

② 上記(1)により電話や情通信機器を用いて初診を行った患者について

  上記(1)により電話や情通信機器を用いて初診を行った患者に対して,2度目以降の診療も電話や情報通信機器を用いて行う場合については,上記(1)の記載に沿って実施すること。なお,上記(1)による診療は,問診及び視診に限定されたものであることから,その際に作成した診療録は,上記(1)に記載した「過去の診療録」には該当しないこと。また,感染が収束して本事務連絡が廃止された後に診療を継続する場合は,直接の対面診療を行うこと。

(4)処方箋の取扱いについて

  患者が,薬局において電話や情報通信機器による情報の提供及び指導(以下「服薬指導等」という。)を希望する場合は,処方箋の備考欄に「0410対応」と記載し,当該患者の同意を得て,医療機関から患者が希望する薬局にファクシミリ等により処方箋情報を送付すること。その際,医師は診療録に送付先の薬局を記載すること。また,医療機関は,処方箋原本を保管し,処方箋情報を送付した薬局に当該処方箋原本を送付すること。

  上記(1)の診療により処方を行う際,診療録等により患者の基礎疾患を把握できていない場合は,処方箋の備考欄にその旨を明記すること。

  なお,院内処方を行う場合は,患者と相談の上,医療機関から直接配送等により患者へ薬剤を渡すこととして差し支えないこと。その具体的な実施方法については,下記(※)に準じて行うこと。

※薬剤の配送等について

  調剤した薬剤は,患者と相談の上,当該薬剤の品質の保持(温度管理を含む。)や,確実な授与等がなされる方法(書留郵便等)で患者へ渡すこと。薬局は,薬剤の発送後,当該薬剤が確実に患者に授与されたことを電話等により確認すること。

  また,品質の保持(温度管理を含む。)に特別の注意を要する薬剤や,早急に授与する必要のある薬剤については,適切な配送方法を利用する,薬局の従事者が届ける,患者又はその家族等に来局を求める等,工夫して対応すること。

  患者が支払う配送料及び薬剤費等については,配送業者による代金引換の他,銀行振込,クレジットカード決済,その他電子決済等の支払方法により実施して差し支えないこと。

(5)実施状況の報告について

  上記(1)及び(3)②により電話や情報通信機器を用いた診療や受診勧奨を行う医療機関は, その実施状況について,別添1の様式(略)により,所在地の都道府県に毎月報告を行うこと。また, 各都道府県は管下の医療機関における毎月の実施状況をとりまとめ,厚生労働省に報告を行うこと。

(6)オンライン診療を実施するための研修受講の猶予について

  指針において,2020 年4月以降,オンライン診療を実施する医師は,厚生労働省が定める研修を受講しなければならないとされており,オンライン診療及び本事務連絡に基づく電話や情報通信機器を用いた診療を実施する医師は当該研修を受講することが望ましいが,新型コロナウイルス感染症が拡大している状況に鑑み,本事務連絡による時限的・特例的な取扱いが継続している間は,当該研修を受講していない医師が,オンライン診療及び本事務連絡に基づく電話や情報通信機器を用いた診療を実施しても差し支えないこと。なお,感染が収束して本事務連絡が廃止された場合は,指針に定めるとおり,研修を受講した医師でなければオンライン診療を実施できないことに留意すること。

2.薬局における対応

  (略) 

3.新型コロナウイルス感染症患者に対する診療等について

(1) 自宅療養又は宿泊療養する軽症者等に対する診療等について

  患者が増加し重症者等に対する入院医療の提供に支障をきたすおそれがあると判断する都道府県では,重症者等に対する医療提供に移す観点から,入院治療が必要ない軽症者等は自宅療養又は宿泊施設等での療養とすることとされている。

  自宅療養又は宿泊施設等での療養とされた軽症者等について,自宅や宿泊施設等での療養期間中の健康管理において,新型コロナウイルス感染症の増悪が疑われる場合や,それ以外の疾患が疑われる場合において,当該患者の診断を行った医師又は新型コロナウイルス感染症の診断や治療を行った医師から情報提供を受けた医師は,医学的に電話や情通信機器を用いた診療により診断や処方が可能であると判断した範囲において,患者の求めに応じて,電話や情報通信機器を用いた診療により,必要な薬剤を処方して差し支えないこと。その際,医師は,自宅療養又は宿泊療養する軽症者等に対する処方であることが分かるよう,処方箋の備考欄に「CoV 自宅」又は「CoV 宿泊」と記載すること。また,処方する薬剤を配送等により患者へ渡す場合は,当該患者が新型コロナウイルス感染症の軽症者等であることを薬局や配送業者が知ることになるため,それについて当該患者の同意を得る必要があること。当該処方について,薬局で調剤する場合は, 薬局における当該患者に対する服薬指導は電話や情報通信機器を用いて行って差し支えないこと。

(2)入院中の新型コロナウイルス感染症患者に対する診療等について

  対処方針においては,感染者の大幅な増加を見据え,一般の医療機関の一般病床等の活用も検討し,ピーク時の入院患者を受け入れるために必要な病床を確保することとされている。今後,感染の更なる拡大により,一般の医療機関の一般病床等に新型コロナウイルス感染症患者を入院させ,十分な集中治療の経験がない医師等が当該患者を診療しなければならない場合等において,当該患者に対し,人工呼吸器による管理等の集中治療を適切に行うため,情報通信機器を用いて,他の医療機関の呼吸器や感染症の専門医等が,呼吸器の設定変更の指示を出すことなどを含め,十分な集中治療の経験がない医師等と連携して診療を行うことは差し支えないこと。

4.医療関係者,国民・患者への周知徹底

  国民・患者に対して,電話や情報通信機器等による診療を受けられる医療機関の情報を提供するため,本事務連絡に基づき電話や情報通信機器を用いた診療を実施する医療機関の一覧を作成し,厚生労働省のホームページ等で公表することとする。このため,各都道府県においては,関係団体とも適宜協力をしながら,別添2の様式(略)により,管下の医療機関のうち,本事務連絡に基づき電話や情報通信機器を用いた診療を実施する医療機関を把握するとともに,厚生労働省にその結果を報告すること。また,当該医療機関の一覧については,各都道府県においても,関係団体とも適宜連携をしながら住民や医療関係者への周知を図られたい。

  なお,医療機関は,オンライン診療及び本事務連絡に基づく電話や情報通信機器を用いた診療を実施していることについて,その旨を医療に関する広告として広告可能であること。

5.本事務連絡による対応期間内の検証

  (略)

2020年5月1日号TOP