学術講演会における「確認問題」

京都消化器医会 定例学術講演会
とき:1月 14 日(土)  ところ:WEB 配信

「機能性ディスペプシア診療の最新の知見 ~ガイドライン 2021 をふまえて~」

国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長/
東京医科大学消化器内視鏡学講座 兼任教授 上村 直実 氏

設問 1 日本で『機能性ディスペプシア』という病名はあまり馴染みのないものですが,一般的に使用されている『慢性胃炎』や『ピロリ感染胃炎』および『内視鏡的胃炎』との違いは何か?

解答・解説 1

     器質的疾患の『ピロリ感染胃炎』に対する除菌治療が保険適用となった2013年に,消化管運動改善薬アコチアミドの薬事承認取得のための臨床治験において対象疾患とされたのが始まりで,この臨床治験において良好な結果を得たために世界で初めて『機能性ディスペプシア』が保険病名となった。
従来,『ピロリ感染の組織学的胃炎』,『内視鏡的胃炎』,『症候性胃炎』に加えて『保険病名としての慢性胃炎』の4種類がすべて『慢性胃炎』と呼ばれていたが,2013年以降はそれぞれ『ピロリ感染の組織学的胃炎』,『内視鏡的所見』,『機能性ディスペプシア』と区分されて診療されるようになった。なお『慢性胃炎』も保険診療上まだ頻用されている病名である。

2013 年から大きく変わった『慢性胃炎』

設問 2 『機能性ディスペプシア』の診断は,内視鏡検査で症状の原因となる器質的疾患を認めないことが条件となっているが,保険診療上,『逆流性食道炎を含む胃食道逆流症:GERD』や『慢性胃炎』との併記は可能か?

解答・解説 2

     『GERD』や『慢性胃炎』,『機能性ディスペプシア』との併記は可能。
以前,FD と GERD や慢性胃炎との併記を認めない都道府県もあったが,最近はどこでも認めているようである。
診断に内視鏡検査の必要性が焦点になっているが, 厚生労働省は『添付文書に記されているのでなくすのは難しい』との見解。一方,内視鏡実施日の記述などの緩和がなされつつあるようだ。

設問 3 『機能性ディスペプシア』診療ガイドライン 2021 において,FD に対して推奨されている治療薬剤は?

解答・解説 3

     『機能性ディスペプシア』の診療ガイドライン2021において,FDに対して最も推奨されている治療薬剤は,精度の高いデザインの臨床試験で有用性が示されているPPI,アコチアミド(消化管運動改善薬),六君子湯(漢方薬)。このうちFDに対する薬事承認を得ているのはアコチアミドのみである。

2023年4月15日号TOP