第153回 日医臨時代議員会

かかりつけ医・かかりつけ医機能の評価のあり方について

~谷口府医副会長が代表質問で日医の見解問う~

 令和5年3月26日(日),日医臨時代議員会が開催され,令和5年度事業計画および予算について報告されるとともに,定款・諸規定の一部改正案が上程され,賛成多数で承認された。また,同日の代表質問では,近畿ブロックを代表し,谷口府医副会長が質問に立ち,かかりつけ医・かかりつけ医機能の評価のあり方について日医の見解を求めた。

■会務遂行能力の向上に向け,常任理事4名を増員

~会員増強・医政活動を強力に推進~
 第1号議案として,常任理事4名を増員する定款・諸規程の一部改正案が上程され,賛成多数で承認された。改正は4月1日施行で,6月の定例代議員会で新たに4名を選出することとなる。これにより,常任理事の定数は10名から14名に増員となる。
 趣旨説明に立った角田日医副会長は,近年,会務が増大,多様化する中で「適切な人員確保および人材登用は不可欠」と説明。有能な人材を全国から広く発掘・登用し,適材適所に配置することで,会務遂行能力の一段の向上を図りたいと述べた。
 なお,増員にともなう支出として,年間約1億1,000万円の増加を見込んでいると報告した上で,日医雑誌の一部をホームページでの閲覧に切り替えることやテレビ会議の定着にともなう会内委員会の旅費削減等により,増加分の支出は「十分に賄える」とした。

代表質問(主な代表質問に対する回答を記載)

谷口府医副会長

◇「かかりつけ医・かかりつけ医機能の評価のあり方」について代表質問

谷口 府医副会長

 谷口府医副会長は,かかりつけ医・かかりつけ医機能の評価の歴史に触れた上で,日医が公表した「かかりつけ医機能が発揮される制度整備に向けて」第1報告の中で「平時と有事を切り離して整理したこと」,「24時間365日,個々の医療機関ではなく,機能分化や連携により面で地域の医療を支えるとしたこと」を重要な指摘として支持。「かかりつけ医はその機能をより強化することこそが国民の信頼に応えることであり,それは診療科や開業,勤務医の別にかかわらず,個々の医療機関がそれぞれの機能に応じた役割を果たし,医療機関同士の連携によって,地域医療を面で支えることに他ならない」と続け,この機能を発展させていくためにも,現在診療報酬で評価されている地域包括診療加算等は対象疾患を限定せず,より多くの医療機関が算定できるよう求めた。以上のことを踏まえて,診療科にかかわらずすべての医師がかかりつけ医機能を発揮するための診療報酬上の評価のあり方や財源の配分について,日医の見解を質問した。

城守日医常任理事

◇「適切な評価を検討すべき」,財源確保がカギ

城守 日医常任理事

 これに対して,城守日医常任理事は「医師の技術料は本来,基本診療料で評価すべきものだが,改定財源が大変厳しいため,さまざまな加点など周辺点数により評価してきた苦闘の歴史がある」とした上で「地域包括診療加算・診療料は,診療報酬上のかかりつけ医機能の一つの評価であり,複数の慢性疾患を有する患者に対して継続的・全人的な医療を行うことを評価したもので,かかりつけ医機能の評価の道筋が実現できた」と説明。「18年改定では初診料の機能強化加算を新設するなど,より多くの医療機関が算定できるよう対応してきたが,改定財源が厳しい中での対応であり,引続き地道に積み重ねる必要がある」と続けた。加えて「日医はこれら診療報酬の要件を満たせないからといって,その医療機関がかかりつけ医機能を持っていないとは考えておらず,かかりつけ医機能にはさまざまなものがあり,今後適切な評価のあり方を検討すべき」とし,その際にはこれまで獲得してきた項目をさらに多くの医療機関が算定できるようにすることが大変重要だと答弁した。
 かかりつけ医に関しては3つの代表質問に加えて関連質問も相次ぎ,多くの時間が割かれた。

◇人頭払い・認定制・登録制への懸念は「払拭」
 城守日医常任理事は「財務省がかかりつけ医の法制上の明確化,認定制,登録制を主張していたことに対して,日医ではコロナ禍等感染症有事での対応と平時での地域における面としてのかかりつけ医機能を提言した」と説明するとともに,①現行のフリーアクセスで,かかりつけ医はあくまで国民が選ぶものであること,②診療科別や専門性の観点からかかりつけ医を固定するのではなく,患者は複数のかかりつけ医を持つこと,③必ずしも一つの医療機関でかかりつけ医機能のすべてを持たなければならないわけではないこと,④診療科や病院,診療所を問うものではないこと−を強く主張。その結果,全世代型社会保障法案の内容は「かかりつけ医」と「かかりつけ医以外の医師」を区別するものではなく,人頭払い,認定制,登録制への懸念は払拭でき,「かかりつけ医制度」にはなっていないと強調した。

長島日医常任理事

◇医療DXの費用は本来「国が全額負担すべき」,報酬評価・公的支援の財源の確保を
 長島日医常任理事は「公定価格である保険医療において医療機関が医療DXのシステムを導入,維持するためには,財源が必要不可欠」とした上で,まず,診療報酬上の評価について解説。オンライン資格確認の原則義務化にともない,既存の加算の廃止を強く求める保険者等との厳しい攻防の末に,医療情報・システム基盤整備体制充実加算を新設させることができたことを報告。「マイナ保険証を持参した患者の負担額を,持参しなかった場合よりも低く抑えることで,国民の不満の解消を図りつつ,事実上の初診料の上乗せという形で,一定の評価が維持されることになった」とその経緯を説明した。
 次に,公的な財政支援については「電子処方箋に限らず,医療DXを国策として推進するのであれば,現場のシステム導入や維持,それにともない必要となるセキュリティー対策にかかる費用は,本来,国が全額負担すべき」と主張していると説明。日医として今後のより良い医療の提供の基盤となる医療DXの推進に協力する意向を表明するとともに,引続き,必要な財源を確保するために,国に対して働きかけを行っていくとした。
 また,マイナンバーカード自体の普及と,マイナ保険証の利用登録を実際の利用につなげていくためには,より一層の周知と理解が必要不可欠であるとし,日医として当初からそのメリット等について国から国民に対して周知するよう要望してきたことを報告。今後も電子カルテの標準化も含め,国の進める医療DXが医療現場の声を反映することで,現場の役に立ち,負担軽減に貢献するものになるよう強く求めていくと述べた。

釜萢日医常任理事

◇若手医師の確保,「医師会一丸で取組む」
 釜萢日医常任理事は,臨床研修医が対象の会費減免について,残念ながら期間が終了する3年目に退会する会員が多数いることに触れ,昨年10月,都道府県医に対して「若手医師の医師会事業への理解促進ならびに帰属意識の醸成に向けた取組み」の実施を依頼し,支援金を用意したことを報告。若手医師により近い郡市区医,さらに都道府県医の協力なくして,若手医師の理解促進はなし得ないとし,医師会が一丸となって取組みたいとの意気込みを示した。
 さらに,日医の「医師会組織強化検討委員会」が組織強化に向けた具体的な方法をまとめたFAQ作成なども行う予定であることを報告するとともに,入会・異動・退会手続きのペーパーレス化について「ウェブ手続きシステム」の構築に関する提言があり,日医としてもその必要性を強く感じていると説明。クラウド上に会員情報システムを構築し,都道府県と郡市区の医師会員管理にも利用できるようにしたいと考えており,早期に運用を開始できるように取組んでいくと述べた。
 この他,「保険者協議会の重要性」,「産業保健活動総合支援事業」,「後発医薬品の安定供給問題」など合わせて19の代表質問があり,予定時間を大幅に超過して,活発な質疑応答が展開された。

松本日医会長「所信表明」

1.かかりつけ医機能が発揮できる 制度整備に向けて

松本 日医会長

 国民医療を守るため,地域医療を面として支える医療が確保されるように,医療機関が自主的に医療機能を報告し,国民が適切な医療機関を自ら選択できるよう分かりやすく示すとともに,それを基にして必要に応じて地域で協議していくことが重要である。特に,地域で不足している機能の充実に向けては,医師会が中心となり協議していかなければならない。
 決して「かかりつけ医」と「かかりつけ医以外」の医師を区別するものではなく,あくまでも「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」であり「かかりつけ医制度」ではない。

2.常任理事を増員し,有能な人材を広く登用

 会務の増大,多様化に対応するため,有能な人材を全国から広く役員に登用し,適材に配置することで,会務遂行能力の一段の向上につなげたいと考えている。「日医:定款・諸規程検討委員会」での答申通り,常任理事4名の増員に向けた定款改正を議題として上程した。
 医師会組織強化の目的は国民視点に立った医療の実現にある。地域医と日医との連携を一層緊密にし,地域の声を踏まえた政策提言を行い,医師の期待に応えられる医師会,国民の信頼を得られる医師会へとつなげていきたい。

3.物価高騰への支援事業

 3月17日に物価高騰に対する支援について,加藤厚労大臣に要望書を手交した。その結果,政府の「物価・賃金・生活総合対策本部」で,地方創生臨時交付金の7,000億円の増額が決定した。推奨事業メニューで,医療機関等への支援が事業者支援の筆頭に掲げられている。
 各地方公共団体で,交付金を活用した支援事業を確実に実施していただくことが重要になるため,都道府県医では,地方公共団体との協議につき協力をお願いしたい。

4.次期トリプル改定に向けて財源確保が重要課題

 24年度は診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のトリプル改定が行われる。年末に行われる予算編成では,その財源確保が重要課題となる。まずは,前回の診療報酬改定が医療現場に与えた影響をしっかりと検証した上で,次期改定を考えることが重要。併せて,昨今の物価高騰の視点も重要だと考えている。トリプル改定に向けて,中医協をはじめとする審議会において議論を積み重ねていく中で,しっかりと主張していきたい。

5.コロナ5類移行後も十分な対策が必要

 5月8日には5類感染症となるが,類型変更以降も感染拡大の波は繰り返していくと考えられ,再燃の可能性もあり,十分な対策が引続き必要である。今後も感染状況を注視しながら,当面は医療機関の感染対策と現在のコロナの医療提供体制を維持しつつ,さらに幅広く患者を受け入れる体制が必要である。
 同時にコロナと通常医療との両立という現場の努力は適切に評価されるべきと考え,類型変更後の医療機関への引続きの支援について,国・厚労省に対して要請を行ってきた。今後も日医として,地域の医療現場をしっかりと支えていくので,引続き協力をお願いしたい。

6.勤務環境評価センター,「33」の医療機関が受審申し込み

 医師の働き方改革については,医療機関勤務環境評価センターの指定法人として,昨年10月より医療機関からの受審申し込みを受け付けている。3月24日時点で,33医療機関から申し込みがあり,順次,サーベイヤーが調査している状況。働き方改革の大きな課題の一つだった宿日直許可の取得については,厚労省への働きかけにより,許可取得件数は21年に比べて約6倍の1,369件となった。24年4月の新制度施行に向け,医療機関での取組みを支援していくという観点で,引続き取組んでいく。

7.さらなる医師資格証の普及に努める

 医師資格証については,利用できる機会を増やしていきたい。今年1月に運用開始となった電子処方箋の発行には,医師資格証を用いて電子署名をすることが必要になる。現在,多くの申請をいただいているが,すべての会員,すべての医師への普及を目指して推進に努めていく。

8.広報活動の積極的活用

 広報活動としては,日医の歴史や主な活動について,クイズを交えながら説明した国民向け動画を作成し,日医公式ユーチューブチャンネルに掲載している。組織強化策の一環として,この動画に医師会への入会方法,日医医師賠償責任保険制度,医師年金などの説明を加えた医学生・研修医向けの動画も作成し,公式ユーチューブチャンネルに限定公開しているので,日医への入会促進活動等で活用してほしい。

2023年5月1日号TOP