次期(令和6年度)診療報酬改定に対する重点要望項目を決定 近医連から日医へ提出
日医社会保険診療報酬検討委員会は,従来どおり,中医協における日医からの診療報酬改定要望項目について,各方面からの要望を踏まえた上で次期改定に反映させたい意向があります。 これを受けて,近医連では前回改定時と同様に,各府県からの要望項目を募った上でとりまとめることとし,これに先立つ形で府医から,各地区医および各専門医会にご意見をお伺いしたところです。 なお,要望項目の選定にあたっては,医療側として本来主張すべきことを中心とし,そのうち各種の専門医会代表委員から提出される可能性の高い事項は避け,限られた要望項目を有効に生かすという主旨で,全体的な影響の大きな項目を選定するという基本方針のもとに,保険医療部にて検討した上で近医連に提出いたしました。 また,それぞれの要望内容について,その理由や根拠に妥当性が認められるものを中心にとりまとめました。 この結果,今般,近医連において,各府県から提案された要望項目のうち,最も重要と考えられる3項目およびそれ以外の要望項目7項目を下記のとおり選定し,日医社会保険診療報酬検討委員会に近医連推薦で選出されている濱島委員(府医副会長)から日医に送付いたしましたので,お知らせします。
記
◇近医連から日医へ提出した要望項目 まず大前提として,診療報酬総額の引き上げを求める。政府は長年にわたり医療費の増額を「高齢者の自然増分にとどめる」としているが,昨今の医療技術の向上,医療人材投入量の増加,超高額薬品の採用など医療費を増額させなければならない要因が多々ある。 医療の現状を正しく反映した診療報酬体系に見直すことを強く要望する。
1.重点要望項目
- 初診料,再診料の点数の引き上げ 光熱費,購入物品などの物価高騰が続いており,経営面を圧迫している。 国は賃金引き上げを企業に要請し,大手企業では職員の賃金アップに踏み切るところが続出しているが,医療業界において現状では職員の賃金アップを考慮する余裕はなく,様々なコロナ特例措置が減額,廃止される今こそ,基本診療料の大幅な増額を要望するものである。 また,コロナが5類に移行するものの,今後も新興感染症への備えとして平時からの感染症対策が必須であり,その財源として基本診療料の引き上げを要望する。 〈現行点数〉初診料:288点=270点(+18),再診料:73点=69点(+4) 〈要望点数〉初診料:350点=332点(+18),再診料:84点=80点(+4) ※( )は消費税対応分
- 特定疾患療養管理料の対象疾患の拡大 特定疾患療養管理料は,プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が計画的に療養上の管理を行うことを評価したものとされている。 かかりつけ医機能は診療科の別にかかわらず担うものであり,この機能を発展させていくためにもより多くの医療機関が算定できるよう,対象疾患の拡大を求める。 例:骨粗鬆症,高尿酸血症,過活動膀胱,慢性腎炎
- 処方料,処方箋料等における7剤以上の減算の撤廃と院内処方への評価の新設 高齢者のかかりつけ医として複数の疾患を診療する機会が多くなり,多剤投与を行わざるをえない場合が増加している。かかりつけ医が複数の診療科の薬物治療を一度に担うことで結果7剤以上となった場合に減算になるのは不適当である。かかりつけ医の推進の観点からも改善を求めたい。 また,調剤薬局で評価されている業務を院内処方でも評価されるよう要望する。例えば,一包化加算,吸入薬指導加算など。
2.要望項目
- 在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の算定要件の見直し 複数人を同一日に訪問した場合,1人を訪問した場合の点数を下回ることは不合理である。
- 在宅医療に係る点数の引き上げ 医師1名でも,機能強化型在宅療養支援診療所と同様の実績(緊急往診10件以上,在宅看取り実績4件以上)を有する診療所を評価すべきである。
- 医療DXに係る費用の補助金化あるいは評価の見直し 現在,国策として医療DX推進が急速に進められているが,医療機関の方針や計画あるいは受診患者の希望と必ずしも一致しているわけではなく,その費用は診療報酬ではなく他の補助金でまかなうべきものである。仮に現在のまま診療報酬で評価するのであればランニングコストに赤字が出ない算定額が必要である。
- 心不全再発入院予防管理料(仮)の新設 現在,新規心不全患者が年間35万人発生し,2030年には130万人の心不全患者が見込まれている。心不全の日常診療では病状の進行を遅らせ,QOLを高め,長期予後の改善することが求められ,特に入院患者の心不全再発例の減少が,喫緊の課題ともなっている。このような状況から,日本循環器学会ではチーム医療を行うべく「心不全療養指導士」などを養成して,患者指導の体制を整えつつある。 糖尿病患者における糖尿病透析予防指導管理料(350点)のような「心不全再発入院予防管理料(仮)」の新規設定を要望する。
- 注入器用注射針加算の算定要件の見直し 血糖自己測定器加算が,3月に3回に限り算定できるが,注入器用注射針加算は,注入器用の注射針を処方した場合,所定点数に加算するとされており,1カ月分の点数しか算定できない。2カ月以上の注入器用注射針を処方すると,1カ月を超える注射針は医療機関が無償で患者に処方することになってしまう。在宅療養指導管理材料加算として整合性が取れていない。3月に3回に限り,所定点数に加算できるよう変更を求める。
- 消炎鎮痛等処置の点数の引き上げ 診察後に検査や注射をした患者よりも,消炎鎮痛等処置を行った患者の方が点数が低くなる。患者への説明が困難な場合もある。創傷処置(100cm2未満),外来管理加算と同じ,52点に引き上げを求める。
- 認知症に係る診察への評価の新設 認知症患者の診療にはより多くの時間が必要であり,再診料のみでの対応には限界がある。その結果,認知症患者の診察を避ける事態にならないとも限らない。そこで専門医への加算ではなく,一般診療での認知症患者診療加算の新設が望まれる。 認知症の早期診断・早期治療が重要となるため,初回認知症診断加算100点(仮)を求める。
◇府医にて選定した要望項目
◇要望項目一覧(抜粋)/地区医師会・専門医会集約