花粉症患者の診療に関する対応について

 今般,京都府を通じて厚生労働省健康局がん・疾病対策課から「花粉症患者の診療に関する対応について」の通知がまいりましたのでお知らせします。

 アレルギー疾患対策基本法の対象アレルギー疾患の1つである花粉症について,令和5年4月及び5月に「花粉症に関する関係閣僚会議」が開催され,発生源対策,飛散対策,発症・曝露対策を3本柱とする「花粉症対策の全体像」が取りまとめられました。このうち,発症・曝露対策として,花粉症の医療・相談体制の整備推進や,アレルゲン免疫療法に関する適切な情報提供や広報等が盛り込まれています。
 つきましては,花粉症にお悩みの住民の方へ下記内容を周知するなど,花粉症対策の取組推進に御協力をお願い申し上げます。

  1. 花粉症をはじめとしたアレルギー疾患の症状や治療について,アレルギーポータル(※)に解説動画を掲載しております。本リンクは許諾不要で利用可能です。
    (※) https://allergyportal.jp/knowledge/movie/

  2. 花粉症の治療に伴う眠気やだるさは,治療薬の種類を変えることで改善することがあります。また,対症療法の治療効果が乏しい場合,アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法または皮下免疫療法)によって症状が改善する可能性があります。必要に応じて,アレルギー診療を標榜している医療機関やアレルギー専門医に御相談ください。

 また,一般社団法人日本アレルギー学会宛てに,下記のような内容について,会員医療機関に周知依頼もされております。

  1. 花粉症患者を診療する際は,「アレルギー総合ガイドライン」(発行:日本アレルギー学会)や「鼻アレルギー診療ガイドライン」(発行:日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会)等の最新版を御参照の上,患者の症状に合わせて適切な治療を選択するとともに,花粉への曝露を軽減するための花粉症予防行動についての指導を行ってください。その際,アレルギーポータル「アレルギー動画集」(※)についても御活用ください。
    (※) アレルギーポータル「アレルギー動画集」(リンクフリー)
        https://allergyportal.jp/knowledge/movie/
       (「花粉症」及び「舌下免疫療法」の動画があります。)

  2. 対症療法では治療効果が乏しい患者に対しては,患者の意向も踏まえ,「アレルゲン免疫療法の手引き」(発行:日本アレルギー学会)等を御参照の上,アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法又は皮下免疫療法)の実施を御検討ください。なお,舌下免疫療法の実施にあたっては,あらかじめ舌下免疫療法の治療薬の処方医として登録が必要となることや,処方薬局における医薬品供給の状況等に御留意ください。

  3. 各医療機関において,アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法又は皮下免疫療法)の実施ができない場合や当該治療法に係る技術的助言等が必要である場合は,都道府県アレルギー疾患医療拠点病院をはじめとする適切な医療機関に御相談ください。

(参考1) 内閣官房「花粉症に関する関係閣僚会議」
      https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kafun/index.html
      花粉症対策の全体像(概要)
      https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kafun/pdf/230530_gaiyou.pdf
      花粉症対策の全体像(本文・工程表)
      https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kafun/pdf/230530_honbun.pdf

(参考2) 花粉症対策の全体像(第2回花粉症に関する関係閣僚会議資料)より抜粋
<現状>
 花粉症を含むアレルギー疾患の医療・相談体制については,国が指定する2つの中心拠点病院や都道府県が指定する都道府県アレルギー疾患医療拠点病院を中心とした体制整備を推進しているほか,関係学会と連携し,アレルギー専門医等を都道府県,市区町村ごとに検索できる仕組みを整備するなど医療機関情報の発信を行っている。

(中略)

 花粉症の根治(治癒)を図るための有効な治療法として,アレルゲン免疫療法が近年注目されている。アレルゲン免疫療法は,アレルギーの原因となるアレルゲン物質を薬剤にして定期的に投与することで,アレルギー症状を出にくくする治療法であり,皮下免疫療法と舌下免疫療法の2種類がある。平成30年(2018年)には,舌下錠を用いた舌下免疫療法が保険適用されたが,数年にわたる治療・通院が必要であることもあり,十分に普及していない。令和4年(2022年)には計画的な治療・管理に係る診療報酬上の評価が設けられたところであり,今後,普及が期待されている。

<今後の取組>
 関係学会と連携した診療ガイドラインの改訂や対症療法等の医療・相談体制の整備に引き続き取り組む。アレルゲン免疫療法について,花粉が飛散していない時期に治療を開始する必要があることを踏まえ,治療を必要とする患者が花粉の飛散時期終了後速やかに医療機関を受診できるよう,ウェブサイト,医療機関等における適切な情報提供の推進や広報に引き続き取り組む。このうち,舌下錠を用いた舌下免疫療法については,年間の治療薬供給量を,今後5年以内に,現在の約25万人分から約100万人分へと増加させるべく,森林組合等への協力要請,企業への増産に向けた要請等に速やかに着手する。一方で,現時点においては治療薬の供給に一定の限界があることから,まずは,花粉飛散開始に合わせて早めに対症療法を開始することが有効であること,また,対症療法では効果が不十分な方には舌下免疫療法が推奨されることを周知するとともに,今後の治療薬の増産を念頭に置きつつ,舌下免疫療法の更なる普及と適切な提供体制の整備のため,学会等を通じた医療機関等への協力要請,実施医療機関のリスト化及び周知,オンライン診療可能な医療機関の周知等を進める。

2023年10月15日号TOP