2020年7月15日号
新型コロナウイルス感染拡大防止のため,可能な限り書面による議決権行使をもって議案の決議を行うこととし6月20 日(土)に開催した。代議員数108 名のうち92 名より書面による議決権行使書の提出があり,当日は初の試みであるWeb 会議システムを使用した中継配信を行い代議員39 名の参加を得た。
松井府医会長の挨拶に続き,武田府医理事より裁定委員会報告が行われ,その後,地区からの代表質問ならびにその答弁が行われた。引続き,第1号議案として「令和元年度事業報告及び決算」が上程されるとともに大坪府医監事より監査報告が行われ,賛成多数で可決承認された。
松井 府医会長
武田 府医理事
大坪 府医監事
松井府医会長は,冒頭,本年度の各種事業および各委員会は,Web もしくは書面開催を基本とし,新型コロナウイルス感染症の状況を考慮しながら,都度開催方法を検討して進めるとして,理解と協力を求めた。
続いて,新型コロナウイルス感染症について, 京都では4月16 日に緊急事態宣言が発出され, 行動の自粛が要請された結果,5月15 日以来新規感染者はゼロが続き,5月21 日には,京都を含め全国的に緊急事態宣言が解除され,5月25 日には北海道,東京都等首都圏の4都道県も解除となり国内すべての緊急事態宣言が解除されたと振り返った。
京都府においても,段階的に各種規制が緩和されたことで,学校や社会活動が再開され,6月19 日には県境をまたぐ人の移動も全面的に解除された。一方で,6月に入り国内で感染が散発的に発生し,現在もなお油断のできない状況が続いているとし,高い確率で訪れる第二波への備えが急務であるとの考えを示した。
PCR 検査体制の課題として,発熱患者は,直接医療機関を受診するのではなく,患者が帰国者・接触者相談センターへ連絡し,相談センターの判断でPCR 検査を行う体制であったが,相談センターへ連絡してもなかなか電話が繋がらず,自宅で1週間以上検査を受けることができずに待機していたなど,スムーズなPCR 検査へ繋がらなかったことを問題点に挙げた。
第二波への備えとして,まず感染者を早期に発見することが重要であるとし,新体制の構築の必要性を強調。新体制では,発熱患者はまず,かかりつけ医に相談を行い,かかりつけ医は,直接の接触を避けた電話等での対応を行い,かかりつけ医がPCR 検査を必要と判断した患者については, 京都府・医師会京都検査センター(以下,「府医検査センター」という)の相談センターに検査予約を行うことで,スムーズにPCR 検査に繋げる体制にしていきたいと説明した。
また,唾液によるPCR 検査が保険適応となり, 府医では,すでに京都府と協議を行っているとし,近日中にかかりつけ医の判断でその場で検査を行っていただけるように準備を進めていると報告した。
何よりも早期に診断を確定し,陽性者は感染拡大防止のために隔離を行い,軽症者・無症状者は宿泊療養施設で経過観察をし,重症化の恐れのある患者は京都府入院医療コントロールセンターを通じて速やかに入院へ繋げることが重要であると強調。PCR 検査をかかりつけ医,府医検査センターで行うことで,保健所は積極的疫学調査に注力できるとし,濃厚接触者を早期に捉え,PCR 検査を行うことは,クラスターを拡大させないために大きな効果があることが分かっているとした。
また,府内の感染状況を早期に把握すべく,「京ころなマップ」の運用開始を報告。発熱,咳などの症状の患者を診察された際に入力いただき,必要な患者にはPCR 検査を実施するとともに,症状をサーベイランスすることにより,潜在的な患者の発生を推測することに役立つとして,会員の積極的な利用を求めた。
次に,医療提供体制に関しては,当初,接触者外来など指定医療機関に患者が集中したため,特定の医療機関に大きな負担をかけることになったと振り返り,患者の症状によって,どの医療機関に入院させるかというトリアージの機能を充実させる必要があるとした上で,第二波に向けては, 軽症,中等症の患者を受け入れる医療機関を広げていく必要があるとした。
そのためには,現在診療の妨げとなっている感染防御具の不足の解消と院内の動線の確保など感染防御策が確実に取れていることが条件であり, 感染に気が付いていない患者が別の病気で医療機関を訪れることは当然あり得るとし,すべての医療機関で,できる限りの感染防御対策を取り,可能なレベルで患者を受け入れる体制を今のうちに整えるべきとの考えを示した。また,府医として必要なサポートができるよう,会員からの意見を今後の施策の参考にさせていただきたいと述べた。
最後に,これまで,多くの個人,企業,団体から医療従事者への支援として,寄付金,感染防御のための資材,アルコールや消毒液,さらにはお菓子などの寄付をいただいたことを報告するとともに,一部はすでに会員に配布をしているが,一部は次の備えとして備蓄しているとし,今後も, 府医が一体となって,新型コロナウイルス感染症に対峙すべく,会員のさらなる協力を依頼した。
西村 議長
堀澤 副議長
片岡 副議長
代表質問では,船井,与謝,右京の3地区から代表者が質問に立ち,直面する課題について質疑が行われた。質問内容および執行部の答弁(概要)は次のとおり。
◆ 藤岡 嗣朗 代議員(船井)
〔研修会・講習会・講演会について〕
1 .行政などが主催する説明会(保険指導や認定産業医研修など出席が義務付けられている会)における講師(行政関係者)の説明会が粗末なものが多く,耐え難い。人選などに医師会が積極的に関与するか,もしくは内容を充実したものにするよう要請してほしい。
2 .医師会の主催の会議等で予約や登録が必要な会議が増えているような印象がある。原則予約なしで自由に参加できる体制にしてほしい。
藤岡 代議員
◇ 北川 府医副会長
北川府医副会長は,法改正の内容や制度の説明は,どうしても事務的な部分が多く含まれ,かたぐるしいものになることは避けられない面があるとした上で,府医では主催者に対し,できるだけポイントを絞り,分かりやすく,長時間を避けて説明を行うよう要望しているとし,行政関係者からの説明だけでなく,医療関係者からの主体的な話も組み合わせて開催するよう依頼していると説明した。
また,府医主催の産業保健に関する研修会で毎回実施しているアンケートに触れ,行政関係者が演者の講習会についても,目立って評判の悪いものはないと報告するとともに,今後も出席者の意見を反映し,内容の充実を図っていきたいとの考えを示した。
続いて,急な診療等が入り研修会への参加が難しい場合もあることから,事前予約には抵抗感があるという意見に理解を示しつつも,府医主催の研修会で事前予約や登録が必要な研修会として, 「資格,診療報酬に関わり出席や入退室の管理が厳格に求められているもの」,「座学だけでなく多職種とのグループワーク等を取り入れており,参加者の事前調整が必要なもの」,「トレーニングセンターで行われる在宅や救急等,実習形式の研修で,資料等の準備の都合で人数が制限されるもの」などを挙げた。
研修の目的・形態が多様化しているため,このような傾向が生じているが,実際には多くの研修会で当日参加も受け付けるなど柔軟な運営を行っているとし,理解を求めた。
また,新型コロナウイルス感染症の影響で,多くの重要な研修会が中止・延期となっていることについて,再開の方向では検討しているものの, 人数制限をせざるを得ない状況であるとし,府医として新しい研修会のスタイルを模索する必要があるとし,自由にアクセスできることを大事な視点の一つとして検討していきたいと回答した。
北川 府医副会長
◆ 今出 陽一朗 代議員 (与謝)
〔 シーリング制度における丹後医療圏での常勤医師の確保について〕
このたび,国の示す医師偏在指標で京都府は医師多数三次医療圏となり,丹後医療圏(二次医療圏)は最新情報では全国比56%で医師少数区域とされたところである。
実際,丹後医療圏における京都府立医科大学附属北部医療センター以外の病院は,常勤医師の確保に苦労しており,診療科別充足率も多くの科で全国平均を下回っている現状と考えられる。
都道府県別・診療科別シーリングに関して,京都府は全国で最多の13 診療科中12 診療科でシーリング対象となっていると聞いており,現行の京都府のシーリング体制が継続されれば,丹後医療圏における常勤医師の確保がより困難になるのではないかと危惧している。府医の見解をお聞かせ願いたい。
今出 代議員
◇ 小野府医副会長
小野府医副会長は,国の医師偏在指標について, 全国239.8,京都府314.4 に対し,丹後医療圏は134.9 と全国比56%,全国順位で298 位の医師少数区域とされていると説明。国のガイドラインでは,医師少数区域は医師偏在指標の下位3分の1に属する二次医療圏とされ,その区域における医師確保の考え方として, 医師の増加を基本とし,医師少数区域以外の二次医療圏から医師の確保が可能であるとした。さらに,国の医師偏在指標においては,「へき地等の地理的要因が反映されていない」,「京都府の状況に応じた受療率が計算に用いられていない」ことから,京都府ではそれらの課題を織り込んだ「京都式」の医師偏在指標を算出していることを明らかにした。京都式指標においても丹後医療圏は全国比44% とさらに小さい値となり,医師供給がひっ迫した状況が明らであると強調した。
また,丹後医療圏は,診療所医師も少なく,医師多数区域である京都・乙訓医療圏からの通勤も困難であることから,府医も参画して作成された「京都府医師確保計画」(令和2年3月)では,丹後医療圏は府内でも最重点医療圏として医師確保に取組むべき医療圏と定められ,具体的には急性期を担う北部医療センターを核として医師確保を図り,周辺の診療所等への支援を行うとともに, 圏域内の各病院が連携して在宅機能を担う方向性が示されたと解説した。
医師確保計画の着実な推進に際し,厚労省ならびに日本専門医機構が進めている「専攻医募集におけるシーリング」は丹後医療圏のみならず,京都府全体としても対応すべき重大な課題であるとし,令和2年度の専攻医採用者数を,2年前の平成30 年度と比較すると,全国合計では8,410 名から9,082 名と2年間で(+ 672 名:7.8%)増加しているが,京都府では284 名から260 名とこの2年間で24 名,8.5% 減少し,シーリング対象診療科(11 診療科)に限ると,-10.8%と1割以上(▲ 24 名)も減少する結果であると説明。
府医では新専門医制度の枠組みの中での対応として,令和元年6月松井府医会長が京都府医療対策協議会座長として「医師確保計画に係る『医師偏在指標』及び『新専門医制度シーリング』に対する要望」を取りまとめ,西脇知事との連名で厚労大臣に対しシーリング設定における特段の配慮を求めた他,本年2月にも「専門医制度整備指針の改定及びサブスペシャリティ領域専門研修細則(案)に係る意見書」を取りまとめ,専門医機構が地域医療への影響を主体的に評価するよう求めるとともに,画一的な制度が地域医療を危機的状況に陥れることが懸念されることを厚労省に対し強く訴えたと報告。
また,6月12 日には府医も参画して「内科専門医研修プログラム関係者会議」が開催され,丹後・山城南医療圏のような府内の医師少数区域での勤務月数を評価する「地域貢献率」も勘案した形での定員調整を行う方向で協議が行われたが, 現行の枠組みの中で配慮を求めるだけでは限界があるとし,府医としては,近医連や日医代議員会, 全国医師会勤務医部会連絡協議会などを通じて, プログラム制から柔軟なカリキュラム制への変更など抜本的な新専門医制度の見直しを求めて働きかけを行うとの意向を示した。
小野 府医副会長
◆ 高島 啓文 代議員(右京)
〔 インフルエンザ・COVID-19 感染流行における診療体制について〕
PCR 検査について, 検査数は医師会主導の検査センターもできたことで,今後起こるかもしれない新たな感染拡大に対しても,十分な検査体制が構築されるものと期待しているとしつつも,医療衛生センターでは,電話が通じ難かったり,休日・夜間は区役所を通す必要があったりで,手続きに時間がかかると指摘。今後,多くの疑い患者が出た時には,対応しきれない可能性があると疑問を呈した。また,多くの医院では発熱患者の導線を別にすることは不可能であり,診療時間を別に設けることにも限界があるとして,発熱者に対する診療体制を組める開業医は多くないと問題点を示した。この状況で,インフルエンザの流行期を迎えると,多くの有熱者が医療機関を受診し,ここにCOVID-19 感染の流行が重なると,通常の慢性疾患の診療を継続しながら,発熱者に対してどうように対応すれば良いか,インフルエンザの診療も不可能になるのではないかと不安を訴えた。右京医師会では,他県で実施されているような病院の発熱外来に,医師会員が手伝いに行くような体制が作れないかと模索しているとして,発熱者の診療体制,特にインフルエンザとCOVID-19 感染の流行が重なった際の診療体制についての対策をご教示願いたい。
高島 代議員
◇ 濱島府医副会長
濱島府医副会長は,新型コロナウイルス感染症対策の経過に触れ,1月に新型コロナウイルス感染症が発生し,1月中旬には府医コロナ対策チームを立ち上げ,1月下旬には京都府・京都市と協議の場を設け,現在もメディア対応や,松井府医会長が京都府の専門家会議に参画するなど迅速な対応に努めてきたと振り返った。
また,京都市における帰国者・接触者外来の窓口である医療衛生センターでは,電話の繋がりにくさに加え,対応や運営など数々の不備があり, 府医としても当初より関係機関へ再三にわたり申し入れを行っていたと説明。一方で,感染拡大にともない,保健所や帰国者・接触者外来も一時は相当な疲弊状態にあったことも事実であり,そのようなことも踏まえ,府医検査センターの発足に繋がったと説明。現在感染者数は落ち着いているが,立ち上げから約7週間で550 件の検査を行ったとし,センター運営や検体採取の出務に協力を得たすべての会員に謝辞を示した。今後も第二波, 第三波の到来に備え,行政機関と連携のもと継続して運営を行うべく,会員のさらなる協力を依頼した。
続いて,第二波が到来した場合の地域の診療体制の構築について,現在検査方法や結果などのデータが刻々と変わっており,厚労省を始めとする行政の対策マニュアルやガイドラインも週ごとに変わっているため,数か月先の医療体制の構築についても現時点とは異なっているかもしれないと前置きした。今後は様々な方法を駆使して,十分な感染対策を講じた上で,一般の診療所においても新型コロナウイルス感染症の診療体制を構築することが必要であるとの考えを示し,インフルエンザ流行期には京都府で毎年20 万人の患者が発生しており,現在の接触者外来ですべてを診るのは無理があると指摘。かかりつけ医が電話等で発熱患者を診療する体制を整え,まずは国の示す一般診療所において唾液のPCR 検査を可能とする集合契約による外来診療体制を検討していると報告。
発熱患者の診療については,パーテーション設置などの空間分離,時間分離,上気道の検体採取の場合のサージカルマスク着用,ガウン着用の4 点セットが推奨されており,唾液の採取についても,サージカルマスクの着用は必要で,十分な運営体制が取れない医療機関もあるとして,府医としては,必要な診療体制を整える物資の確保をより一層行政に申し入れているとし,右京医師会での取組みが他地域の取組みの参考になるとして引続きの情報提供を依頼した。
濱島 府医副会長