2024年1月15日号
左京医師会と府医執行部との懇談会が令和5年11月18日(土)国立京都国際会館で開催され,左京医師会から23名,府医から7名が出席。「電子処方箋」,「医師の働き方改革」をテーマに活発な議論が行われた。
〈注:この記事の内容は令和5年11月18日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。〉
電子処方箋をめぐる最近の状況について,医療機関での導入が低調であることから,公的病院においては可能な限り,2024年度診療報酬改定に合わせて導入するよう,武見敬三厚生労働相が要請する方針である。今後,公的医療機関以外に波及し,オンライン資格確認のように唐突かつ強引な義務化の流れにならないよう注視が必要である。
また,医療機関での普及が遅れている要因としては,メリットがほとんどない上に,1/2補助しかなく導入費用の負担が大きく,機器の老朽化にともなう更新費用も不透明な点が挙げられる。
日医では全額補助と補助期限の見直しを要望するとともに,電子処方箋に限らず国策として推進される医療DXに係る費用は全額,国が負担するべきと明確に主張している。
オンライン資格確認は突然義務化されたが,電子処方箋のような医療政策が決定される際に,医師会は関与できているのかとの疑問が呈された。府医からは,医療界が求める制度や政策の実現には,その決定プロセスに深く関わり,医師会を通じて医療界の意見を反映させていくことが何よりも重要であると改めて強調しつつも,近年,関与が難しくなっている状況が見受けられると指摘。医政活動を通じて,地元国会議員に医療政策に対する理解を求めるしかないのではないかとの考えを示した。
~府医会内に医療政策会議を設置~
2021年5月に公布された改正医療法により,医師の勤務環境を改善すべく,2024年4月から医師の働き方改革が施行される。時間外労働時間の把握と適切な管理,また勤務間インターバル・代償休息を確保することは,医療の質と安全への担保にも寄与すると考えられる。一方で,医療者は救急医療をはじめ地域の医療提供体制を維持する使命を負っており,「医師の健康」と「地域医療提供体制の維持」を両立させることは容易ではないと考えられる。
各病院の対応状況として,地域の労働基準監督署に対して,宿日直許可の取得を進めていると思われるが,許可に対して統一された基準はなく,特に救急医療体制に関しては,その議論が宿日直許可の取得に終始している感は否めないことから,中小病院の夜間の救急受け入れ可能数が減少し,救急搬送困難事案が急増することが危惧され,府医では今期より府医役員と外部の識者などで議論する場として医療政策会議を設置し,最初のテーマとして「医師の働き方改革」を取り上げている。
~京都府に対して提言を目指す~
京都府では地域医療支援病院と京都市内の救急告示病院を対象に救急受け入れアンケートを実施。その結果では,来年4月以降の救急受け入れ見込みについて,多くの医療機関でほぼ維持できるとの回答であった。
しかしながら,宿日直許可を取得した病院に派遣された医師が救急患者を受け入れ,その業務内容が入院指示など「当直」ではなく,「勤務」の状態となった場合,9時間の勤務インターバルルールによって翌日朝の業務を調整する必要があることから,派遣された医師が翌朝からの自院での業務を理由に救急応需を断ることは十分に予想される。
実際に京都市内では年間約1.5万台が午後11時から午前7時の時間帯に救急車搬送されており,平均で毎日40人の深夜帯救急搬送がある計算となる。そのうちの何割かは処置が必要な患者で,時間外勤務の状態になる可能性はそれなりに高くなると考えられ,働き方改革が京都府内の夜間救急体制に大きな影響を及ぼす可能性がある。
引続き医療政策会議で議論し,救急医療体制に生じる問題点などを整理し,特に来年4月以降に予測できる事態については事前に京都府に提言するとともに,スタート後に生じた問題は速やかに解決できるよう準備しておく必要がある。
~意見交換~
自己研鑽は労働時間に含まれないとされるが,本来,患者のためで,医療の質を向上させるためであり,自己研鑽を労働時間にしないのは問題があるのではないかとの意見がある一方で,管理する立場としては,日勤中も自己研鑽(勉強・研究)している医師もいることから,勤務と自己研鑽のすみ分けも難しく,自己研鑽を労働時間にするには難しい側面もあるのではないかとの議論がなされた。
新型コロナワクチンの特例臨時接種の延長はあり得るのかとの問いに対して,特例接種は令和6年3月で終了するとして,令和6年4月以降の接種については,季節性インフルエンザなどと同様に65歳以上の高齢者などの重症化リスクの高い人を対象とした定期接種になるのではないかと見通した。
また,後発医薬品の供給不足問題に関する質問が出され,その効果や質,供給体制,情報提供体制など,さまざまな疑念があるとの指摘がなされた。この問いに対しては,政府の後発品使用促進策の進め方に誤りがあったのではないかと疑問を呈し,日医を通じて強く改善を求めるとして理解を求めた。