2024年1月15日号
亀岡市・船井医師会と府医執行部との懇談会が令和5年11 月25 日(土),亀岡市立病院で開催され, 亀岡市医師会から10 名,船井医師会から3名,府医から7名が出席。「令和6年度の保険点数改正」,「院内処方,院外処方」,「オンライン資格確認運用の問題点」をテーマに議論が行われた。
〈注:この記事の内容は令和5年11 月25 日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。〉
~令和6年度診療報酬改定・6月改定へ~
従来の4月改定では3月上旬に告示・通知が示され,約1カ月という短期間で医療機関やベンダが改定作業を余儀なくされ,非常に負担が大きかったことから,施行時期を後ろ倒しし,令和6年度診療報酬改定は6月改定が決定した。
なお,薬価改定は従来の4月改定であり,介護報酬改定の時期も現在議論されているが,こちらも6月改定となる可能性がある。
~令和6年度診療報酬改定の論点~
財政制度等審議会は11月20日,2024年度予算編成に向けた「秋の建議」をまとめ,診療報酬改定では本体マイナス改定が適当で,初・再診料を中心に診療所の報酬単価を5.5%程度引下げるべきと主張。これに対して,松本日医会長は,コロナに対応した医療機関を全く評価しないような建議が出されたことに遺憾の意を示した上で,「診療所の経常利益率が高いため,全産業やサービス産業平均の経常利益率(3.1%~3.4%)と同程度にすべきとの主張であるが,コロナ特例の影響を除いた診療所の医業利益率は3.3%程度であり,引下げの余地は全くない」と主張した。
~令和6年度診療報酬改定に向けた府医の動き~
診療報酬改定に向けて,府医では基本診療料の引上げを近医連などの場で強く要望しており,日医にも提言しているところである。
物価高騰や光熱費の上昇等が医業経営を圧迫しており,スタッフの賃金上昇への対応も含めて,医業経営を安定させるためには基本診療料の引上げが必要と認識している。同時に,新型コロナに限らず新興感染症への対応も含め平時からの感染症への対策が重要であり,多くの医療機関が適切な感染対策を講じるためにも基本診療料の引上げが必要であると考えている。
府医では従来から,平成22年度改定で財源の制約を受けて,理由なく引下げられたままになっている診療所の再診料を元の点数に戻すことを強く主張している。
~医療・介護分野への適切な財源の確保に向けて~
財務省からはトリプル改定への厳しい対応を求める意見が出ているが,日医では10月10日に医療・介護42団体で構成する国民医療推進協議会を開催し,国民の生命と健康を守るため,医療・介護分野における物価高騰・賃金上昇に対する取組みを進め,国民に不可欠,かつ日進月歩している医療・介護を提供するために,適切な財源の確保を求めることを盛り込んだ決議を採択した。
さらに,日医から各都道府県医に対して,各都道府県の医療推進協議会において,集会を開催し,同様の決議を採択することなどの要請があり,これを受けて,府医では11月19日(日)に「府民の生命と健康を守るための総決起大会」を府医会館で開催した。当日は,京都選出の国会議員や府議会・京都市会議員のほか,京都府医療推進協議会の構成団体や地区医の先生方など150名という多くの参加を得て,日医と同様の決議を採択し,医療機関等の厳しい状況を訴え,改定財源の確保を強く求めた。
医師の技術料である処置や手術の点数の引上げは非常に重要であり,これらの点数の引上げには財源の確保が必要で,年末の改定率決定に向けて日医の松本会長は政府や自民党に積極的に働きかけているので,府医もその後押しをする。
昨今の医薬品の供給不足への対応や薬価差がない中での在庫管理など大変な苦労があることから,院外処方に変更する医療機関がある一方で,地域によっては調剤薬局が少なく患者さんのために院内処方を継続している医療機関もある。
また,院外処方,調剤薬局での処方は,院内処方よりも一部負担金が高くなることや,薬局まで行く手間がかかるなど,医薬分業のメリットを感じないという考えもある。現在,国は電子処方箋を推進しており,院内処方そのものを廃止する積極的な動きはみられないが,オンライン資格確認のように唐突かつ強引に電子処方箋を義務化する可能性は否定できない。オンライン資格確認にかかる混乱や後発医薬品の供給不足などは国が強引に推し進めた施策の結果,生じた問題であり,患者に寄り添ったやさしい医療政策が実現されるよう近医連や日医を通じて,国へ意見を届ける。
~意見交換~
亀岡・船井地域の調剤薬局では電子処方箋への対応ができているところは皆無であるとの現状が示されるとともに,院内処方は患者さんのために実施している医療機関が多いはずであるとして,電子処方箋をはじめとする医療政策は地域の実情に応じた施策にするべきであるとの意見があった。
地区から,オンライン資格確認運用の問題点として,「暗証番号を覚えていられない人に,暗証番号のないマイナ保険証を発行すること」,「健康保険証と同等の資格確認証を発行することの意義」,「被保険者資格申立書」の主に3点が挙げられ,府医の見解を求めた。
~暗証番号のないマイナ保険証~
暗証番号のないマイナ保険証については,暗証番号がないので,顔認証ないし目視確認での対応となる。顔認証はマイナ保険証の通常の対応だが,目視確認は別人の資格確認をしてしまう可能性もあり,医療機関にとっては注意が必要である。
~資格確認証~
日医では,2024年秋の保険証廃止は時期尚早と主張をしていたにもかかわらず,政府がこれを強引に決定してしまった。その結果として,「保険診療を受けられない人が1人たりとも出ないように」という目的で資格確認書の発行が決まった。このことは,大臣が保険証の廃止期限を唐突に発表したことが発端であり,国民や医療現場の意見を聞くことなく,また,十分な議論もなく政府の方針が決まってしまったこと自体が,政治プロセスとして非常に問題がある。
~被保険者資格申立書~
被保険者資格申立書については,大変煩雑(下図参照)であり,最初に掛け間違ったボタンを直さずに,場当たり的に世間の批判をかわそうとした結果である。
政府に現場の意見を届けるためにも,これまで以上に医療関係者の総力を日医に結集する必要がある。
~意見交換~
在宅訪問時のマイナ保険証の資格確認方法について質問があった。これに対して,居宅同意取得型のオンライン資格確認は来年4月に運用開始の予定であり,9月29日の社会保障審議会医療保険部会にて,モバイル端末導入に係る補助金の支給額が示されているが,補助金の支給方法や時期などの詳細は決まっていないとして,詳細が分かり次第お知らせするとした。