「インボイス制導入後の院内購入薬剤に対する消費税」について議論

 下京東部医師会と府医執行部との懇談会が12月13日(水)ホテル日航プリンセス京都で開催され,下京東部医師会から13名,府医から5名が出席。「インボイス制導入後の院内購入薬剤に対する消費税」をテーマに議論が行われた。

〈注:この記事の内容は令和5年12月13日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。〉

インボイス制導入後の院内購入薬剤に対する消費税について

 地区から,現在の医薬品不足の影響もあり,一部の医薬品で対薬価90.9%以上の品目があり,特に低薬価の品目に多く見られ,逆ざやが問題になっていると指摘した上で,これらの問題を差し置いて,インボイス制度により,消費税の新たな納税義務が発生することに問題があるとして,府医の見解を求めた。

~医療機関におけるインボイス制度への対応~
 医療機関では収入の大半が保険診療で,自費(課税売上)は年間1,000万円以内のところが多いと推察され,医療機関の多くが免税事業者であると思われる。一方で,健診やワクチン接種などの自費が年間1,000万円超であれば,課税事業者となり,インボイスへの対応が必要になる。
 なお,医療機関の患者(一般消費者)は,消費税の申告も仕入税控除も行わないので,免税事業者である医療機関はわざわざインボイス制度を導入する必要はない。

~薬価と消費税~
 薬価は市場実勢価格に消費税を掛け合わせた上で,調整幅の2%を足して計算されており,2019年10月に消費税が10%になった際も薬価改定が行われた。
 診療報酬は非課税であり,患者としては薬価に消費税が含まれている印象は少ないかもしれないが,2016年に消費税が8%になったときから,医療機関などが発行する領収証や明細書には「厚生労働省が定める診療報酬や薬価等には,医療機関等が仕入れ時に負担する消費税が反映されています」という記載がされることとなった。

~薬価と納入価~
 逆ざやの問題については,薬価には消費税が含まれていることを念頭に,その分を差し引いた価格を基本に価格交渉する必要がある。先日,中医協で薬価調査の速報値が報告され,平均乖離率が6%と過去30年で最少となった。前回が7%,その前は7.6%であり,市場の実勢価格と薬価との乖離が少なくなっているが,毎年改定の影響や医薬品の流通事情が厳しい中で値引きが難しいことなども影響し,特に診療所では薬価と同額もしくは上回るケースも生じている。なお,6%の乖離率の要因として,大型チェーン薬局や価格交渉代行業者など大きな販売力,購買力があるところの値引きが影響している可能性が考えられる。
 院内処方の医療機関は毎年改定にともなう在庫管理と価格交渉に加えて,昨今の医薬品が安定供給されない中では医薬品の発注作業等でより一層負担が増している。逆ざやが生じる薬剤の解消には院外処方への変更も1つだが,患者の手間や調剤薬局がない地域もあり,難しい問題である。

~意見交換~
 健康診断や予防接種など企業から受託している場合,その企業側からインボイス発行を求められる可能性があり,対応しない場合には,委託先医療機関として選択されなくなる可能性があることにこの制度への不信感があるとの意見が述べられた。
 府医からは,医薬品の逆ざやの根本的な問題は,薬価の毎年改定と国が進めてきたジェネッリク推進施策にあると指摘。政府は医療費抑制のために,毎年の薬価改定による価格の引下げを行っているが,品目によっては原価割れをおこし不採算となっているものがあると説明した。
 加えて,後発医薬品メーカーの不祥事に端を発し,医薬品の供給不足が続いているが,しっかりした態勢を整えた企業が市場で正当に評価される仕組み作りが重要であり,各社の生産能力や流通・在庫に関する情報の不透明さを改善し,不測の事態を防ぐ体制が求められていると指摘。こうした改革を進めていくために,国は医療費抑制だけでなく安定供給を促す観点から,薬価のあり方について検討を重ねる必要があるとした。

保険医療懇談会

 基金・国保審査委員会連絡会合意事項について解説するとともに,個別指導における主な指摘事項について資料提示した。また,療養費同意書の交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書の発行に理解と協力を求めた。

2024年2月15日号TOP