学術講演会における「確認問題」

京都消化器医会 定例学術講演会
とき:1月13日(土)  ところ:京都府医師会館 + WEB 配信

「消化管機能を調節,改善するさまざまな漢方薬たち~科学的根拠に基づく作用機序の解明により明らかになってきたこと~」

東京慈恵会医科大学疼痛制御研究講座 特任教授/
国立がん研究センター東病院支持・緩和研究開発支援室 特任研究員/
国立がん研究センター先端医療開発センター 支持療法プロジェクトリーダー 上園 保仁 氏

設問 1  半夏瀉心湯の作用機序は,大きく5つの作用が考えられている。それは何か。

解答 1  半夏瀉心湯の作用機序は以下のとおりである。
① 抗酸化作用(乾姜,黄連,黄芩,甘草,人参,大棗)
② 抗炎症作用(乾姜,黄連,黄芩)
③ 抗菌作用(乾姜,黄連,半夏)
④ 鎮痛作用(乾姜,甘草)
⑤ 組織修復作用(乾姜,黄芩,甘草)

設問 2   半夏瀉心湯は,消化管の粘膜疾患に奏効する漢方薬である。どのような疾患に用いられるか。

解答 2   半夏瀉心湯は,服薬すると管腔(消化管側)からも作用するため,消化管の粘膜疾患(口内炎,胃炎,下痢)の改善に奏効する。

設問 3   大建中湯の効能・効果は,腹が冷えて痛み腹部膨満感のあるものであるが,その作用機序はどのように考えられているか。

解答 3   大建中湯を構成する乾姜の成分が,温冷覚,触覚の感知に関わる Transient Receptor Potential(TPR)チャネル(TRPV1,TRPA1 など)にはたらき,症状を緩和させる。また,山椒成分および人参成分は,乾姜の反応を助ける。

第356回 京都整形外科医会
とき:1月27日(土)  ところ:ホテルグランヴィア京都

「慢性疼痛治療アップデート」

京都府立医科大学疼痛・緩和医療学教室 教授 天谷 文昌 氏

設問 1  痛みの機序にはどのようなものがあるか。

解答 1  侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,痛覚変調性疼痛

解説 1  ・神経障害性疼痛は神経損傷により痛覚が過敏になって生じる。
・痛覚変調性疼痛でも痛覚が過敏になるが,その原因はわかっていない。

設問 2  集学的な痛み治療のメリットは何か。

解答 2  ・多職種アプローチにより,痛みを生物学的側面だけでなく,心理社会的問題としてとらえることで,生活の質改善に役立つ。
・痛みに併存する精神疾患や非薬物的治療としてのリハビリテーションなど,幅広い治療を提供することができる。

「人工股関節の最近の話題」

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻展開医療科学講座整形外科学 教授 尾﨑  誠 氏

設問 1  初回人工股関節置換術(初回 THA)について誤りはどれか。
A 人工股関節の耐用年数は10~20年である。
B  クロスリンクポリエチレンを用いた最近の人工股関節の平均的な10年生存率は90%以上である。
C  近年,インプラント周囲骨折と感染による人工股関節再置換術(再 THA)の割合が増加している。
D 若くて活動性が高い患者では再 THA が必要となるのリスクが上昇する。

解答 1  A

解説 1   Aが誤り。耐用年数とは本来期待される役割を果たす期間であるが,そもそも,人工股関節の耐用年数は“〇%の人工関節が再手術になるまでの期間”といった定義がない。また,クロスリンクポリエチレンが使用された最近の人工股関節は,手術後20年でも1~2割しか手術(再 THA)が必要になっていない。このため人工股関節の耐用年数が 10~20年というのは根拠が乏しいようである。

設問 2  人工股関節再置換術(再 THA)について誤りはどれか。
A最近の再 THA 後の人工関節の平均的な10年生存率は80%程度である。
B最近の再々 THA 後の人工関節の平均的な10年生存率は70%程度である。
C感染と脱臼が原因で再置換 THA が必要となった場合の成績は,インプラントのゆるみが原因で再置換 THA が必要となった場合の成績より劣る。
D骨折による再置換 THA の再手術(再々 THA )の原因は骨折が最も多い。

解答 2  D

解説 2  Dが誤り。脱臼や感染による再 THA の再手術(再々 THA)は同じ原因が最も多いが,骨折による再 THA の再手術の原因をみると,同じ原因(骨折)ではなく脱臼が最も多いことが海外のレジストリー調査で示されている。

2024年3月1日号TOP