令和5年度 第1回医療安全講演会を開催「テーマ:カルテの書き方」

 3月3日(日),府医会館にて「第1回医療安全講演会」を開催し,ウェブ参加を含め計176名が参加した。冒頭,上田府医副会長は,我々医師にとってカルテは非常に重要な役目を果たすものの,その記載に関してまとまった講義を受ける機会が少ないことから,カルテ記載の重要性を再認識していただく機会にしてほしいと挨拶した。

座長の山口 明浩 氏
(医療安全対策委員会委員長)
笠原 桂子 氏

 府医医療安全対策委員会委員長の山口明浩氏を座長として,「カルテの書き方」をテーマに講演が行われた。
 京都大学医学部附属病院 総合臨床教育・研修センターに所属で消化管外科医の笠原桂子氏は,医学部4回生や研修医に向けてカルテの書き方に関する講義や指導を行う中で,カルテとは「診療記録カード,診療録」であり,記入者の思考過程を記録として残すとともに,多職種をつなぐコミュニケーションツールであると説明。法律的位置づけは,診療補助,行政監督時の資料などとされる他,紛争時には医療行為を証明する重要な資料にもなるとし,講演では,「初診時入院時記録」と「経過記録」に分けて,記載時に考慮すべき注意点に関する頭文字をつなげた「AMPLE方式」と「SOAP方式」について詳細に解説した。さらに,思い込みや見落としがないことを予防するにはどうすれば良いか常に考えておくことが大切であり,患者側の考えも記録しておくと,後の説明や病歴を辿る際,非常に有用であると説明。第三者にも理解できるように,その都度遅滞なく記載することを心掛け,様々な人が目にする可能性があるという意識を持って記載することが大切であると呼びかけた。

<AMPLE方式>
 Allergy(アレルギー)
 Medication(内服)
 Pregnancy & Past history(妊娠の有無,既往歴)
 Last meal(最後の食事)
 Event(現病歴)

<SOAP方式>
 Subjective(主観的情報)
 Objective(客観的情報)
 Assessment(評価)
 Plan(計画)

廣石 阿津沙 氏

 続いて法曹界から,府医医療安全対策委員会委員で弁護士の廣石阿津沙氏は,民事訴訟においてはカルテの内容が,真実性の担保された証拠価値が高い書類と位置付けられるとし,記載する側は,読み手のことを考え,トラブルになりやすい評価を含むような表現を避け,正確に事実のみを書くという意識が必要と説明した。さらに同じ表現であっても,医療従事者と患者,患者家族との関係性により悪く捉えられることや,信頼関係が時を経て変化する可能性があることも常に意識し,丁寧な記載や患者対応がリスクヘッジに繋がると強調した。また弁護士として様々な係争に携わった経験から,実際にカルテ記載によりトラブルとなった実例を交え,適正な記載の方法について解説した。

2024年5月1日号TOP