京都府医師婦人会 山本淳子氏講演会「紫式部と源氏物語」

京都府医師婦人会副会長 出木谷 紀子

 令和6年6月26日(水)14時よりホテルオークラ京都にて京都先端科学大学教授・平安文学研究者でいらっしゃる山本淳子先生をお招きし講演会を開催いたしました。2024年大河ドラマ「光る君へ」の作者紫式部の恋と結婚を,紫式部自身が編纂した「紫式部集」の和歌を元にご講演いただきました。「紫式部集」は和歌による自伝であるため,その和歌の醸す言葉は力強く心に届きました。山本淳子先生はテレビ出演や執筆などご多忙でいらっしゃるにもかかわらず,当日ご用意くださったレジメは大河ドラマの先週今週に即した内容であり先生のご厚意にまず深く感動いたしました。ちょうど京都市出身の佐々木蔵之介氏が多く登場する週でもあり尚一層興味を持って聞き入る会場でした。
 紫式部は4歳で実母と死別,姉も若死,父は失業,夫にも結婚3年で先立たれるという苦労人であり,シングルマザーとして生きた女性。そもそも当時漢文や勉学は男性のみに許されており紫式部はそれらをこっそり習う葛藤もあったでしょう。夫藤原宣孝の明るい性格と包容力を支えに恋を成就し一女をもうけた紫式部は,夫との死別を転機として宮仕に入り源氏物語の大長編を執筆したそうです。登場する人物に時代と身分,そして人生の無常を背負わせもがく姿を描きました。思いどおりにはならない世というのは千年を経ても変わらないようで,私たち21世紀の人間のこころをも今なお引きつけます。紫式部は3年という短い結婚生活だったようですが,宣孝との愛ある日々を心の糧に一女賢子を立派に育てました。百人一首には母と娘(大弐三位)が並び,歌を贈り合い結ばれた宣孝もさぞ喜んでいることだろうと思いながら聞き入っていました。
 講演後の質疑応答をご紹介したく思います。

  • なかなか読破できない源氏物語はどの訳で読めば読み進めますか?
  • 角田光代訳は主語や尊敬語をわかりやすく書いてあります
  • 今後のテレビ出演のご予定は?
  • 2024年7月27日テレビ朝日
    「謎解き!伝説のミステリー」(見逃し配信中)
  • 今日の興味深いご講演をもう一度味わいたいときの著書はどれでしょうか?
  • 角川ソフィア文庫「紫式部ひとり語り」

 京都に居を構える者としてどっぷり紫式部に浸りたいと思いました。

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