保険医療部通信(第392報) – 厚生労働省かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けた議論の整理」

 厚労省かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会においてとりまとめられた「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けた議論の整理」が7月31日付で公表されましたので抜粋して掲載します。全文は厚労省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41896.html)をご参照ください。
 当該報告書を踏まえ,今年度中に,かかりつけ医機能報告制度に係る省令・告示等が公布されることとなります。かかりつけ医機能報告を行う対象医療機関は,特定機能病院を除く,病院・診療所となります。また,初回のかかりつけ医機能報告は,医療機能情報提供制度に基づく報告と併せて,1年半後の令和8年1~3月頃の見込みです。
 本分科会では,報告医療機関について「本来は研修修了者を要件とすべき」という意見も出ていましたが,地域における面としてのかかりつけ医機能を発揮するためにも,より多くの医療機関に手を挙げて参加していただくことが極めて重要だとする日医など医療側の主張により,「研修修了者の有無を報告すること」となったところです。
 今後,かかりつけ医機能の確保に向けた医師の研修の詳細については厚生労働科学研究班で整理され,また「地域における協議の場」での協議等が実効的に行われ,地域で必要なかかりつけ医機能が確保されるよう,「かかりつけ医機能の確保に関するガイドライン(仮称)」や地域の好事例集の作成等が予定されています。これらも示され次第,改めてお知らせします。

かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けた議論の整理(抜粋)

令和6年7月31日
かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会

1.はじめに

  • 令和5年5月に「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第31号)が成立・公布された。同法において,医療法が改正され,かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行い,令和7年4月に施行することとされている。

  • 具体的には,今後,複数の慢性疾患や医療と介護の複合ニーズを有することが多い高齢者の更なる増加と生産年齢人口の急減が見込まれる中,地域によって大きく異なる人口構造の変化に対応して,「治す医療」から「治し,支える医療」を実現していくためには,これまでの地域医療構想や地域包括ケアの取組に加え,かかりつけ医機能が発揮される制度整備を進める必要がある。その際には,国民・患者から見て,一人ひとりが受ける医療サービスの質の向上につながるものとする必要があることから,
    • 国民・患者が,そのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるための情報提供を強化し,
    • 地域の実情に応じて,各医療機関が機能や専門性に応じて連携しつつ,自らが担うかかりつけ医機能の内容を強化することで,地域において必要なかかりつけ医機能を確保するための制度整備を行うものである。

  • かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けて,「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」を設置し,昨年11月以降,8回にわたって議論を重ねてきたところであり,今般,これまでの議論を整理し,報告書として取りまとめる。

2.かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けた基本的な考え方
(2040年頃までを視野に入れた今後の人口動態・医療需要等を踏まえた地域で必要とされる主な医療機能・地域の医療提供体制のイメージ)

  • かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けて,慢性疾患を有する高齢者の増加や生産年齢人口の減少が加速していく2040年頃までを視野に入れて,今後の人口動態・医療需要等を踏まえ,地域で必要とされる主な医療機能・地域の医療提供体制について,地域での連携も含め,以下のようなイメージを念頭におきながら検討を進めてきた。

Ⅰ.2040年頃までを視野に入れた人口動態・医療需要

  • 複数の慢性疾患,認知症,医療介護の複合ニーズ等をかかえる高齢者が増加する一方,医療従事者のマンパワーの制約があり,医療従事者の働き方改革を推進する中で,地域の医療機関等や多職種が機能や専門性に応じて連携して,必要なときに必要な医療を受けられる体制を確保し,地域の医療需要に対応することが一層重要となるのではないか。
  • 複数の慢性疾患,認知症,医療介護の複合ニーズ等をかかえる高齢者の増加に伴い,地域において以下のような機能を確保することが一層重要となるのではないか。
    • 複数の慢性疾患の継続的な管理を行う機能
    • 患者に体調悪化が生じた場合に,生活背景等も踏まえた全人的な診療や保健指導等を行う機能
    • 必要に応じて他の専門的な医療機関に紹介し,その後,患者の状態が落ち着いた場合は,逆紹介を受け身近な地域で継続的に医療を提供する機能
    • 認知症対応を行う機能
    • 高齢者の体調急変時に夜間休日対応を行う機能,初期救急や二次救急等で高齢者を受け入れる機能
    • 医療機関等で医療情報の共有を行い,継続的な治療や服薬管理等を行う機能
    • 生活の場で高齢者を支える在宅医療を行う機能
    • 在宅療養者の後方支援病床を確保し,入院医療機関と在宅医療を行う医療機関等が連携し,
    • 入退院時の情報共有支援を行う機能
    • 高齢者施設における入所者の高齢化も踏まえ,高齢者施設の入所者に対する日常的な健康管
    • 理,慢性疾患の管理,体調急変時に備えた指導や体調急変時の対応など,高齢者施設における医療を行う機能
    • 自宅や高齢者施設を含め,看取り・ターミナルケアを行う機能。本人の望む医療やケアを繰り返し話し合うACPを行う機能
    • 地域包括ケアシステムの中で,主治医意見書,地域ケア会議,ケアカンファレンス,認定審査会等の対応をはじめ,介護サービス・生活支援サービス等との連携・調整を行う機能
    • 高齢者の生活を支える観点から,治療等とともに,健康相談生活指導等を行う機能
    • 予防の観点から,健診予防接種等を行う機能など
  • 高齢者が増加する中で,治し支える医療を提供するため,個々の医師の担う領域を広げていけるよう,医師の教育や研修の充実が重要となるのではないか。

Ⅱ.2040年頃までを視野に入れた医療提供体制を取り巻く状況

  • 生産年齢人口が減少する中で,医療従事者の働き方改革を進めながら,地域で必要な医療提供体制を確保するため,以下のような取組が重要となるのではないか。
    • 生産年齢人口が減少して医療需要の質量が変化するとともに,人材確保が困難になると見込まれる中で,効率的に質の高い医療を提供する観点から,地域によって,一定の症例を集積して医療の質を確保するとともに,医療機能の転換集約化,地域の医療機関等の連携の確保,遠隔医療やオンライン診療の活用等。その際,医療情報を共有する基盤の整備,疾患機能に応じたアクセス時間の考慮等が重要。
    • 24時間の在宅医療や夜間休日対応等を行うため,病院や診療所等の連携確保,複数医師による診療所,複数診療所でのグループ診療の推進。手法の一つとして地域医療連携推進法人制度の活用。
    • 地域の医師の高齢化が進む中,健診,予防接種,学校医,産業医,警察業務等の地域保健・公衆衛生の体制の確保。
  • 医療従事者の確保や医療従事者が活躍できる環境の整備,医師の地域診療科偏在への対応,現役世代が医療健診健康相談等を受けられる体制の確保,医療の高度化や持続可能性への対応等も重要となるのではないか。

Ⅲ.地域の医療提供体制のイメージ(大都市部,地方都市部,過疎地域等で異なる)

(かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けた基本的な考え方)

  • 複数の慢性疾患,認知症,医療介護の複合ニーズ等をかかえる高齢者が増加する一方,医療従事者のマンパワーの制約があり,医療従事者の働き方改革を推進する中で,地域の医療機関等や多職種が機能や専門性に応じて連携して,効率的に質の高い医療を提供し,フリーアクセスのもと,必要なときに必要な医療を受けられる体制を確保することが重要である。
  • このため,かかりつけ医機能報告及び医療機能情報提供制度により,
    • 「 かかりつけ医機能を有する医療機関」及び当該医療機関のかかりつけ医機能の内容について,国民・患者に情報提供し,明確化することによって,国民・患者のより適切な医療機関の選択に資することが重要である。
    • また,「かかりつけ医機能を有する医療機関」及び当該医療機関のかかりつけ医機能の内容や今後担う意向について,地域の協議の場に報告し,地域での確保状況を確認して,地域で不足する機能を確保する方策(プライマリケア研修や在宅医療研修等の充実,夜間・休日対応の調整,在宅患者の24 時間対応の調整,後方支援病床の確保,地域の退院ルール等の調整,地域医療連携推進法人制度の活用等)を検討・実施することによって,地域医療の質の向上を図ることが重要である。
    • その際,地域性を踏まえた「かかりつけ医機能を有する医療機関」の多様な類型(モデル)の提示を行い,地域で不足する機能の確保のため,各医療機関が機能や専門性に応じて連携しつつ,自らが担うかかりつけ医機能の内容を強化するように促すことが重要である。
  • 「地域における協議の場」でのかかりつけ医機能に関する協議について,特に在宅医療や介護連携等の協議に当たって,市町村単位や日常生活圏域単位等での協議や市町村の積極的な関与・役割が重要である。
  • かかりつけ医機能が発揮されるための基盤整備として,かかりつけ医機能の確保に向けた医師の教育や研修を充実して,患者の生活背景等も踏まえて幅広い診療領域の全人的な診療を行う医師の増加を促していくことが重要である。
  • 地域におけるかかりつけ医機能の実装に向けて,在宅医療・介護連携推進事業による相談支援や在宅医療研修等の取組,地域医療連携推進法人等による病院や診療所等の連携確保,複数医師による診療所,複数診療所でのグループ診療等の推進,都道府県・市町村職員の研修等を充実していくことが重要である。また,医療DXによる医療機関間の情報共有基盤の整備等に取り組むことが重要である。

3.制度の施行に向けて省令やガイドライン等で定める必要がある事項
(1) かかりつけ医機能が発揮される制度整備の枠組み

  • かかりつけ医機能が発揮される制度整備は,以下の枠組みで行うこととされている。
    • 医療機能情報提供制度の刷新
      • かかりつけ医機能(「身近な地域における日常的な診療,疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能」と定義)を十分に理解した上で,自ら適切に医療機関を選択できるよう,医療機能情報提供制度による国民・患者への情報提供の充実・強化を図る。
    • かかりつけ医機能報告の創設
      • 慢性疾患を有する高齢者その他の継続的に医療を必要とする者を地域で支えるために必要なかかりつけ医機能(日常的な診療の総合的・継続的実施,在宅医療の提供,介護サービス等との連携など)について,各医療機関から都道府県知事への報告を求める。
      • 都道府県知事は,報告をした医療機関が,かかりつけ医機能の確保に係る体制を有することを確認し,外来医療に関する地域の関係者との協議の場に報告するとともに,公表する。
      • 都道府県知事は,外来医療に関する地域の関係者との協議の場で,必要な機能を確保する具体的方策を検討・公表する。
    • 患者等に対する説明
      • 都道府県知事による②の確認を受けた医療機関は,慢性疾患を有する高齢者等に在宅医療を提供する場合など外来医療で説明が特に必要な場合であって,患者や家族が希望する場合に,かかりつけ医機能として提供する医療の内容について電磁的方法又は書面交付により説明するよう努める。

(2) 「かかりつけ医機能を有する医療機関」の明確化
  ①かかりつけ医機能報告による報告・公表
   (報告を求めるかかりつけ医機能の内容)

  • かかりつけ医機能報告の報告事項について,本分科会において,以下のような意見があった。
    • かかりつけ医機能報告制度にできるだけ多くの医療機関に参加してもらうことが,85歳以上の高齢者が増加する中で非常に重要。まずは研修修了者の有無を報告することとし,経過をみて再検討することでよい。また,患者の訴える症状と医師の考える症状に違いがあり,症状の報告は医療現場が混乱する。一次診療の診療領域ごとの対応の可能性と疾患 を報告することで問題ない。
    • 一次診療に関する疾患が報告されることで,患者が医療機関を選ぶ際に役に立つ情報となる。難しい言葉となっている疾患は,患者に分かりやすい解説が必要。また,かかりつけ医機能に関する研修を修了しているかどうか,研修修了者の有無が分かることが患者にもよい。
    • 患者側と医療側の認識の差異がない診療領域の報告がよい。頻度の高い疾患として40 疾患の報告は有益。あまり煩雑にならないよう国民患者への見せ方を工夫する必要。
    • 研修の項目・内容等を厚労科研で検討するので,検討時間も考えると,まずは研修修了者の有無を報告することとし,5年後に改めて検討することが妥当。また,多くの医療機関が参画するため,現場に混乱を来さない診療領域の報告がよい。症状よりも診療領域を報告事項とする方が医療機関連携も進みやすい。疾患の報告は患者に分かりやすい制度設計にすることが重要。
    • 本来は研修修了者を要件とすべきだが,円滑な施行につながるのであれば,研修修了者の有無を報告して,5年後に再検討でもやむを得ない。5年間で研修の質と量の充実に取り組んでいただきたい。また,国民・患者に分かりやすく適切な医療機関の選択に役立つ観点から,本来は症状の報告が必要だが,制度開始時点で,症状の報告は医療現場が混乱するのであれば,最初は疾患の報告でスタートでもやむを得ない。患者の受け止めを含めて制度の実施状況を見ながら,5年後に症状の取扱いを改めて検討すべき。
    • 一定以上の疾患・症状に幅広く対応できる医療機関であることが示されることが,国民・患者の選択に資する。制度開始時に症状の報告が有効に機能する環境が整っていないならば,40疾患の報告は次善の策と認める。国民・患者が初期に自覚できるのは症状であることを踏まえると,制度の定着に伴い,近い将来において,症状に関する報告を含められるようにすべき。
    • 改正医療法で1号機能を有する医療機関が2号機能を報告することとなっているが,今後,この条文の建て付けのあり方や,医師の能力等に関する事項と医療機関の機能に関する事項の整理,かかりつけ医機能に関する関連法令の規定の整備等も検討すべき。
  • このような意見を踏まえ,かかりつけ医機能報告において,報告を求めるかかりつけ医機能の具体的な機能及び報告事項は,令和7年4月の施行に当たり,以下のとおりとする。

Ⅰ.1号機能「継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療その他の日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能」
 <具体的な機能>

  • 継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療を行うとともに,継続的な医療を要する者に対する日常的な診療において,患者の生活背景を把握し,適切な診療及び保健指導を行い,自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には,地域の医師,医療機関等と協力して解決策を提供する機能
    • 平成25年8月の日本医師会・四病院団体協議会合同提言「かかりつけ医は,日常行う診療においては,患者の生活背景を把握し,適切な診療及び保健指導を行い,自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には,地域の医師,医療機関等と協力して解決策を提供する。」

 <当該機能に係る報告事項>

  • 「具体的な機能」を有すること及び「報告事項」について院内掲示により公表していること
  • かかりつけ医機能に関する研修※1の修了者の有無,総合診療専門医の有無(有無を報告すれば可)
    • 改正医療法施行後5年を目途として,研修充実の状況等を踏まえ,かかりつけ医機能に関する研修の修了者がいること又は総合診療専門医がいることを報告することについて改めて検討する。
      • かかりつけ医機能に関する研修の要件を設定して,該当する研修を示す。
  • 17の診療領域※2ごとの一次診療の対応可能の有無,いずれかの診療領域について一次診療を行うことができること(一次診療を行うことができる疾患※3も報告する)医療に関する患者からの相談に応じることができること(継続的な医療を要する者への継続的な相談対応を含む)
    • 改正医療法施行後5年を目途として,制度の施行状況等を踏まえ,一次診療・患者相談対応に関する報告事項について改めて検討する。
      • 皮膚・形成外科領域,神経・脳血管領域,精神科・神経科領域,眼領域,耳鼻咽喉領域,呼吸器領域,消化器系領域,肝・胆道・膵臓領域,循環器系領域,腎・泌尿器系領域,産科領域,婦人科領域,乳腺領域,内分泌・代謝・栄養領域,血液・免疫系領域,筋・骨格系及び外傷領域,小児領域
      • 報告できる疾患は,患者調査による推計外来患者数が多い傷病を基に検討して設定する。

→①~③のいずれも「可」の報告の場合は「1号機能を有する医療機関」として,2号機能の報告を行う。

 <上記以外の報告事項>

  • 医師数,外来の看護師数,専門看護師・認定看護師・特定行為研修修了看護師数
  • かかりつけ医機能に関する研修の修了者数,総合診療専門医数
  • 全国医療情報プラットフォームに参加・活用する体制※4の有無
    • オンライン資格確認を行う体制,オンライン資格確認等システムの活用により診療情報等を診 察室等で閲覧・活用できる体制,電子処方箋により処方箋を発行できる体制,電子カルテ情報 共有サービスにより取得される診療情報等を活用する体制
  • 全国医療情報プラットフォームの参加・活用状況,服薬の一元管理の実施状況

Ⅱ.2号機能
 ⅰ 通常の診療時間外の診療

 <具体的な機能>

  • 通常の診療時間以外の時間に診療を行う機能

 <当該機能に係る報告事項>

  • 自院又は連携による通常の診療時間外の診療体制の確保状況(在宅当番医制休日夜間急患センター等に参加,自院の連絡先を渡して随時対応,自院での一定の対応に加えて他医療機関と連携して随時対応等),連携して確保する場合は連携医療機関の名称
  • 自院における時間外対応加算1~4の届出状況,時間外加算,深夜加算,休日加算の算定状 況

→①・②の報告事項のいずれかがある場合は「当該機能有り」とする。

 ⅱ 入退院時の支援
 <具体的な機能>

  • 在宅患者の後方支援病床を確保し,地域の退院ルールや地域連携クリティカルパスに参加し,入退院時に情報共有・共同指導を行う機能

 <当該機能に係る報告事項>

  • 自院又は連携による後方支援病床の確保状況,連携して確保する場合は連携医療機関の名称
  • 自院における入院時の情報共有の診療報酬項目の算定状況
  • 自院における地域の退院ルールや地域連携クリティカルパスへの参加状況
  • 自院における退院時の情報共有・共同指導の診療報酬項目の算定状況
  • 特定機能病院・地域医療支援病院・紹介受診重点医療機関から紹介状により紹介を受けた外来患者数

→①~⑤の報告事項のいずれかがある場合は「当該機能有り」とする。

 ⅲ 在宅医療の提供
 <具体的な機能>

  • 在宅医療を提供する機能

 <当該機能に係る報告事項>

  • 自院又は連携による在宅医療を提供する体制の確保状況(自院で日中のみ,自院で24時間対応,自院での一定の対応に加えて連携して24時間対応等),連携して確保する場合は連携医療機関の名称
  • 自院における訪問診療・往診・訪問看護の診療報酬項目の算定状況
  • 自院における訪問看護指示料の算定状況
  • 自院における在宅看取りの実施状況

→①~④の報告事項のいずれかがある場合は「当該機能有り」とする。

 ⅳ 介護サービス等と連携した医療提供
 <具体的な機能>

  • 介護サービス等の事業者と連携して医療を提供する機能

 <当該機能に係る報告事項>

  • 介護サービス等の事業者と連携して医療を提供する体制の確保状況(主治医意見書の作成,地域ケア会議・サービス担当者会議等への参加,介護支援専門員や相談支援専門員と相談機会設定等)
  • 介護支援専門員や相談支援専門員への情報共有・指導の診療報酬項目の算定状況
  • 介護保険施設等における医療の提供状況(協力医療機関となっている施設の名称)
  • 地域の医療介護情報共有システムの参加・活用状況
  • ACPの実施状況

→①~⑤の報告事項のいずれかがある場合は「当該機能有り」とする。

Ⅲ.その他の報告事項

  • 健診,予防接種,地域活動(学校医,産業医,警察業務等),学生・研修医・リカレント教育等の教育活動 等
  • 1号機能及び2号機能の報告で「当該機能有り」と現時点でならない場合は,今後担う意向の有無

(かかりつけ医機能報告の報告を行う対象医療機関)

  • かかりつけ医機能報告の報告を行う対象医療機関は,特定機能病院及び歯科医療機関を除く,病院・診療所とする。
  • なお,本分科会において,地域医療支援病院は地域の診療所等を支援する役割を担っており,自院でかかりつけ医機能を担う場合は限定されるとの意見があった。

(かかりつけ医機能報告の2号機能の体制の確認)

  • 都道府県は,2号機能で「当該機能有り」の報告をした医療機関について,「報告事項」で体制を有することを確認する。必要な場合は担当者等の体制を確認する。

(かかりつけ医機能報告に関する公表)

  • 都道府県は,以下について公表を行う。
    • 1号機能及び2号機能について医療機関から報告された事項
    • 2号機能の体制の確認結果
    • 地域の協議の場で協議を行った結果

(かかりつけ医機能報告のスケジュール)

  • かかりつけ医機能報告について,医療機能情報提供制度に基づく報告と併せて,1~3月に報告を行うこととする。

<スケジュールのイメージ>

(地域性を踏まえた「かかりつけ医機能を有する医療機関」の多様な類型(モデル)の提示)

  • 「全世代型社会保障構築会議報告書」(令和4年12月)において,「必要なときに迅速に必要な医療を受けられるフリーアクセスの考え方のもとで,地域包括ケアの中で,地域のそれぞれの医療機関が地域の実情に応じて,その機能や専門性に応じて連携しつつ,かかりつけ医機能を発揮するよう促すべき」とされている。
  • 本分科会において,地域の医療連携体制の構築に関して以下のような意見があった。
    • 自分の医療機関だけで全ての機能を担うことは難しい。地域においていろいろな医療機関と連携して,地域が面として役割を担えることが望まれる体制ではないか。
    • 地域で面での連携をいかに安定して提供していくかという中で,かかりつけ医機能の報告をいかにうまく活用していくかが大切。地域医療の中が見える化されるので,地域で必要なニーズを話し合いながら,お互いに足りない部分の連携を取っていくということ。特に地方では診療所の医師の高齢化も進んでおり,全ての機能を背負うのは非常に難しい。自分の地域の不足しているところが見えてきて,それをいかにカバーしていくかで,前向きな方向に向くのではないか。地域の実情に見合った連携ができるような,かかりつけ医機能の体制づくりをしていく必要。
    • かかりつけ医機能支援病院,かかりつけ医機能支援診療所との連携の中で,頑張っておられる先生方の負荷をできるだけ軽くするような方向性を考えることが重要。
    • 在宅医療における24 時間対応等の体制を確保するため,医療機関間の連携とともに,訪問看護や介護等との連携体制の構築も重要。
  • また,かかりつけ医機能を有する医療機関の多様な類型が考えられる中で,かかりつけ医機能を支援する病院・診療所が支えることにより,地域の医療機関がより積極的に安心してかかりつけ医機能を担うことができるようになるとの意見があった。
  • かかりつけ医機能を支援する病院・診療所を含め,「かかりつけ医機能を有する医療機関」の多様な類型(モデル)の提示を行い,地域で不足する機能の確保のため,各医療機関が機能や専門性に応じて連携しつつ,自らが担うかかりつけ医機能の内容を強化するように促すことが重要であり,このような観点から,今後,厚生労働省で策定する「かかりつけ医機能の確保に関するガイドライン(仮称)」において,地域性を踏まえた「かかりつけ医機能を有する医療機関」の多様な類型(モデル)を示すこととする。
     なお,その際,かかりつけ医機能を担う医師の育成とともに,かかりつけ医機能を支援する医療機関の医師の育成も重要である。

<「かかりつけ医機能を有する医療機関」の多様な類型(モデル)のイメージ例>

  • かかりつけ医機能を支援する医療機関のコンセプト・求められる主な要素
    • 地域の医療機関がかかりつけ医機能を発揮するための包括的な支援を行い,地域で積極的にかかりつけ医機能を担う医療機関の増加に資する。
    • 複数医師が常勤,休日夜間対応を実施,24 時間体制の在宅医療を実施,困難な在宅医療にも対応,地域の在宅医療をサポート,後方支援病床を確保,介護施設との連携,地域連携多職種連携を日常的に実施,学生研修医リカレント教育等の教育活動等

  ②かかりつけ医機能に関する医療機能情報提供制度の見直し
  (かかりつけ医機能に関する情報提供項目の見直し)

  • 国民・患者のより適切な医療機関の選択に資するよう,かかりつけ医機能報告の報告事項のうち,国民・患者が適切に医療機関を選択できることに資する項目について,医療機能情報提供制度の情報提供項目に位置付けることとする。
  • 具体的には,かかりつけ医機能報告の報告事項について,「1号機能及び2号機能の報告で「当該機能有り」と現時点でならない場合は,今後担う意向の有無」以外の項目は,医療機能情報提供制度の情報提供項目に位置付ける。
  • その際,医療機能情報提供制度の全国統一システムである医療情報ネット「ナビイ」において,国民・患者に分かりやすく情報提供する観点から,用語解説※を作成して,かかりつけ医機能の内容を周知するとともに,上手な医療のかかり方の周知を行うこととする。
    • 目次を整備して項目をクリック/タップすることで解説に遷移する,検索画面の項目横に「?」アイコンを追加してアイコンにカーソルを重ねると解説が記載された小窓が表示されるなど,簡便に用語解説を参照できる方法を工夫

  (医療情報ネット「ナビイ」におけるかかりつけ医機能に関連する検索機能の追加)

  • 医療情報ネット「ナビイ」において,検索性利便性を高めるため,トップページに「かかりつけ医機能で探す」ボタンを追加し,当該ボタンを押すと,かかりつけ医機能に関する検索条件設定ページに移動し,かかりつけ医機能に関連する項目を検索条件として,医療機関の検索を行えるようにする。
  • また,検索の結果,各医療機関の概要情報を表示するページにおいて,かかりつけ医機能のタブを追加して,当該ボタンを押すと,当該医療機関のかかりつけ医機能に関連する事項をまとめて閲覧できるようにする。

(3) 「地域における協議の場」での協議

  (改正医療法の規定)

  • 改正医療法において,都道府県は,医療関係者,医療保険者等との地域の協議の場を設け,かかりつけ医機能の確保に関する事項について協議を行い,その結果を取りまとめ,公表することとされている。
  • また,地域における協議の場は,介護等と密接に関連するサービスに関する事項を協議する場合には,関係する市町村の参加を求めることとされ,また,地域医療構想調整会議を活用することができるとされている。
    • かかりつけ医機能報告により報告された事項は,改正医療法により,都道府県が公表することとされている。

  (協議の場の圏域と参加者)

  • 既存の外来医療に関する協議の場は,原則として二次医療圏としつつ,人口規模,患者の受療動向,医療機関の設置状況等を勘案して二次医療圏を細分化した都道府県独自の単位で検討を行っても差し支えないこととされている。
    • 外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン
  • 医療計画における在宅医療提供体制の構築に関する圏域は,医療資源の整備状況や介護との連携のあり方が地域によって大きく異なることを勘案し,従来の二次医療圏にこだわらず,できる限り急変時の対応体制や医療と介護の連携体制の構築が図られるよう,市町村単位や保健所圏域等の地域の医療及び介護資源等の実情に応じて弾力的に設定することとされている。
    • 在宅医療の体制構築に係る指針
  • 本分科会においては,協議の場に関して以下の意見があった。
    • 市町村自らが地域医療の実態を把握するとともに,市町村が主体的に地域医療への課題解決に向けた権限や役割を持つことが重要。
    • かかりつけ医機能に関する協議は生活圏域の自治体単位が基本で,二次医療圏単位で話をする場合は自治体間の情報交換として有効。
    • 都道府県は,市町村が議論に参加しやすくなる工夫や支援,小規模市町村の場合は複数市町村単位での協議の場の設定など,協議の場の協議において市町村をサポートする観点も重要。
  • これらを踏まえ,かかりつけ医機能に関する「協議の場」の圏域は,実施主体である都道府県が市町村と調整して決定することとし,その際,協議するテーマに応じて,時間外診療,在宅医療,介護等との連携等は市町村単位等(小規模市町村の場合は複数市町村単位等)で協議を行い,入退院支援等は二次医療圏単位等で協議を行い,全体を都道府県単位で統合・調整するなど,「協議の場」を重層的に設定することを考慮することとする。
  • 協議の場の参加者については,協議するテーマに応じて,都道府県,保健所,市町村,医療関係者,介護関係者,保険者,住民・患者(障害者団体・関係団体を含む)等を参加者として,都道府県が市町村と調整して決定することとする。その際,協議するテーマによって,病院・診療所関係者とともに,歯科関係者,薬局・薬剤師関係者,看護関係者等の参加を考慮する。
  • また,かかりつけ医機能に関する調整や協議のコーディネーターについて,地域医療介護総合確保基金を活用して支援が可能であることを明確化するとともに,今後,厚生労働省で策定する「かかりつけ医機能の確保に関するガイドライン(仮称)」において,在宅医療・介護連携推進事業等の取組も踏まえ,コーディネーターに求められる機能を整理して示すこととする。
  • なお,現在,新たな地域医療構想について,「新たな地域医療構想等に関する検討会」において,2040 年頃を見据え,医療・介護の複合ニーズを抱える 85 歳以上人口の増大等に対応できるよう,病院のみならず,かかりつけ医機能や在宅医療,医療・介護連携等を含め,地域の医療提供体制全体の地域医療構想として検討が進められている。その中で,協議するテーマに応じた調整会議の市町村単位等での開催,市町村や介護関係団体の参画,介護保険や在宅医療・介護連携推進事業等の運営・実施主体である市町村の役割等についても検討の論点とされている。かかりつけ医機能に関する「協議の場」や地域の協議等についても,これらの検討状況を踏まえることに留意する。

  (協議の場における議論の進め方)

  • かかりつけ医機能は,日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能,時間外診療,入退院支援,在宅医療,介護等との連携等の幅広い機能を内包している。
  • 地域での協議を進める上では,まずは,地域の関係者で,かかりつけ医機能について,データを活用し,地域での確保状況や課題等の認識を共有して,地域で目指すべき姿について議論して共有を図った上で,当該課題に対する具体的な方策と誰が何を担うのかの役割分担等について議論することとする。
  • 地域におけるかかりつけ医機能に関する協議が実効的に行われ,地域で必要なかかりつけ医機能が確保されるよう,今後,厚生労働省で策定する「かかりつけ医機能の確保に関するガイドライン(仮称)」において,地域の好事例等を踏まえ,かかりつけ医機能に関するテーマごとの協議の進め方の具体的な例,考えられる具体的な対応方策や具体的取組の例等を示すこととする。

  <協議の進め方のイメージ>

  • データの活用,確保状況や課題等の認識共有
    • かかりつけ医機能報告データ等を活用し,地域のかかりつけ医機能の確保状況や課題等について,関係者で認識を共有する。
  • 原因の分析,地域で目指すべき姿の共有
    • ①の確保状況や課題等について,関係者それぞれの視点から原因を分析し,その上で,地域で目指すべき姿について議論して共有する。
  • 具体的な方策と役割分担の決定
    • ②の地域で目指すべき姿を踏まえ,課題に対する具体的な方策と地域における役割分担等について議論し,結果を共有して取り組む。
  • 効果と検証
    • ③の結果得られた効果について,次回以降の協議の場において検証する。
      ※テーマごとに①~④をサイクルとして回す。

(4) 「かかりつけ医機能を有する医療機関」の患者等への説明

  (改正医療法の規定)

  • 改正医療法において,かかりつけ医機能(2号機能)の確保に係る体制を有することについて都道府県知事の確認を受けた医療機関は,慢性疾患を有する高齢者等に在宅医療を提供する場合その他外来医療を提供するに当たって説明が特に必要な場合として厚生労働省令で定める場合であって,患者又は家族から求めがあったときは,正当な理由がある場合を除き,疾患名,治療計画等について適切な説明が行われるよう努めなければならないこととされている。
    ※説明は電磁的方法その他の厚生労働省令で定める方法により行う。
    • 対象医療機関:かかりつけ医機能(2号機能)の確保に係る体制を有することについて,都道府県知事の確認を受けた医療機関
    • 対象患者:慢性疾患を有する高齢者等の継続的な医療を要する患者
    • 対象となる場合:在宅医療を提供する場合その他外来医療を提供するに当たって説明が特に必要な場合で,患者やその家族から求めがあったとき
      ※医療機関は正当な理由がある場合は説明を拒むことができる。

  (説明が努力義務となる場合)

  • 改正医療法において,説明が努力義務となる場合については,「継続的な医療を要する者に対して居宅等において必要な医療の提供をする場合その他外来医療を提供するに当たって説明が特に必要な場合として厚生労働省令で定める場合」であって,患者又は家族から求めがあったときと規定されている。
  • 患者等への説明に当たって,継続的な医療を要する者とかかりつけ医機能を有する医療機関との関係を確認できることが重要であり,また,継続的な医療を要する者について,一定期間以上継続的に医療の提供が必要であると見込まれる場合は,在宅医療だけでなく,外来医療においても,必要なときに相談できる関係をつくることが重要であると考えられる。このため,「厚生労働省令で定める場合」については,「自院において,継続的な医療を要する者に対して在宅医療や外来医療を提供する場合であって,一定期間以上継続的に医療の提供が見込まれる場合」とする。また,一定期間は概ね4か月とする。
    • なお,説明が努力義務となるのは,この場合であって,患者又は家族から求めがあったときである。

  (説明の内容)

  • 改正医療法において,疾患名,治療に関する計画,当該病院又は診療所の名称,住所及び連絡先,その他厚生労働省令で定める事項について,適切な説明が行われるように努めなければならないこととされており,「その他厚生労働省令で定める事項」について,以下のとおりとする。
    • 「当該患者に対して発揮するかかりつけ医機能」
      • 当該患者に対する1号機能や2号機能,2号機能を連携して確保する場合は連携医療機関
    • 「病院又は診療所の管理者が患者への適切な医療の提供のために必要と判断する事項」
      • 医療法第6条の4に基づく入院診療計画書の交付義務において,説明内容の一つとして,「病院又は診療所の管理者が患者への適切な医療の提供のために必要と判断する事項」が定められている。

  (説明の努力義務が免除される正当な理由)

  • 改正医療法において,「…当該継続的な医療を要する者又はその家族からの求めがあつたときは,正当な理由がある場合を除き,…次に掲げる事項の適切な説明が行われるよう努めなければならない。」とされている。
  • 患者又は家族から説明の求めがあっても,説明の努力義務が免除される場合を規定するものであり,「正当な理由がある場合」については,医療法第6条の4に基づく入院診療計画書の交付義務が免除される場合の考え方も参考に,以下のとおりとする。
    • 説明を行うことで,当該患者の適切な診療に支障を及ぼすおそれがある場合
    • 説明を行うことで,人の生命,身体又は財産に危険を生じさせるおそれがある場合
      ※入院診療計画書の交付義務が免除される場合
    • 患者が短期間で退院することが見込まれる場合
    • 当該書面を交付することにより,当該患者の適切な診療に支障を及ぼすおそれがある場合
    • 当該書面を交付することにより,人の生命,身体又は財産に危険を生じさせるおそれがある場合

  (説明の方法)

  • 改正医療法において,「当該継続的な医療を要する者又はその家族からの求めがあつたときは,正当な理由がある場合を除き,電磁的方法その他の厚生労働省令で定める方法により,その診療を担当する医師又は歯科医師により,当該継続的な医療を要する者又はその家族に対し,次に掲げる事項の適切な説明が行われるよう努めなければならない。」とされている。
  • 「電磁的方法その他の厚生労働省令で定める方法」については,以下のとおりとする。
    • 書面により提供する方法
    • 電子メール等により提供する方法
    • 磁気ディスクの交付により提供する方法
    • 患者の同意を得て電子カルテ情報共有システムにおける患者サマリーに入力する方法
      ※電子カルテ情報共有システムについては開発中

 (国民・患者等への周知)

  • かかりつけ医機能報告制度や患者等への説明等について理解を深めるための動画や,国民・患者や医療機関それぞれを対象としたポスター等を作成する。また,書面や電子メール等による患者等への説明について,医療機関から患者に説明することも重要である。

4.かかりつけ医機能が発揮されるための基盤整備,国の支援のあり方等
(1) 地域で必要となるかかりつけ医機能の確保に向けた医師の教育や研修の充実

  (基本的な考え方)

  • 「全世代型社会保障構築会議報告書」(令和4年 12 月)において,「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を進めるにあたっては,医療従事者,特に医師の育成やキャリアパスの在り方について,大規模病院の果たす役割も含めて検討すべき」とされている。
  • 本分科会において,医師の教育や研修に関して以下のような意見があった。
    • 自分の専門の人を診ながら,他の部分も総合的に診ているかかりつけの先生も多い。急な変革は無理なので,目標に向かって学びやすい教育環境をどう効果的・効率的につくっていくかが重要。専門を持ちながらかかりつけ医としてやっている先生にとって何が学びたいか,どういう分野のどういう内容を学べば,もっと幅が出せるか,ニーズに合わせた教材を作成していくことが効率的。
    • 総合診療専門医をどう活用して増やしていくかも重要であり,また,今まで違う科をやってきたけれども,プライマリ・ケア,在宅医療とか,地域医療に参画したい先生方に対するリカレント教育も大変重要。
    • かかりつけ医機能を担う医師向けの研修や認定制度は様々な民間団体で実施されており,こうした取組を支援する等,既存の取組を活かす形で進めるべき。
    • 研修の内容は,幅広い診療領域の疾患・症候に対応するためもの,地域連携を進めるためのもの,24 時間対応や在宅医療等の機能を果たす上で必要なもの等を考えるべき。一方,個々の医師が学ぶべき内容は,地域特性や専門性等に応じて異なることから,一律のものとするのでなく,様々な内容の研修資材等を整備した上で,個々の医師の判断で,選択して学べるようにすべき。
    • かかりつけ医機能を有する医療機関が OJT を通じて,かかりつけ医機能を実践する担い手を育成する役割を果たしてくれるのではないか。かかりつけ医機能を有する医療機関が担い手を育成していることも評価する仕組みがあってよい。
    • 大学の医学教育において,かかりつけ医機能を担う医師を育成するためのプログラムを組み込むことも考える必要がある。
  • かかりつけ医機能の確保に向けた医師の教育や研修を充実して,患者の生活背景等も踏まえて幅広い診療領域の全人的な診療を行う医師の増加を促していくことが重要である。医師のリカレント教育・研修を体系化して,行政による支援を行いつつ,地域の医療機関での実地研修も含めた研修体制を構築するなど,医療界が中心となり地域で必要となるかかりつけ医機能の確保に向けた医師の教育や研修の充実を図る。
     その際,各学会においても,専門的な医療を担う若手医師等も将来的にキャリアパスの中で地域でかかりつけ医機能を担うことも想定しつつ教育活動を行うことが期待される。

  (研修の内容等の明確化)

  • 各団体で実施する「かかりつけ医機能に関する研修」について,知識(座学)と経験(実地)の両面から望ましい内容等を整理し,かかりつけ医機能報告の報告対象として該当する研修を示すこととする。
  • かかりつけ医機能報告の報告対象として該当する研修の骨子について,以下のとおりとして,詳細は厚生労働科学研究班で整理することとする。

  (学びやすい環境の整備)

  • どの地域でも,1人医師の診療所で多忙でも,医師がかかりつけ医機能に関する研修を選択して学びやすくなるよう,国において必要な支援を検討し,かかりつけ医機能に関する研修の全国共通の基盤として医師が選択して学べる「E-learning システム」の整備を進める。

  (実地研修の場の整備)

  • 地域でかかりつけ医機能を担う医師を増やしていくため,在宅医療や幅広い領域の診療等の経験を得るための実地研修の場の整備が重要であり,かかりつけ医機能報告を通じて,実地研修の場を提供する医療機関を確認する。
  • 実地研修の場を提供する医療機関等における実地研修に要する設備整備等について,地域医療介護総合確保基金を活用して支援が可能であることを明確化する。

  (実地研修受講の意向のある医師と実地研修の場を提供する医療機関等のマッチング)

  • 地域において,かかりつけ医機能報告等を通じて,実地研修受講の意向のある医師と実地研修の場を提供する医療機関等を把握し,実地研修のマッチングを行う。
  • こうした実地研修の場のコーディネート・マッチングする役割は,都道府県と大学が連携し,大学の地域医療・総合診療講座等が担うことも考えられる。

(2) 地域におけるかかりつけ医機能の実装に向けた取組
  (地域におけるかかりつけ医機能の実装に向けた連携体制の構築)

  • 24 時間の在宅医療や夜間・休日対応等を行うため,患者と医師が1対1の関係性で診療にあたるのではなく,1人の患者に対し,複数の医師が診療にあたる仕組み(グループ診療)を構築する有用性が指摘されている。複数の医師のいる診療所の医師同士が連携する場合や,別の診療所・病院にいる複数の医師同士が連携する場合の連携体制の構築について推進する。

  (都道府県・市町村職員への研修等)

  • かかりつけ医機能報告や「地域における協議の場」での協議等が実効的に行われ,地域におけるかかりつけ医機能の実装に向けた取組が進められるよう,今後,厚生労働省で策定する「かかりつけ医機能の確保に関するガイドライン(仮称)」において,地域の好事例等を踏まえ,かかりつけ医機能に関するテーマごとの協議の進め方の具体的な例,考えられる具体的な対応方策や具体的取組の例等を示すとともに,多くの実務を担うこととなる都道府県及び市町村職員やコーディネーター等に対する研修・説明会の実施や説明動画の作成等を進めることとする。

(3) 医療DX による情報共有基盤の整備等
 (略)

5.障害のある方に対するかかりつけ医機能
 
(略)

6.今後の対応
 (かかりつけ医機能が発揮される制度の円滑な施行)

  • 以上のように,本分科会においては,かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けて必要な事項を検討してきた。今後,厚生労働省において,令和7年4月の施行に向けて,本とりまとめを踏まえ,関係省令・告示等の改正,かかりつけ医機能報告に係るシステム改修等を行うとともに,かかりつけ医機能の確保に向けた医師の研修の詳細についての厚生労働科学研究班での整理,「かかりつけ医機能の確保に関するガイドライン(仮称)」の作成,都道府県・市町村等に対する研修・説明会の開催など,関係部局で必要な連携を行いつつ制度の施行に必要な以下のような取組を進めることを求める。
    • かかりつけ医機能の確保に向けた医師の研修の詳細についての整理
       厚生労働科学研究班において,かかりつけ医機能の確保に向けた医師の研修の詳細について整理を行う。
    • 「かかりつけ医機能の確保に関するガイドライン(仮称)」の作成
       かかりつけ医機能報告や「地域における協議の場」での協議等が実効的に行われ,地域で必要なかかりつけ医機能が確保されるよう,地域の好事例等を踏まえ,かかりつけ医機能に関するテーマごとの協議の進め方の具体的な例,考えられる具体的な対応方策や具体的取組の例等を示した「かかりつけ医機能の確保に関するガイドライン(仮称)」を作成する。その際,重層的に設定する「協議の場」ごとの議題設定,参加者それぞれの役割等を分かりやすくするよう留意する。
    • 地域の協議に資するデータブックの作成
       地域の協議に資するよう,圏域ごとの人口構成,医療機関数等の基礎データ,地域の医療機関に関するデータ等のデータブックを作成する。
    • 地域の好事例集の作成自治体アンケート等を踏まえ,地域の好事例集を作成する。その際,かかりつけ医機能報告の各項目とともに,かかりつけ医機能の実装に向けた連携体制の構築,医療DX による情報共有基盤の整備等の取組を盛り込むよう工夫する。
    • 都道府県・市町村等に対する研修・説明会の実施
       多くの実務を担うこととなる都道府県及び市町村職員やコーディネーター等に対する研修・説明会,医療機関等に対する説明会を行い,かかりつけ医機能が発揮される制度の理解促進を図る。
    • 制度の普及・推進のための動画,ポスター等の作成
       かかりつけ医機能報告制度や患者等への説明等について理解を深めるための動画や,国民・患者や医療機関それぞれを対象としたポスター等を作成する。また,国民・患者を対象とした「上手な医療のかかり方」の医療教育・患者教育等に取り組む。等
  • また,かかりつけ医機能の確保に関して,医療法の医療提供体制の確保に関する基本方針,医療計画に定める事項については,第8次医療計画の中間見直しに併せて検討(令和7年度:国で検討,令和8年度:都道府県で検討,令和9~11年度:中間見直し後の医療計画)することとする。
  • 改正医療法附則の検討規定を踏まえ,今後の施行状況等を勘案しつつ,かかりつけ医機能の実装に向けて必要な措置について引き続き検討する。

2024年9月1日号TOP