2024年10月15日号
京都府立医科大学附属病院 副院長
髙山 浩一
皆様はじめまして。京都府立医科大学呼吸器内科の髙山と申します。昨年度より副病院長を拝命し,患者サポートセンター(旧地域医療連携推進部)の責任者も兼務しております。平素より当院にたくさん患者様をご紹介いただきありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
さて,この度寄稿の依頼を受けて何を書こうかと思案しておりましたが,医療に関する記事は堅苦しくなりそうなので,身近なこととして前任地の福岡から連れてきたペットのことをお話しして責務を果たしたいと思います。九州大学より本学に赴任して今年で10年目になりますが,その間にはいろんなことがありました。その一つが福岡から連れてきたペットの犬が2匹とも当地で亡くなったことです。ミニチュアシュナウザーとダックスフントの2匹を飼っておりましたが,シュナウザーは19歳7か月,ダックスフントは16歳8ヶ月で亡くなりました。2匹とも長生きしてくれたと思います。シュナウザーは病気がちでしばしば動物病院で診てもらっておりましたが,最期は眠るように息を引き取りましたので大往生でした。食に対する執着はダックスフントの方が強かったので,もっと長生きするかと思っておりましたが,残念ながら腫瘍ができて逝ってしまいました。病気せずにずっと元気だったのですが,忘れられない救急受診の思い出がありますので紙面をお借りしてご紹介したいと思います。
まだ福岡にいた時分になりますが,ダックスが子どもと大騒ぎして遊んだ後,おとなしくじっとしていたことがありました。いつものように寝そべっていたので,私も子どもたちも特に気にしておりませんでしたが,遠方に外出していた家内が帰ってくるなり,ダックスの様子がおかしいと。私の聴診では呼吸音に異常はないように思えたのですが,歯肉の色が悪くチアノーゼの疑いがあると言うので,夜も遅い時間でしたが救急動物病院に連れていくことになりました。それから,血液検査やレントゲン検査や腹部のエコー検査などいろいろ診ていただき,結論としては腹腔内に出血している可能性があるとのことでした。エコー画像をみながら腹部を穿刺すると確かに血性分泌物というか血液が引けてきました。間違えて肝臓を穿刺したのではなど不埒なことを考えていると,血液検査の結果が出てトランスアミナーゼが振り切れていますねと。なるほど腹腔内出血➡ショック➡肝臓うっ血によるAST/ALTの上昇かと勝手に解釈しつつ,遊んでいる時のおなかの打撲が原因だろうなと考えているうちに夜中の0時過ぎから点滴が始まりました。ごく簡単に一度の穿刺でルートを確保する手技に見とれながら,その腕前を当院の外来化学療法室になど妄想していると,担当医の先生から「点滴は3時間ほどかかります。犬が動いてルートが抜けないように点滴している間は抱っこしてくださいね」と。それから朝方4時近くまで犬を抱っこし続けることになりました。血圧が上がってきたのか,点滴が終わる頃には犬もようやく動き出してほっとしましたが,私は不眠と肩のこわばりでその日は仕事にならなかったのを覚えています。犬はそのまま入院となり,一週間ほどで肝機能も正常に戻って無事に退院できました。臨床医としての私の面子は丸つぶれでしたが,人も犬も近くでいつも見ている人が体調の変化を一番よくわかるのだとあらためて感じた次第です。
2匹とも当地のペット霊園に眠っており,ときどきおまいりに行って手を合わせています。犬が私と京都のつながりをパーマネントなものにしてくれたことに感謝しながら,今は新たに我が家にやってきたシュナウザーとの散歩を楽しんでいます。
Information
病 院 名 京都府立医科大学附属病院
住 所 京都市上京区河原町通広小路上る梶井町 465
電話番号 075-251-5111
ホームページ https://www.h.kpu-m.ac.jp/