勤務医通信

勤務医通信当院で発生した小火(ボヤ)の教訓

JCHO 京都鞍馬口医療センター
山崎 正貴

 京都府医師会会員の皆様,日頃大変お世話になっております。JCHO京都鞍馬口医療センターの山崎と申します。今回『勤務医通信』の執筆依頼がありましたので,9月22日に当院で発生した小火(ボヤ)に関して教訓となったことを書かせていただきます。
 9月22日(秋分の日で連休中)の昼前に当院地下1階のコンビニ付近から小火が発生しました。火災報知器が鳴り消防へは自動的に通報が入りました。偶々院長が在院しており院長自ら対応の陣頭指揮を執りました。私への第一報は12時37分に院長からMCS(Medical Care STATION)の管理者会議メールで届きました。私は家の掃除をしており直ぐにメールには気付けず返信したのが13時23分でした。14時前に病院に到着すると複数の消防車が病院を取り囲み,消防隊員の方々が動き回られ管理職含め職員も病院入口付近に集まっていました。消防車は20台程出動していただきました。院内に入ると火災臭がしました。院外へ避難していた約50名の患者さんはすでに病室に戻った後で幸いにも火災による怪我人は出なかったのですが,煙が多量に発生し最上階(8階)でも火災臭を感じました。火元付近の給水管が破損し院内は断水停電となりました。サーバー室も停電し,エアコンが効かなくなり室内温度が上昇したため電子カルテサーバーが自動的にシャットダウンし電子カルテが使用不能となりました。
 上記が小火発生から数時間の経過ですが,この数時間の出来事だけでも色々な教訓を得ました。具体的には

  • 院長が在院していたため院長自ら陣頭指揮を執れたが,夜間休日の災害発生時は日当直医が責任者として陣頭指揮を執る想定で日当直医が若手の場合は荷が重いかもしれない。
  • 管理職への緊急連絡は当院で運用間もないMCS(Medical Care STATION)メールが使われたが,連休中で私は家の掃除をしていたこともあり50分間メールに気付かず管理職にもかかわらず初動が遅れた(心の油断!)。携帯電話は休日でも肌身離さず持っておくべきか⁉ 災害時の連絡はメールでなく直接電話の方が良いのか⁉ 直接電話は手間が掛かり困難か⁉⁉
  • 煙が素早く拡散し,院内に火災臭が充満した。火よりも煙による影響が大きかった!(この原稿を書いている10月13日時点でも地下1階には火災臭が残っており同階のリネン室やケモ室は使用不能です。)
  • 電子カルテサーバーがシャットダウンして電子カルテが全く使えなくなったため,電子カルテにのみ保管している患者情報(住所,氏名,年齢,治療内容等)は勿論のこと医師緊急連絡網も閲覧不能になった。各科部長への連絡は当直日誌に貼付してあった医師電話番号一覧をみて電話した。SEが徹夜で作業し翌朝に電子カルテを復旧できたが,情報管理はデジタル一辺倒ではなくアナログ(紙)も併用した方が良いのではないか⁉ デジタル化一辺倒への警笛例として自動車業界では,EuroNCAPが新型車に採用例の多いハザードボタンやウィンカーのタッチパネル採用を止めて物理ボタンに戻すべきと提言している(タッチパネルの方が操作に時間が掛かり危険)。

等々です。
 今年は元旦から能登半島地震が発生し又近年ゲリラ豪雨や線状降水帯も頻繁に発生するなど自然災害のリスクが増加している印象です。この勤務医通信が少しでも皆様の施設の災害時BCPの参考になればと思い(自己反省も含め)情報共有させていただきました。今後ともよろしくお願いいたします。

Information
病院名  独立行政法人地域医療機能推進機構
     京都鞍馬口医療センター
住  所 京都市北区小山下総町27
電話番号 075-441-6101(代)
ホームページ https://kyoto.jcho.go.jp/

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