地域医療部通信 – 新型コロナウイルス感染症関連情報 第12報【重要】

インフルエンザ流行期の有熱者への対応

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の中で季節性インフルエンザの流行が始まった場合,発熱を主訴とする患者に対しての対応に苦慮するところである。地域医療を担うかかりつけ医が,有熱者を排除することは避けねばならないが,その患者が万一COVID-19であれば院内での感染拡大・クラスター発生の懸念が払拭しきれない。診療所の感染対策については「新型コロナウイルス感染症外来診療ガイド 第2版」(日本医師会,2020年5月29日)に詳しいので参考にされたい。毎年のインフルエンザ流行期に各医療機関でとっておられる従来どおりの感染症対策が基本となるが,医療従事者の標準予防策(マスク着用,手指消毒)および接触感染対策(清拭消毒等)および有熱者はマスク装着して他の患者からできるだけ離れることが必須となる。
 例年,多数のインフルエンザ様疾患の患者が医療機関を受診するが,その中に一定の割合でCOVID-19が含まれてくると考えられるが,インフルエンザ患者とCOVID-19患者は臨床症状のみでは鑑別は困難である。COVID-19では,感染者のかなりの者が無症状であっても気道内ウイルス量が多いため,症状から感染者を診断して隔離することは極めて難しい。COVID-19の有症状者では発症3日前の潜伏期間中から感染力があり発症1日前に気道内ウイルス量が最大となるため,無症状者と同様に感染源となる。
 インフルエンザ様疾患患者がCOVID-19患者であることを懸念するが故に,検体採取時の飛沫感染防止の観点から,インフルエンザ迅速検査を実施すべきかどうかの議論がなされ,日医ではできる限り実施しないことを求め,同時に検査を行わずに臨床的に診断して直ちに抗インフルエンザ薬治療を開始することが勧められた。府医としては,これと同じスタンスで,インフルエンザ迅速検査の実施を控えることを会員にお願いしてきた。

 COVID-19のPCR検査は,(1)帰国者・接触者相談センターから帰国者・接触者外来へ繋げて実施,(2)京都府・医師会京都検査センター(府医PCR相談検査センター)に申し込んで府医PCR検査センターで実施,(3)自院で患者から唾液検体を採取して民間検査所へ送付(集合契約で締結した医療機関のみ),の方法がある。また,帰国者・接触者外来と契約締結した病院等の医療機関ではCOVID-19の抗原検査が行える。

1.COVID-19の疑いがある場合,上記(1)~(3)のPCR検査あるいは抗原検査を行う

2.インフルエンザの疑いがある場合
  (ア)インフルエンザ迅速検査の実施には,サージカルマスク,手袋装着,手指消毒を行う。後日,その有熱者がCOVID-19陽性者と判明した時に,濃厚接触者とならないためには,これらの標準予防策に加えて,ゴーグル/アイガード/フェイスシールド,ガウン着用を行う必要がある。
    ①インフルエンザ迅速検査は,発症から48時間以内の患者を対象とする
    ②陽性の場合は,インフルエンザの治療を行う
    ③陰性の場合,COVID-19の疑いがあればPCR検査へ
  (イ)インフルエンザ迅速検査を行わないで,臨床的にインフルエンザと診断し,抗インフルエンザ薬による治療を開始する
    ①治療効果があれば,終了
    ②治療効果がなく,COVID-19が疑われる場合はPCR検査へ

2020年8月15日号TOP