2024年12月15日号
中京西部医師会と府医執行部との懇談会が10月8日(火),府医会館にて開催され,中京西部医師会から12名,府医から10名が出席。「医薬品供給不足の現状と見通し」,「新型コロナに対するレプリコンワクチンの安全性」,「災害時の緊急連絡手段」,「在宅医療におけるマイナ保険証の取扱い」をテーマに議論が行われた。
※この記事の内容は10月8日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。
8月30日に武見厚労大臣が「近未来健康活躍社会戦略」として,今後,社会経済環境の大きな変革を踏まえ,ヘルスケア分野において産業政策に力点を置きつつ,国際展開と同時に海外市場の活力を日本経済に取り込むという観点から,中期的に厚労省として推進すべき政策方針を示した中に,「後発医薬品の安定供給体制の構築」という項目があり,その内容として「後発医薬品の安定供給等を実現する産業構造改革」が掲げられている。
後発医薬品業界の理想的な姿として,後発品メーカーは総合商社型か,より先鋭な領域特化型のいずれかに進化すべきと提言し,特に「成分ごとの適正な供給社数は,理想的には5社程度」と具体的な数字が示されている。そのための施策として「5年程度の集中改革期間の中で,構造改革を強力に進めていく」という目標が掲げられている。
以上は後発医薬品についての厚労省の大きなビジョンであるが,医療用医薬品全般の不足については現在,「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」において対策を協議しており,9月に国が考える取組みの全体像が示されている。大きく分けて,「企業内の体制整備」,「情報収集の徹底」,「安定確保医薬品の指定と確保要請」の三本柱で,これらについて国から製薬会社に対する協力要請を法令上に位置付け,安定供給に向けたマネジメントシステムの構築を目指す方針となっている。
今後は,この関係者会議でより具体的な議論を重ねた上で,制度改正に関する事項は関係審議会で協議するとされている。国の取組みとしてできることをやっている印象であるが時間がかかるのは間違いないと考えている。
その後の意見交換では,風邪症状等に処方される医薬品は薬局でも購入できるが,外科的治療に必要な麻酔等の医薬品不足は現場に大きな影響を与えるとの訴えがあった。
府医は,今後も日医を通じて安定供給に向けた取組みを要望していく考えを示すとともに,今後は高齢社会が進展し,医療財源の圧迫を理由に少しずつ医薬品が保険給付範囲外になることに懸念を示した。
レプリコンワクチンはmRNAワクチンの一つであるが,接種されたmRNAが細胞内で一時的に複製されるように設計されていることから,既存のmRNAワクチンに比べてウイルスのタンパク質が作られる時間が長いという特徴がある。このため,抗体の持続期間が長いことが確認されている。
レプリコンワクチンは,自己増幅性のあるワクチンであるため,体内で無限にウイルスのタンパク質が作られたり,接種を受けた方から他の方にワクチンの成分が伝播することが懸念されており,接種しても問題はないかとの疑問が示されているが,体内で無限にタンパク質が作られることはなく,他の方にワクチンの成分が伝播するといった科学的知見は現時点で存在しない。薬事承認にあたっては動物試験や臨床試験の結果に基づいて安全性が審査され,既存のmRNAワクチンと比較し,安全性に大きな差異がないことが確認されている。
ワクチンについての相談は,自治体の窓口やコールセンター,身近な医療機関にご相談いただくか,厚生労働省に一般的な質問に回答できるようコールセンターも設置されている。
新型コロナワクチン接種に関する相談体制は国・都道府県・市区町村・ワクチンメーカーが各々の役割に応じて国民や医療機関からの相談に対応している。
巨大地震等の大規模災害時の連絡手段として,現時点で府医が指定しているものはなく,災害時対応の原則としては,使える手段を使って連絡を取ることを想定すべきと考えており,LINE等のSNS,メール,固定電話,衛星携帯電話,防災無線等,様々な連絡手段があるほか,激甚災害下では,自分の足や自転車等が連絡手段になると考えている。なお,連絡手段は複数持つことが重要であるが,普段使い慣れていない手段は,実際の使い方を理解していない,バッテリー切れで使用できなかったりと,肝心な時に使えないことがあるので,定期的な使用訓練を実施しておくことが重要である。併せて,何のために連絡をとるのか,その目的のために必要なネットワーク(連絡先)のあり方をあらかじめ検討しておくことが最も重要と考えている。
また,災害発生初期には,保健所等の行政機能も機能しないことが想定されるので,「自助」が必要な災害超急性期においては,まず自身の安全,家族,スタッフの安全を確保いただき,その上で余裕がある場合は,近隣の病院に参集する,といった約束事を地区医内で共有しておくことも連絡手段の一つと考える。
参考に山科医師会等,一部の地域において,災害時の安否確認システム(KMIS:京都メディカルインフォメーションシステム)が運用されており,他の地区医からも高い関心が寄せられていると伺っている。それも連絡手段の一つとして,検討いただきたい。
一方で通信については,手段だけを考えるのではなく,「ヒモバシルトキ」という概念に基づいて検討を行うことも必要である。災害時には,建物被害や浸水,ライフラインの障害等により,「ヒト」やインフラを含む「モノ」が不足するので,備蓄や外部支援による資源投入が行われることになるが,社会資源は,「ヒト」「モノ」だけでなく,それらを繋いで動かし機能させるための「場所」,「システム」,「ルール」,そして,緊急性や継続性などの「時」の要素から成り立っている。その頭文字をとって「ヒモバシルトキ」と呼ばれるが,災害時にヒトやモノだけを投入されても,実際にはモノを置く場所がない,平時の体制(システム)が組めない,いつものルールでは物事が進まない等の問題が発生し,ヒトやモノを有効活用できなくなることから,災害時の課題解決に向けた情報収集にあたっては,このような視点も必要になると考える。
最後に府医の災害対策小委員会において,府医としての「防災業務計画」を年度内に策定する予定であり,完成次第,地区医の皆様にもお示ししたいと考えている。
今後の資格確認の方法について,マイナカードを持たない患者に対して「資格確認書」を発行することは,昨年6月成立の改正マイナ法により定められており,条文上,期限は定められていないことから,マイナカードの取得が任意である以上,資格確認書の発行を継続せざるを得ないと考える。政府は当初,資格確認書について本人申請がなければ発行しない,という考えを示していたが,日医の働きかけもあり,保険資格を有するものに保険診療を保証するため,当面の間,申請が無くても職権交付できることとなった。武見厚労相もこの「当面の間」について,その期限は決めていないと発言しており,このまま恒久的な取り扱いになる可能性がある。
在宅医療におけるオンライン資格確認については,2024年4月1日から在宅で利用できる居宅同意取得型が運用されており,この方法の場合,訪問診療する医療機関がスマホ,タブレットなどの端末を持参し,患者に暗証番号を入力させてマイナ保険証を読み取り,2回目以降は「再照会」としてマイナ保険証の読み取りなどは不要となっている。ただし,マイナ保険証の作成自体が難しい患者については,資格確認書による確認が必要になると考える。
また,在宅現場でオンライン資格確認する端末については,個人の端末ではなく,府医が推奨する医療・介護連携専用スマートフォン「京あんしんフォン」を専用の端末としてご活用いただきたいと考えている。
基金・国保審査委員会連絡会合意事項について解説するとともに,個別指導における主な指摘事項について資料提示した。また,療養費同意書の交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書の発行に理解と協力を求めた。