京都府医師婦人会 大槻文悟 氏 講演会「筋肉と骨が紡ぐ素晴らしい未来」

京都府医師婦人会(西陣)  中 久美子

 令和6年10月31日(木)ホテルオークラ京都翠雲の間にて,京都大学大学院整形外科准教授の大槻文悟先生をお招きして講演会を開催いたしました。
 参加者は111名となり,通常の講演会よりも大勢で熱心にメモを取られる方も少なくありませんでした。
 日本人女性に多発する骨粗鬆症の専門的な事柄や,ランニング運動での健康面の効用などの幅広い内容を,多数のスライドを駆使しご自身の輝かしいランニング経歴も披露されて,明快に解説してくださいました。
 椅子から片脚で立ち上がるロコモ度チェックは興味深く,骨粗鬆症で脊椎の圧迫骨折をきたすと5年以内に50%もの方が死亡するというグラフで聴講者全員が衝撃を受けました。予防には運動が重要でランジ(写真)を実演して推奨されました。
 速く走るには身体が硬いほうがよく,運動前の静的なストレッチはパフォーマンスを下げてしまうため,従来の動的ストレッチを勧められたことは意外で,会場がどよめきました。マラソンなどの長距離を速く走るためには,ランニングエコノミーという因子の重要性を挙げられました。ずっと走っていれば,それが年齢とともに良くなることも意外な事象(未来が良くなる)で興味をひきました。

 乳酸性作業閾値(いきち)(注)などのエネルギーの話は難解でしたが,速く走るために,時には強度の高いインターバルトレーニングを実施すべきことが漠然とイメージできました。
 筋細胞内のエンジンにたとえられるミトコンドリアの豆知識も,面白く感じられました。有害な活性酸素を除去する植物の葉緑素の起源を同じくしていることや,その量と質の大半が母親から遺伝するというのも初めて知りました。
 栄養面では,(鉄欠乏性)貧血に対する鉄剤以外のサプリメントは不要であることと,オメガ3脂肪酸を含んだ脂質が細胞膜を柔軟にするのでいいというお話が印象に残りました。

 最後に,山中伸弥先生とのツーショット写真を提示され,ご著書の「ランニングの処方箋」の宣伝をされた時は,爆笑とともに歓声が上がり楽しい講演会のしめくくりとなりました。
 より健康的な未来のため,筋骨作りに努力していこうと決心した次第です。貴重なご講演を賜った大槻文悟先生に厚く感謝申し上げます。

  • ゆっくりしたペースから,徐々にスピードを上げていったとき,乳酸が血液中に急増し始めるポイントのことで,英語表記の頭文字をとって「LT」と呼ばれることが多い。

2024年12月15日号TOP