2025年1月15日号
上京東部医師会と府医執行部との懇談会が10月22日(火),府医会館で開催され,上京東部医師会から6名,府医から6名が出席。「長期収載品の選定療養費」,「日医の会員情報システム(MAMIS)」をテーマに議論が行われた。
※この記事の内容は10月22日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。
長期収載品の選定療養費制度について,医療費に占める薬剤費が約10兆円で諸外国と比較しても後発品のシェアが低く,逆に長期収載品のシェアは高い傾向にあるというデータをもとに,「骨太の方針2023」にて医療保険財政の全体のバランスの中で長期収載品等の自己負担のあり方の見直しが決定された経過がある。日医としては,薬価収載された医薬品はすべて保険給付すべきと考えているが,「骨太の方針」に記載されると政府からの圧力が強く働くことになり,押し戻すことは困難であるため,参照価格制度導入のきっかけになる危険性はあるものの,医療上の必要があれば保険給付が可能という形にし,医師の処方権と絡めて保険給付を確保しているとのことである。府医としても,参照価格制度導入のきっかけになる可能性があるため,安易な選定療養化の拡大には反対している。
医薬品の供給については,10月15日時点で,特に後発品の限定出荷や出荷停止が続いており,安定供給ができていない状況である。厚労省が9月30日に公表した後発医薬品に関するロードマップは,すでに「2029年度末までにすべての都道府県で80%以上」という数値目標がある中で,後発医薬品産業が未だに品質や安定供給の観点から脆弱性を抱えている状況を踏まえ,今後の取組みを整理したものとなっており,長期収載品の一部選定療養費化もこの中に含まれている。
このロードマップにおいても,後発医薬品の使用促進は国にとって,医療費の効率化,医療資源の有効活用を図り,国民医療を守るために必須の政策であると位置付け,供給不安への対応も使用促進と同時並行して行うことが示されており,安定供給できない状況でも選定療養化を含めた促進策は止めない,という姿勢が示されている。
府医としても,この問題は,法令順守を怠った企業の責任もあるが,後発医薬品の使用促進政策を国が強引に推し進めたことに起因すると考えている。政策推進するのであれば,後発医薬品の安定供給,その品質に対する国民の信頼が前提となることは当然であり,それができていない状況下で数値目標を定め,手段を選ばず実現を目指すという進め方に問題があると以前から指摘してきたところである。順序は逆となったが,政策の矛盾や後発医薬品業界の問題点が顕在化したことで国も本腰を入れて対応を始めているため,引続き動向を注視し,国の対策が効果をもたらすことを期待している。
〜意見交換〜
長期収載品の選定療養費について,単純に後発品の使用を推進したいというだけなのか,あるいはこれが今後の伏線であるのか,選定療養費という手段を使って「保険外し」が続いていくことを不安視するとともに,この選定療養化がいろいろな方向へ波及していくことに懸念が示された。
府医からは,今後,医療費削減政策として,国はスイッチOTC化を進め,低額なものは保険適用から外していく一方で,高額な医療については民間保険を使って2階建ての仕組みとすることを考えても不思議ではないとして,保険制度が崩れていくきっかけとなるこれらの動きに対して,今こそ医師会が組織として対応し,あるべき医療の姿を提示・主張していくことが重要であると訴えた。
日医会員の先生方には,9月末にMAMIS運営事務局よりログインの案内ハガキが送付されているが,10月30日からログインが可能となる。ログインの案内ハガキについては,システム稼働前のずいぶん早い段階で送付されたため,紛失の場合には,MAMISコールセンターに連絡していただくことになるが,一定期間,初回のログインが確認できない会員には,申請によらずとも自動的に再送していただくよう府医から日医に要望したところである。
MAMISの概要としては,すべての医師会に所属する医師を対象として,三層構造の流れに則って,従来の紙の流れと同様の手続きフローをWEB上で行うシステムで,これまで地区医,都道府県医,日医それぞれに届出書を提出していたものを,会員が自らMAMISに入力する仕組みとしている。
日医では,継続的にMAMISの機能追加を行うとしており,2025年度には「研修管理機能」として,認定産業医・認定スポーツ医関連,また,生涯教育,かかりつけ医機能関連などについて機能拡張し,医師の学習支援と取得単位の可視化,認定制度の申請や証明書発行などを簡便化するとしている。
日医では,2024年末までは従来の紙ベースによる入会等届出を受け付けるとのことであるが,2025年1月からMAMISに完全移行する予定としている。各地区においては,先生ご自身によるMAMISへの入力が難しい場合,サポートをお願いしたいところであるが,地区医においても入力が難しい場合には,府医にご相談いただければサポートする考えであるため,引続きご協力をお願いしたい。
※「下京西部医師会との懇談会」にも関連の内容がありますので,ご参照ください。
〜意見交換〜
MAMISの導入に関して,地区医における会員管理の課題等について情報共有がなされ,従来の会員管理方法との併存や,MAMISに対応する事務局のマンパワーの問題等が示された。
今後の医師会の組織強化に向けて,地区からは,若手医師の入会に際して,「会員のメリットがわかりにくい」という意見があることが紹介され,「コスパ」「タイパ」を重視する若い世代に対して,しっかりと魅力あるコンテンツを示していくことが重要であるとの意見が上がった。
◇ベースアップ評価料について
外来・在宅ベースアップ評価料(1)について,当初より手続きが煩雑との指摘があったことを受けて,9月11日付で様式の簡素化が行われたこと紹介し,各地区における会員への周知に協力を呼びかけた。
◇日医未入会者に対する日医への入会促進について
※ 下京西部医師会との懇談会参照
◇京あんしんフォンについて
※ 下京西部医師会との懇談会参照