2025年3月1日号
会長 上田 誠
北丹医師会は、京丹後市の医師会です。平成の大合併で京丹後市が誕生する以前から、丹後6町をカバーする北丹医師会があり、名称変更する事無く現在に至っています。平成16年の合併当初6万6千人であった人口は、5万1千人へと減少しており4万人代になるのは確定的です。100歳以上の長寿者が多いことは知られていますが、平均寿命は府平均を下回っています。
6町時代は「丹後ちりめんバブル」の時期でもあり、各町は医療を開業医では無く、各町それぞれに開設した病院に担わせる政策を選択しました。市の規模に対して過剰と思われる4病院(5つ目の病院が計画されたこともあります)が存在し、一方開業医が少ない歴史的背景です。3次救急を担う中核病院は存在せず、隣接する京都府立医科大学附属北部医療センターが指定されています。面積に対して医療資源が乏しい一方、ちりめんバブルが弾けて以降は、経済的に恵まれず、人口は減少し各医療機関が奪い合うパイは殆どありません。総ての医療機関が協力し支え合わねば医療提供体制は維持できないのです。医師会が独自でできることには限りがあり、国の方針にダイレクトに影響されます。
日本医療の未来予想図、でしょうか。
こういった状況から、京丹後市は与謝区域と合わせて「医療提供体制上の課題の解決に向けて、地域の実情に応じた取組をさらに推進するため」、「病床機能報告上の病床数と必要量の差異等を踏まえ、医療提供体制上の課題や重点的な支援の必要性があると考えられる構想区域を推進区域及びモデル推進区域に設定」され、現在まで2回「丹後地域医療構想会議」がもたれました。残り1回の会議で議論がどの様に纏まるのか分かりませんが、「地域医療構想の推進の取組は、病床の削減や統廃合ありきではなく、各都道府県が、地域の実情を踏まえ、主体的に取組を進めるものである」とされているにも関わらず、提供された基礎資料で府側が最も強調したのが、高度急性期病床の大幅な過剰状態でした。これの削減は、ただでさえ困難を極める当地域の病院経営に、さらに大きな打撃を与えるのは明白です。悪い予感しかしません。
医療費抑制施策の結果、薬もワクチンも検査キットも入手困難、マンパワー不足は解決の目途が立たちません。今回のインフルエンザの大流行では、罹患すれば入院するしか無い高齢者単独世帯が多いことから病床が逼迫、救急受け入れに深刻な支障が生じました。さらに介護報酬引下げによる介護事業者の撤退が全国的に広がっています。
医療、介護、年金等の社会保障は、国防や教育と並ぶ基礎的インフラであり、本来経済効率を優先する分野では無いはずです。
40年前から続く「医療費亡国論」や、経済学的常識を無視した「財政健全化」、「財政ファイナンス」等の詐欺的プロパガンダが正されるのと、医療介護現場の崩壊は、どちらが先に訪れるのでしょうか。
北丹医師会
〒 629-3113
京丹後市網野町小浜 427-2
TEL:090-6231-9455 FAX:0772-60-8696
e-mail :hokutanishikai@movie.ocn.ne.jp
会 長:上田 誠
会員数:57 人(2025.2.1現在)