「電子処方箋」について議論

 東山医師会と府医執行部との懇談会が12 月13 日(金),ウェスティン都ホテル京都にて開催され,東山医師会から12 名,府医から7名が出席。「電子処方箋」をテーマに活発な議論が行われた。

※この記事の内容は12 月13 日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

電子処方箋について

 電子処方箋を導入することで,「直近の患者情報を踏まえた診察・処方」,「重複投薬等の抑制」が行えるようになるが,全国および京都府の導入率は低く,特に病院では診療所よりも導入が進んでいない。一方,薬局では医療機関よりも導入が進んでいる。
 また,日医が発行しているHPKI カードについては現在IC チップの不足により発行が遅延しているが,「HPKI セカンド」というクラウド上の証明書(セカンド鍵)が提供されている。これにより,スマホなどの生体認証を用いて本人確認が行えるため,HPKI カードやIC カードリーダーがなくても電子処方箋システムを使用できる仕組みが整備されている。
 電子処方箋導入に関して補助金はあるが,補助を受けるためには2025 年3月31 日までに導入を完了する必要があり,診療所の場合,補助率は1/2にとどまる。日医は,医療DX にかかる費用は国が全額負担すべきだと以前から主張しており,今後は補助金の期限延長や補助率の引上げが必要とされる。これらの促進策がない限り,医療機関での電子処方箋導入は進みにくいと考えられる。
 現時点では導入している医療機関・薬局が限られていることや,データ反映にタイムラグがあるため重複投薬チェック時に直近の院内処方の情報が参照できないなどの課題がある。また,電子処方箋を選択した患者にも「処方内容(控え)」を交付することが前提とされており,ペーパーレスのメリットもわかりにくい状況である。導入に要する医療機関の負担が大きく,国民にメリットがあるのかも疑問であることから,今後,課題が解消され,認知度も向上すれば,導入する医療機関等も徐々に増えていくことが予想される。

~意見交換~
 今後,国が電子処方箋の導入率100%を達成するよう求める動きがあった場合,医師会としてのスタンスはどうなのかとの問いに対して,府医からは,大前提として,より良い医療の提供につながる医療DX には賛成であるが,拙速に進めて,医療提供体制に混乱・支障が生じてはいけないとした上で,国民・医療者を誰一人取り残してはならず,患者が分断されるようなことになるのであれば協力はできないというスタンスであり,医療DX 推進のための費用は国が全額負担すべきであるとして,日医を通じて国に訴えていく意向を示した。
 また,マイナ保険証の旧字体がオンライン資格確認システムで読み込めず,医療機関側が本人情報を確認できないというトラブルがあるとの事例が紹介され,マイナ保険証の先行きを不安視する意見が相次いだ。

府医からの連絡事項

・ベースアップ評価料について
 外来・在宅ベースアップ評価料(1)の届出様式が簡素化されたことについて情報提供した上で,届出の手順を具体的に解説し,広く算定することを呼びかけた。

・日医未入会会員への日医入会促進について
 日医では,「医師会の組織強化」を課題に挙げ,さらなる組織率の向上に取組んでいることを紹介した上で,10 月初旬に府医から日医未入会の府医会員あてに日医への入会をご検討いただくよう案内を送付したことを報告。日医未入会者に対する日医への入会促進に地区医,府医,日医が一丸となって取組む必要があるとして,日医への入会促進に協力を依頼した。

・「京あんしんフォン」について
 府医では,「京あんしんネット」のユーザーを対象として,在宅医療・介護連携事業専用のビジネスフォン「京あんしんフォン」を導入したことを報告。「京あんしんフォン」には,MDM(モバイルデバイス管理)サービスを付加し,万一の端末の紛失時には,遠隔から端末のロックが可能であるため,「京あんしんネット」をより安全・安心な環境下で利用できると紹介した。
 端末には「京あんしんネット(MCS)」等のアプリケーションがあらかじめインストールされており,携帯電話としても利用できるため,コミュニケーションの充実によって連携の促進が期待できることに加えて,在宅訪問時のマイナ資格確認用の端末としても利用できるとして,活用を呼びかけた。

2025年3月15日号TOP