医薬品の供給状況に係るアンケートの結果

 医薬品の供給不足は,後発医薬品会社の製造管理や品質管理の部分の不祥事や世界的な原材料不足にともなうサプライチェーンの問題などを契機とし,その後も感染症の流行による需要増が生じるなど,厚労省は継続的に対策を講じるものの改善は難しい状況が続いています。
 これらは京都府に限らず全国的な問題であると認識しておりますが,使用頻度の極めて高い薬剤が不足しているとのご意見もあることから,実情をお伺いするためのアンケートを実施し,この度その結果を取りまとめました。
 この結果は,京都府や日医を通じて厚労省等にお伝えしたいと考えています。

回答期間:2月7日~ 28 日
回 答 数:155 医療機関(13 病院,142 診療所)

解説 1  直近で医薬品の供給不足により治療や検査に支障を来した経験があれば具体的に教えてください。(自由記載)

 設問 2  何か対応策を実施されていれば教えてください。(選択式,複数回答可)

 設問 3  その他,医薬品の供給状況についてご意見がありましたらご記載ください(医薬品メーカーや卸の対応なども含む)。(自由記載)

※紙面の都合上抜粋しておりますが,日医などにはすべてのご意見を提出しております。

<情報不足について>

  • 供給不安定の理由について迅速に,情報提供していただきたい。
  • 情報が後手後手になっている印象が強いので,速やかに正確な情報提供を行って欲しい。判明している最悪のシナリオを速やかに情報提供して頂ければ,事前に対策を取れる場合もあると思う。
  • 現在出荷調整中の薬剤がいつ頃流通予定なのかを広報してほしい。
  • 行政側から患者さんへの説明不足。「なぜ不足しているのか?」と質問されても医療従事者からは答えられない。
  • 代替薬について,情報を提供して欲しい。

<後発品の推進について>

  • 状況を見て後発品の推奨をした方がいいのでは。出荷調整品が多く,薬剤が無いのに後発品率を進めることはできないと感じる。
  • あまりにも急いで極端にジェネリック医薬品の推進をやり過ぎた結果ではないかと思う。
  • 医薬品の供給不足根源の原因は厚労省の後発品使用の半強制政策。

<個別の医薬品について>

  • 治療上,必須,或いは緊急用薬剤の不安定供給をきたす状況は許されない。
  • 代替がない薬や小児抗菌薬のような重要な薬などに対し,厚労省はもっと危機感を持って対応してほしい。
  • 特に局所麻酔薬等代替が難しい医薬品の安定供給を望みます。
  • インフルエンザ治療薬,鎮咳剤,喘息吸入薬が処方できず困っています。
  • 近年のワクチン供給不足による診療への影響は目に余る。こどもの健康を守るため,医薬品メーカーにまかせるだけでなく国策としての対応が必要なのではないかと感じている。
  • 低薬価の薬剤が次々に製造中止になる。
  • 基本的な咳止めや解熱剤,去痰剤などがいつまでたっても不足している。儲からないから企業が作らないらしいが,それならば国がセーフティネットとして,生産,備蓄,安定供給をすべき。そういうことを,医師会としてしっかり国にアピールして下さい。
  • そもそもAccess抗菌薬すら手に入らないなら抗菌薬の適正使用なんて絵空事である。
  • キシロカインはいつ解消されるのか,メーカーからの回答がない。

<発注納品について>

  • 少量しか入れない当院のような場合なかなか入らない。
  • 問題は,出荷制限がかかると突然何ヶ月も全く入らなくなり,その後の見込みも全く不明となる事。出荷停止ではなく制限なのだから,何割かは定期的に入って良いはずなのに,全く入らなくなる。あと,ジェネリック会社がしばしば製造を止め,他社の薬への変更を指示する文章を出すが,実績がないからその会社の薬は入らない。もっと責任を持って製造してほしい。

<メーカーと卸について>

  • メーカーも卸も対応が追い付いておらず,代替薬の提案すらできない状況であるためもう少し現場の状況を理解した対応をお願いしたいです。
  • 必要かつ薬価の安い薬を製造する企業に助成などして,安定供給してほしい。
  • 需要が増える時を予想してできる限り供給体制に余裕を持たせてほしい。
  • 供給を相談しようとしても,メーカーと卸の担当者が責任を押しつけあっている。
  • 卸は実績に応じて配給しているというが,配給されなければ実績ができない。病院等潤沢に配給されているところこそ,出荷数を制限し,弱小の診療所にこそ少量であっても配給すべきである。
  • メーカーは利害を超えて製薬する義務があると思います。国ももっと指導するべき。
  • メーカーや卸は頑張って対応しようとしてくれているが,現在の医療財政では品薄の解消は困難だと思う。自国民に処方する薬が足りていないのに海外からの渡航者への対応を篤くするのはいかがなものか。
  • 一部の卸において,自社の売り上げに都合の良い薬局や医療機関に優遇して薬剤や検査キットを回している状況が特にここ数年続いており(複数の事業所の情報を集積して明らかになっている),不足気味の医薬品を営利目的の卸が左右している事態は改善すべきと考えている。
  • 複数の卸に頼もうとしても,普段から頼んでない薬は新規発注となり,まず手に入らない。
  • 購入実績がない施設には割り当てられない事情は理解できるが,エッセンシャルドラッグしか在庫していない単科の施設では全く策がなくなってしまうため,何らかの対応措置の検討を望みます。

<薬価について>

  • 薬価を下げすぎたことが問題で厚生労働省の責任である。
  • これ以上出荷調整にならないよう,国が適切な薬価を設定する。
  • 古い薬は安くても必要な薬が多く,多少の薬価引き上げはやむを得ないのではないか。その分,コロナ薬など高額な新薬の薬価を再検討してほしい。
  • 医療費抑制が必要ないとは言わないが,薬価を下げすぎて製薬会社の採算が取れない様にしては,医療の社会的基盤の一つを崩壊させかねないと思うが,厚労省含め政府はどの様に考えているのだろう。
  • 安価な薬剤でも需要があるものは安定して供給されるように,システムや薬価を見直してほしい。一方で類似薬が多い古い薬剤については,廃止を含めて検討されてもいいのではないでしょうか。
  • コロナにより解熱剤や鎮咳剤が品薄になるのは需要増大によるものと納得できるが,現状の薬剤不足の原因は何なのか?問題薬剤だけが品薄になるなら理解できるが,後発品メーカーの不手際だけが原因ではなく,薬価引き下げや原材料の価格高騰により利益の出ない薬剤の製造を製薬会社が渋っているように思われる。国の施策は医療費抑制に傾いているが,製薬会社の利益が確保できるような薬価引き上げも必要ではないか?

<一般市販薬について>

  • 薬の生産がなくなるような政策はやめて欲しい。風邪薬をOTC製剤へのスイッチを考えるとしてもクリニックに薬が届かなる事態は避けないと目の前にした患者さん達に申し訳立ちません。
  • 同じお薬がドラッグストアでは販売しているのに,保険薬として入手できないのはおかしいと思う。
  • 先発品を販売停止し,OTCで出回っている薬品がある。
  • 市販薬ならある薬が処方薬ではないというのが理解できない。
  • 市販薬は供給していてTVCMまでしているのに,医療用のPLやムコダインの枯渇は企業の社会的責任としてどうでしょう。

<全般>

  • あまりにも処方できないお薬が多すぎる。
  • 何よりも薬事行政では安定供給を最優先とするべき。
  • 一番困るのは患者さんであるので供給状況の改善をお願い致します。
  • 院外薬局にはあるのに院内処方の医院には1年以上入ってこないものがある。
  • 抱え過ぎないように,でも無くなると診療ができないので,発注に余計なストレスがあるのと同時に,マイナカード確認などのこともあり,事務処理が大変になっている。
  • 今でこれなら,大災害時はどうするんでしょうね。
  • 使用頻度の多い薬は安定供給できるようにして欲しい。それで薬価がある程度上がってしまうのはやむを得ない。医療者側でできる対応としては,必要最小限の処方量,期間に出来るように工夫する。
  • 長期収載品の選定療養費化の件もあるが,先発を後発に変えると効かなかったり,想定外の症状が出たり,検査結果が不安定になったりすることがある。
  • 長期展望に則って,不足を解消するべきである。
  • 薬価基準収載品目の20%超が,供給停止又は限定出荷になっており,調剤薬局の対応はかなり煩雑化している。また,それを契機としたカスタマーハラスメントも発生している。
  • この問題が取りざたされてかなり時間を経過しておりますが,一向に解決されません。当初発端となった某ジェネリックメーカーの不祥事はもはや理由に当たりません。低薬価に起因する利益の出ない薬剤は生産しない,余分に生産しないという製薬企業のコストカットに起因する構造的問題が根本原因であることは自明です。卸は板挟みの状況にあるだけで,全く責任はありません。製薬メーカーが分子標的薬などの高額医療に傾倒し,利益の上がらない薬剤は社会的責任があっても考慮しない問題があるので,日常的に必要な薬剤の生産供給を費用面でカバーする,支援する制度が必要と思われます。そこには財源の問題がありますので,高額医療により限界となってきている保険制度自体を見直す必要があると考えます。
  • 卸が悪いのではないと思う。根本的には薬剤費を低く抑えすぎており,その結果として株式会社である製薬会社は安い薬を作ることを忌避しているせいと考える。対策としては,薬剤費の抜本的な増額,もしくは政府による一定量の買い上げなど制度の基本的な部分からのやり直しが必要と思う。また,政府や一部勢力による行き過ぎたセルフメディケーションの推進も現状を悪化させていると考えている。どこかの政党のように,風邪薬は保険から外せなどと言うのは暴論だと思う。

2025年4月15日号TOP