2025年4月15日号
与謝・北丹医師会と府医執行部との懇談会が2月15日(土),みやづ歴史の館で開催され,与謝医師会から15名,北丹医師会から7名,府医から6名が出席。「先発医薬品の使用理由の記載」,「令和6年度診療報酬改定にともなう医療スタッフの負担増加とマイナンバーカード導入にともなう諸問題」,「自由診療と保険診療」をテーマに議論が行われた。
※この記事の内容は2月15日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。
令和6年10月から長期収載品の保険給付のあり方が見直され,厚労省が定める基準に該当する長期収載品を患者が希望する場合は,後発医薬品の最高価格帯との価格差が4分の3までを保険給付の対象とし,4分の1は選定療養費として患者負担となったが,医療上の必要がある場合や後発医薬品の提供が困難な場合については選定療養費の対象とせず,従来どおりすべて保険給付の対象となる。その際,レセプトには理由の付記が求められるが,医薬品の供給が不安定な現状においては,「後発医薬品の在庫状況等を踏まえ後発医薬品を提供することが困難なため」を選択するケースが多いと推察される。
医薬品の供給が不安定な状況が未だ解消せず,様々な医薬品が院内,院外ともに不足し,医療機関,薬局に負担が生じている中で,この制度を開始したことは大いに疑問である。レセプトへの記載によって事務が煩雑になったことは,ご指摘のとおりであると感じている。
令和6年度診療報酬改定の答申書付帯意見において,「実態を把握し,制度の運用方法等に関して必要な検証を行う」とあるため,今後の中医協での議論を注視し,必要に応じて近医連等の場で意見していくとともに,長期収載品にかかわらず他の点数でも算定した際にレセプト記載が求められるものが多数あるため,同様に手間がかかるとのご意見については,当会の濱島副会長が日医の社会保険診療報酬検討委員会に参画しているため,要望を伝えていきたいと考えている。
長期収載品の処方に係る選定療養が導入された背景には,医療費に占める薬剤費が約10兆円で,諸外国と比較しても後発品のシェアが低く,逆に長期収載品のシェアは高い傾向にあるというデータをもとに,「医療保険財政の中でイノベーションを推進するため,長期収載品等の自己負担のあり方の見直し・検討を進める」と骨太の方針2023に記載されたため,政府からの圧力が強く働くことになったという経過がある。今後,薬剤自己負担の見直しに関する主な項目の1つに,「市販品類似の医薬品の保険給付のあり方の見直し」が挙げられているため,国民皆保険の形骸化に繋がらないよう注視が必要である。
先発品の薬価をジェネリックと同程度に下げるというご提案に関して,長期収載品の薬価改定ルールでは,特許期間終了後,後発品への置き換え期間である10年間のうちに,後発品への置き換えが十分に進んでいないものに対しては段階的・特例的な引下げが行われることになっており,後発品の価格に近付けていくというルールは存在している。先発品と後発品を同価格にすることで,どうしても先発品に有利なマーケットとなり,健全な競争原理が働かなくなるといった懸念や,一時的には薬剤費が下がるかもしれないが,中長期的には後発医薬品が淘汰され,将来的には薬価が高止まりになるとの見方もある。産業政策的には健全な競争が必要であり,先発医薬品メーカーは長期収載医薬品についてもMRを使って情報提供活動をしているものの,後発医薬品メーカーはフリーライドの状況にあることも踏まえて費用構造も議論しなければ,医薬品産業そのものが崩壊しかねないといった意見も見られる。
前提として,先発品と後発品のどちらを処方するかは医師に裁量権があり,患者の症状等から判断されるものであって,国の指示で後発品を処方するものではない。少なくとも医薬品の供給が不安定な状況において,強引な後発品の使用を推奨するような取組みには反対である。
〜意見交換〜
先発品メーカーは薬価を下げても困らないのではないかとの意見や,後発品メーカーは服用しやすい錠剤の開発等によって,今後残っていく道があるのではないかという指摘が挙がった。「競争原理が失われることは健全ではない」というのが有識者の意見であり,府医は,今後の議論を慎重に見守りながら注視していく必要があると答えた。
令和6年6月の診療報酬改定にともない,生活習慣病の管理に係る療養計画書の作成が医療現場に大きな負担を与えているとの指摘について,今回の改定の議論の中で,中医協でもこの点が大きな問題となったところである。
支払側からは,生活習慣病の管理を評価する点数が複数存在し,内容が重複していることや,生活習慣病管理料の要件である療養計画書の作成が特定疾患療養管理料においては求められていないことが指摘され,また,外来管理加算についても評価があいまいであるとして,廃止が主張されたが,日医は中医協でその都度反論し,各診療報酬項目の歴史的経緯や重要性を説明したところ,外来管理加算の廃止については完全に阻止した上で,今回の見直しに押しとどめることができたという経過である。しかし,改定率決定時の大臣折衝において,生活習慣病を中心とした管理料や処方箋料の再編・効率化によりマイナス0.25%の改定が決定し,特定疾患療養管理料の対象疾患の見直しや処方箋料の引下げ等がなされたことは大変残念な結果であったと受け止めている。
ただ,日医としても医療機関への影響を緩和するため,療養計画書を大幅に簡素化させるとともに,概ね4か月ごとに作成する継続用については,医師が説明し,患者が十分に理解したことを確認した場合は患者署名を省略できるようになるなど,負担軽減が図られている。
加えて,今回の改定では18年ぶりに初・再診料の引上げが実現し,さらには医療従事者の賃上げを目的としたベースアップ評価料が新設された。ベースアップ評価については,当初よりも大幅に届出様式が簡素化されているため,スタッフの賃上げ原資として活用いただきたいと考えている。
マイナンバーカードの保険証利用への対応については,医療機関の業務効率化が目的であるにもかかわらず,現場では負担感が増しているとの声が多く,昨年9月から10月にかけて日医が緊急Web調査を実施した結果,小規模診療所におけるICT対応の負担やシステム事業者への費用負担の重さが浮き彫りとなった。この調査結果を踏まえ,日医は国や厚労省に対し,現場の実情に即した診療報酬の手当てや補助金の検討を求めている。府医としても,近医連や日医の会議において現場から寄せられた声を届けていきたいと考えている。
〜意見交換〜
意見交換では,給付と負担について活発な議論が行われ,診療報酬を引上げても患者の負担が増え,医療機関と患者の双方が困難な状況に直面することに懸念が示された。財源に関しては,自己負担額や保険料の負担増加を求めることが困難な状況の中で,どのようにこの問題を解決するかが大きな課題となっており,結果として税金による手当てが避けられないのではないかとの意見が挙がった。
また,小児科ではADHDやASDといった発達障害への対応が増えているものの,診療報酬だけでは十分に手当てされてないことが指摘され,行政による支援が必要であるとの意見が出された。
自院で行った自由診療で患者の具合が悪くなった場合,その治療は原則として自由診療となる。
過去の新規個別指導において,皮膚疾患に対し保険適用外の薬剤を使用して自費診療を行い,その治療にともなう炎症や感染症の治療を保険診療で行った医療機関に対し,近畿厚生局京都事務所から指摘があった。当該事例における疾病は一連の自費診療が原因で発症したものであり,その治療は自費診療を行った医療機関で行われるべきである。従って,治療費は当該医療機関または自費診療を選択した患者が負担すべきであり,公的な医療保険によって支給されるべきではない
しかし,例外として,自由診療後に発症した疾患を他院で診療する場合は,保険診療の適用が可能である。
日本医師会医師賠償責任保険(以下:日医医賠責)では自由診療を補償対象であり,府医が出資する有限会社ケーエムエーで提供している日医医賠責の免責分を補償する「100万円保険」においても補償範囲は同様である。ただし,日医医賠責では,美容目的の医療行為については補償対象外であり,利用目的の判断が難しいケースもあり,最終的な判断は事例ごとに日医が判断することとなる。
また,予防接種において手技に問題がなければ,法律上の賠償責任は生じないので,日医医賠責の補償対象にならない。手技に問題があった場合には,日医医賠責が適用される。
医療事故の対応にあたり,補償範囲が不明瞭な点はあるものの,医療機関側の主張を聞いた上で,サポートしていきたいと考えている。
その後の意見交換では,医師不足や偏在の問題に対する実効性のある方策等を協議する場として設置されている「京都府医療対策協議会」における協議についての報告が行われ,丹後医療圏における医師確保の問題について意見交換が行われた。地区からは,丹後医療圏は医師確保重点地域であるにもかかわらず,実際には大学病院の人員引揚げ等により,常勤医が減少しているとの現状が報告された。数名の医師の配置によって地域医療を守ることができるため,京都府の責任においてしっかりと医師確保の問題に取組むよう府医からも要望してほしいとの声が上がった。
府医としても,新たな地域医療構想の策定に際して,公的病院と民間病院それぞれが担う医療機能についてのすり合わせ等,これから難しい作業が必要になるとの認識を示し,当該地区からの意見を伺った上で,実現性と持続性のある施策を提言してきたいとした。
・ベースアップ評価料について
外来・在宅ベースアップ評価料(1)の届出方法について手順を解説し,広く算定することを呼びかけた。
・日医未入会会員への日医入会促進について
日医では,「医師会の組織強化」を課題に挙げ,さらなる組織率の向上に取組んでいることを紹介し,日医未入会者に対する日医への入会促進に地区医,府医,日医が一丸となって取組む必要があるとして,日医への入会促進に協力を依頼した。
・「京あんしんフォン」について
府医では,「京あんしんネット」のユーザーを対象として,在宅医療・介護連携事業専用のビジネスフォン「京あんしんフォン」を導入したことを報告。「京あんしんフォン」には,MDM(モバイルデバイス管理)サービスを付加し,万一の端末の紛失時には遠隔から端末のロックが可能であるため,「京あんしんネット」をより安全・安心な環境下で利用できると紹介した。
端末には「京あんしんネット(MCS)」等,必要なアプリケーションがあらかじめインストールされており,携帯電話としても利用できるため,コミュニケーションの充実によって連携の促進が期待できることに加えて,在宅訪問時のマイナ資格確認用の端末としても利用できるとして,活用を呼びかけた。
基金・国保審査委員会連絡会合意事項について解説するとともに,個別指導における主な指摘事項について資料提示した。また,療養費同意書の交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書の発行に理解と協力を求めた。