2025年4月15日号
設問 1 胃がん検診で正しいものを1つ選べ。
① がんの罹患率は下がることが望ましい。
② 胃X線検査は悪なのでなくすべきだ。
③ 胃内視鏡検診は効率が良い。
④ がん検診の正確な受診率は不明である。
⑤ 胃内視鏡検診では喉頭や食道はよく見なくてもよい。
解答1 ④
解説 1 ① 検診受診率が上がるとがんと診断される人の数が増えるので罹患率が上昇する。つまり,がんの罹患率には検診受診率が反映される。従って,罹患率が下がることは必ずしもよいとは限らない。下がる方がよいのは死亡率である。
② 胃X線検診は日本では有効性が確認されており,厚労省も認めている検診方法である。どんな方法にも利点と欠点があるので,胃X線検査にも欠点はある。しかし,現在のところ職域や医療過疎地域では胃X線検査に利点があるので簡単にはなくせない。逆に,胃X線検診に胃炎診断を導入すると胃がん検診としての感度と特異度が上がり,しかも胃がん発見効率は内視鏡検診よりよいので,むしろ推奨してもよいくらいである。
③ 胃内視鏡検診での胃がん発見率は 0.17%で,1例の胃がんを見つけるためには 588 人の内視鏡検査を必要とする。今後はヘリコバクター・ピロリ感染者の減少により,胃内視鏡検診での胃がん発見率はさらに低下し,胃がん発見効率は低下する。内視鏡検診の効率化には,内視鏡的正常胃(C-0)の受検者の検診間隔延長が期待されている。
④ 職域ではがん検診が義務化されておらず報告義務もないので,住民検診と合わせた国民全体のがん検診受診率は計算できない。市町村では国民健康保険被保険者の検診受診率は計算できるが,職域で検査を受けずに住民検診を受ける人(おもに健康保険の被扶養者)を含めると正確な検診受診率が計算できない。
⑤ 胃内視鏡検診改定マニュアルには胃がんのことがとくに強調されて記載されている。しかし,胃がん以外の悪性疾患や治療の必要な良性疾患を診断しないでよいということではない。内視鏡検診では内視鏡検査の利点を生かし,胃への挿入前に喉頭や食道などを画像強調(image-enhanced endoscopy, IEE)を用いて診断する方がよい。
設問 1 次のうち正しいものを一つ選べ。
① 死亡数の多いがんは、肺がん⇒大腸がん⇒胃がんの順である。
② 対策型大腸がん検診の開始年齢は 50 歳である。
③ 大腸 CT 検査は対策型大腸がん検診の精密検査法として推奨されている。
④ がん死亡数の多い5がんの中で 10 年実測生存率が最も高いのは胃がんである。
⑤ どれも正しくない。
解答1 ⑤
解説 1 部位別がん死亡数(2023 年)
設問 1 早期胃癌の内視鏡治療後に最も頻度の多い偶発症は何か?
解答1 胃 ESD 後の偶発症で最も多いのは後出血であり,胃では 4.4%と報告されている。
Suzuki H, et al:,31:30-39.2019
設問 2 早期胃癌の内視鏡治療後の後出血に影響を与える因子は何か?
解答 2 抗血栓薬,抗凝固薬内服歴,透析患者,胃体下部病変,多発病変,病変径 30mm 以上が後出血リスク因子として挙げられる。
Hatta W, Tsuji Y. Yoshio T. et al. Gut. 70(3):476-84. 2021
設問 1 GERD 診療ガイドライン改定を踏まえた軽症逆流性食道炎治療戦略を述べよ。
解答1 ・初期治療ではピロリ菌の感染状態や症状の強さを考慮した薬剤選択が必要
・維持治療では重症化予測因子(高齢,亀背,食道裂孔ヘルニア,膠原病)が無い症例は効果発現が速い薬剤を考慮
設問 2 GERD 診療ガイドライン改定を踏まえた重症逆流性食道炎治療戦略を延べよ。
解答 2 ・初期治療では最も粘膜治癒が得られる薬剤を選択
・維持治療では出血や狭窄の合併症リスクが低い薬剤を選択
設問 1 禁煙外来について,正しいものを選べ。
① 禁煙外来2−4回目はオンライン診療が認められている。
② 禁煙外来オンライン診療は厚生局への届出が必要である。
③ ニコチン依存症治療補助アプリを使うためにはプログラム医療機器等指導管理料の届出をする必要がある。
④ 加熱式タバコの禁煙外来では補助アプリを処方できない。
⑤ すべて正しい。
解答1 ⑤ すべて正しい(ニコチン依存症管理料の「通知」を参照)
設問 2 禁煙補助薬以外で禁煙治療で有効なものを選べ。
① 行動パターン変更法(タバコを吸っていた場面を避ける,行動を変える)
② 環境改善法(タバコ・喫煙所・販売所に近づかない。加熱式デバイスを捨てる等)
③ 代償行動法(吸いたくなったら動く,ガム,炭酸水など口寂しさの解消)
④ 動機づけ面接法
⑤ すべて正しい
解答 2 ⑤(動機づけ面接法は行動変容ステージのいずれにおいても効果あり)
設問 1 化学療法により末梢神経障害をきたしている患者数の,近年の動向を述べよ。
解答1 抗がん薬の選択肢が増え,治療成績が向上し,末梢神経障害をともないながら抗がん薬治療を継続しているがん患者が増加している。また,最近承認された新薬にも末梢神経障害をきたすものがあり,ますますその患者数は増加している。
設問 2 化学療法による末梢神経障害に対して,ガイドラインで推奨される特効薬があるか答えよ。
解答 2 強いエビデンスがある薬剤はない。どの薬剤も特効薬ではないので,各患者の「薬剤追加への考え方」や「しびれに対する薬剤の副作用に対する考え方」を把握し,よく相談して処方を決定する。