2025年6月1日号
団塊ジュニア世代が高齢化して,日本の高齢者がピークとなる一方,医療・福祉の担い手が急激に減少する「2040年問題」が大きな課題となっています。京都府では,府民が住み慣れた地域で安心に暮らしていけるよう,地域包括ケアシステムの実現に向けて「京都地域包括ケア推進機構」を設立し,医療・福祉の推進にオール京都体制で取り組んできたことから,地域医療構想の策定にあたっても,バランスの取れた医療・介護の提供体制に向けた指標として位置づけ,その名称も「京都府地域包括ケア構想」として取り組んで参りました。令和6年12月18日に厚生労働省が公表した「新たな地域医療構等に関する検討会」の取りまとめにより,地域医療構想については,2040年に向け,病床(病院機能)だけではなく,かかりつけ医機能,在宅医療,医療・介護連携,人材確保等も含めたあるべき医療提供体制の実現に資するよう策定・推進する考え方が示されました。
そこで府医では,在宅医療の現状や将来像について,会員各位のお考えや実態を調査することを目的に「在宅医療への取組み状況アンケート」を実施いたしました。各圏域で実施されている地域医療調整会議において在宅医療の実態および将来像,課題等についてご協議いただくための数的根拠を可能な限り明確に示し,地域医療構想をできる限り現実的なものに近づけるための基礎資料にしたいと考えております。
本アンケート調査の実施にあたり,ご回答いただきました会員各位および多大なご協力を賜りました各地区医に改めて御礼申し上げます。
平成28年に実施したアンケート結果との比較においては,回収率の違い(平成28年;72.3%,令和6年;50.4%)から実数比較による評価が困難な側面もありますが,単純集計からみえてきた傾向をお示しいたします。
診療所管理者の年代別在宅医療実施率では,2024年において,30代で在宅医療に取り組む医師の割合が増加してきた一方で,70代以上の比率の増加も見られ,医師の高齢化がうかがえます。また,強化型在支診および在支診の届け出が増えたと同時に,複数の医師で在宅医療に取り組む施設が増え,看取りも含めて,より多くの患者さんをご担当いただいていることが推測されます。
本アンケート調査の集計については,今号より4回にわたってご報告いたします。
I.集計結果概要
(1) 回答数
【内訳】
(2) 管理者の平均年齢
在宅医療を実施している,していないに関わらず平均年齢に差は無かった。
■ 2024 年
在宅医療を実施している世代の構成年齢を前回と比較すると 60 代以下の世代が減少している事に対し,70 代以上は,11.0%も増加している。この事から前回 60 代だった医師が継続して現在も在宅医療を実施していることがうかがえる。
■ 2024 年(今回)と 2016 年(前回)の比較 在宅医療を実施している診療所
■ 2024 年(今回)と 2016 年(前回)の比較 在宅医療を実施していない診療所
(3) 診療所管理者の年代別在宅医療実施率
30 代では約半数の診療所が在宅医療を実施。在宅医療を実施している/していない診療所ともに 60代が最も多い。ここでも 70 代以上の在宅医療実施率が増加している。
■ 2024 年
■ 2016 年
(4) 診療科別 在宅医療実施状況(抜粋)
実施数は内科が最多で 309 件。実施率では外科が 82.8%(実施 24 件/回答 29 件)で最も高く,次いで内科が 67.8%(実施 308 件/回答 454 件)となった。その他,実施率が高かったのは,泌尿器科=35.3%(実施6件/回答 17 件)。
小児科 =13.8%(実施9件/回答 65 件)は,2016 年度の小児科= 6.6%(5件/ 76 件)に比べて倍増している。
■ 2024 年
■ 2016 年
(5) 在宅療養支援診療所等の施設基準に係る届出状況
■ 2024 年
◇在宅医療を実施している診療所:
強化型在支診 = 11.8%
在支診 = 41.9%
届出していない= 46.3%
無回答 = 0.0%
■ 2024 年(今回)と 2016 年(前回)の比較
前回は強化型在支診,在支診あわせて 43.1%であったが,今回は 53.7%に増加した。
◆在宅医療を実施している医療機関の現状
(6) 在宅医療を担当する医師数
◇在宅医療を実施している診療所 432 件中,350 件が医師1名で担当。
〈診療所〉
■ 2024 年
■ 2024 年(今回)と 2016 年(前回)の比較
前回は在宅医療を担当する医師数2名以上の診療所が 12.1%であったが,今回は 18.8%に増加した。
◇在宅医療を実施していると回答した病院 50 件中,担当医師1名との回答は 12 件。複数名で取組んでいるところが多かった。
〈病院〉
■ 2024 年
■ 2024 年(今回)と 2016 年(前回)の比較
(7) 定期的に訪問診療している患者数
◇在宅医療を実施している診療所(432 件)では,患者 10 人未満との回答が多くを占めた(5人未満=135 件,5人~ 10 人未満 =66 件)。
一方で,50 人以上に対応している診療所もみられた(50 人~ 100 人未満 =34 件,100 人以上 =30 件)。
〈診療所〉
■ 2024 年
(2024 年:2024 年 6 月1ヵ月間の実績)
(2016 年:2015 年 12 月1ヵ月間の実績)
■ 2024 年(今回)と 2016 年(前回)の比較
前回は定期的に訪問診療している患者数 50 人以上の診療所が 8.6% であったが,今回は 14.8% に増加した。
◇在宅医療を実施している病院(50 件)では,100 人以上の患者に対応している病院が最も多く(10 件),
全体の 20% を占めた。前回(7件,全体の 11.1%)と比較しても増加傾向にある。
次いで,15 人~ 20 人未満が8件(16%),5人未満が7件(14%)であった。
〈病院〉
■ 2024 年
■ 2024 年(今回)と 2016 年(前回)の比較
◇現在,定期的に訪問診療している患者数の合計:診療所 =12,627 人,病院 =3,526 人
(2024 年:2024 年 6 月1ヵ月間の実績)
(2016 年:2015 年 12 月1ヵ月間の実績)
◇内訳は非がん患者が多く,診療所= 11,024 人,病院 2,693 人。病院においては「がん」「非がん」「小児患者」いずれも増加しており,特に病院での小児患者数が大幅に増加している。
■ 2024 年
■ 2024 年(今回)と 2016 年(前回)の比較
(8) 訪問診療の場所(患者数の内訳)
◇在宅医療を実施している診療所の訪問診療の場所は自宅が 7,748 人 /12,627 人で最多だった。
〈診療所〉
■ 2024 年
合計患者数 =12,627
■ 2024 年(今回)と 2016 年(前回)の比較
サ高住,グループホーム,有料老人ホームは,それぞれ前回と比べて2倍~3倍増加した。
◇在宅医療を実施している病院の訪問診療の場所は自宅が 1,910 人 /3,526 人で最多だった。
〈病院〉
■ 2024 年
■ 2024 年(今回)と 2016 年(前回)の比較
サ高住,グループホーム,有料老人ホームは,それぞれ前回と比べて増加し,特にサ高住は約4倍も増加した。
自宅以外(サ高住,グループホーム,有料老人ホーム)の率が高い。
◇在宅医療を実施している医療機関の訪問診療の場所(患者数内訳)
前回の回答数 702 に対し,今回は回答数 482 にも関わらず,すべての訪問診療の場所で患者数が増加した。
■ 2024 年
■ 2016 年
(9) 往診した患者数
◇在宅医療を実施している診療所では,往診した患者数5人未満の診療所が 197 で最多であった。
〈診療所〉
■ 2024 年
(2024 年:2024 年 6 月1ヵ月間の実績)
(2016 年:2015 年 12 月1ヵ月間の実績)
■ 2024 年(今回)と 2016 年(前回)の比較
前回は往診した患者数が5人~ 50 人未満の診療所が 31.6% であったが,今回は 21.8% に減少した。
(10) 看取り件数
◇在宅医療を実施している診療所の看取り件数は,5人未満の診療所が 169 で最多である一方,0人の診療所もほぼ同数(167)であった。
〈診療所〉
■ 2024 年
(2024 年:2023 年5月~ 2024 年 6 月の実績)
(2016 年:2015 年1月~ 2015 年 12 月の実績)
■ 2024 年(今回)と 2016 年(前回)の比較
前回は看取り件数5人~ 50 人未満の診療所が 12.5% であったが,今回は 19.7% に増加した。また看取り件数 50 人以上の診療所も 0.3% から 1.9% と,約5倍に増加した。