2020年10月15日号
2020年10月2日
京都府医師会新型コロナウイルス感染症対策チーム
新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の6月中旬からの感染拡大(政府はこれを第2波と言わない)は8月下旬に落ち着きをみせてきた。内閣府や厚生労働省(厚労省)は,感染対策と経済再生対策の同時進行を中心に据えての対応策を検討している。また医療機関への支援策も次々と出された。
京都府医師会(府医)では,この冬の季節性インフルエンザとCOVID-19の同時流行に備えて,京都医報8月15日号に「インフルエンザ流行期の有熱者への対応」を示した。9月4日付で厚労省COVID-19対策推進本部から「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について」が事務連絡で発出された。京都府と府医は協議を重ね,京都府における医療整備体制,特に有熱者への医療機関の対応法を検討した。府医の案を地区医会長・感染症担当理事・庶務担当理事合同会議で説明した。この案は協議段階のもので,また9月下旬から10月にかけてCOVID-19検査の方法等の変更等,検討の余地があるが10月中には協議を終えて最終的な方針が決まる予定である。
9月の1か月間の動向について述べる。
なお,本文中に記載した数値や対応策等は,10月2日時点でのものであり,今後の動向により変化することを予めお断りしておく。
⑴ 全国の感染者数の推移
COVID-19の全国の新規感染者数は,8月7日をピークとして徐々に減少傾向が見られた。しかし8月最終週から複数の都道府県,特に東京,大阪,愛知では,新規感染者数の減少が止まる動きや増加に転じる動きがみられた。実効再生産数は8月11日に1を下回りその後上下はあるものの1未満であったが,9月1日0.87から同8日0.79と漸減したものの,ゆっくりと上昇し16日1.03をピークに漸減するも減少は緩やかであった。しかし30日時点では1.14と増加に転じた。このように1前後で推移しておりやや増加傾向もみられるため要注意である。社会活動が活性化する中で,会食や職場などを介した感染が生じており,9月の連休(19日~22日)に各地で人出が増えたことの影響には,警戒を続ける必要がある。
感染者数に占める各年齢層の割合は,7月では20代の若い世代が多かったが,8月以降は中高年層の割合が上昇傾向となった。60歳以上の割合は7月上旬10%程度,8月上旬に18%,8月下旬から9月にかけて25%となった。
6月以降の感染拡大では,3~4月に比べて感染者数の増加に対して重症者の増加が緩やかとなっており,5月と8月の1か月間の調整致命率(一定の定義に基づいて診断された症例群から追跡期間中に発生する死亡リスクを表す;届出から死亡までの日数の累積分布を調整した推定値)を比較すると,全年齢,年齢群別とも低下傾向がみられた(表1)。また入院患者の分析では,重症になってから入院する患者の割合や死亡率は,6月5日以前の第1波に比べて6月5日以降の感染拡大時にはそれぞれ低下していた(表2)。若い感染者が増えたことと,第1波では手探りで行っていた治療法が進んだことが大きい。特に5月以降にレムデシビルやデキサメタゾン等の治療薬が承認されたこと,同時にCOVID-19感染で生じる様々な病態が判明してきたことと相まって,病状によって選択する治療法が明らかにされてきた。検査体制拡充により,早期の発見と症状悪化の前に入院に結びついてきたことも死亡率低下に寄与していると思われる。
表1,調整致命率の比較(8月30日時点推定値)
表2,COVID-19 の入院症例に占める入院後に死亡する割合(世代・入院時重症度別)
⑵ 京都府の感染者数の推移と問題点
京都府内(京都市を含む)の9月の感染者数は8月に比べると減少した。特に京都市での9月の感染者数は8月の約半数であった。年齢別でみると,7月に圧倒的に多かった20代は減少し,8月9月は高齢者の割合が上昇していた。特に府内では80代と90代の増加が目立った(図1)。府内の60歳以上の割合は,7月13.0%,8月23.4%,9月45.5%であった。京都市では,中学・高校でのクラスター発生が複数校であったために10代の増加が目立つが,その他の世代ではほぼ均等な分布をみせていた(図2)。京都府の実効再生産数は,9月中旬には1未満であったものが漸増傾向をみせて,23日1.2に上昇後に1前後を推移した。しかし28日1.67,29日に1.97と急増し,30日には0.97と減少するも10月1日時点で1.03となっており,今しばらく陽性者増加が収まらないことが示唆された。
京都府内のPCR検査数は,9月23日に1日2,000以上が行われたが,平均すると1日500件であった。9月30日時点では京都府の直近1週間のPCR陽性率は2.3%であった。
京都市内で発生した複数の学校でのクラスター発生の事案では,府医あるいは地区医をはじめ医療関係者への詳細な通知はなく,新聞等の報道で知るのみであった。そのため,当該地区の府医会員が事前に知らされることなく,当該校の生徒とその家族等が直接受診して困惑することが多々あった。数年前に府医は京都市に対して感染症の集団発生時には少なくとも当該校についての通知を府医に行うよう要請し,その後ノロウイルス等集団発生時には京都市から府医へ連絡があり,その情報を当該校の地区医へ通知していた。しかしながらその後京都市の保健行政の再編成(保健センターと福祉センターの統合,医療衛生企画課と医療衛生センターへの分離等)により,この件が有耶無耶となって今に至っている。COVID-19の発生状況の把握が医療機関でできないことについては,京都のみならず他府県および市区町でも問題になっている。学校現場で「学校欠席者・感染症情報システム」が導入されていると,いち早く学校での感染状況が把握でき,ひいては地域の感染予防に寄与するものである。平成30年に京都府と府医との協議によりこのシステムの導入の合意をし,府内各市町村で運用されている。府医から京都市教育委員会(市教委)へ再三導入の申し入れを行ったが,京都市はこれを導入してこなかった。文部科学省はCOVID-19の発生等について学校現場の感染状況を医療機関等に早期に情報提供を行う目的でこのシステムを学校現場に導入するよう全国の各教育委員会等に対して本年6月8日に文書を発出していた。その後も学校保健関連会議などで導入の要請を市教委に行ったが,何の動きもみられなかった。学校での感染症は学校現場だけの問題ではなく,地域医療に直結したものである。今後,京都市と市教委に導入を強く申し入れる予定である。
図1 京都府陽性者
図2 京都市陽性者
⑶ 国のCOVID-19対策の方向性
8月28日のCOVID-19対策本部は,COVID-19に関する今後の取組みとして次の7つを示した。
①感染症法における入院勧告等の権限の運用の見直し
・軽症者や無症状者の宿泊療養(適切な者は自宅療養)での対応を徹底し,医療資源を重症者に重点化。感染症法における権限の運用について,政令改正も含め,柔軟に見直し
②検査体制の抜本的な拡充
・季節性インフルエンザ流行期に対応した地域の医療機関での簡易・迅速な検査体制構築。抗原検査キットを大幅拡充(20万件/日程度)
・感染拡大地域等において,その期間,医療機関や高齢者施設等に勤務する者全員を対象とする一斉・定期的な検査の実施
・市区町村で一定の高齢者等の希望により検査を行う場合の国の支援
・本人等の希望による検査ニーズに対応できる環境整備
③医療提供体制の確保
・患者の病床・宿泊療養施設の確保のための10月以降の予算確保
・患者を受け入れる医療機関の安定経営を確保するためのさらなる支援
・地域の医療提供体制を維持・確保するための取組み・支援を進め,季節性インフルエンザ流行期に備え,かかりつけ医等に相談・受診できる体制の整備
・病床がひっ迫した都道府県に対する他都道府県や自衛隊の支援
④治療薬,ワクチン
・治療薬の供給を確保,治療薬の研究開発に対する支援
・全国民に提供できる数量のワクチンの確保(令和3年前半まで)
・身近な地域での接種体制や健康被害救済措置の確保等
・健康被害の賠償による製造販売業者等の損失を国が補償できる法的措置
⑤保健所体制の整備
・自治体間の保健師等の応援派遣スキームの構築
・都道府県単位で潜在保健師等を登録する人材バンクの創設
・保健所等の恒常的な人的体制強化に向けた財政措置
⑥感染症危機管理体制の整備
・国立感染症研究所および国立国際医療研究センターの連携による,感染症の感染力・重篤度を迅速に評価・情報発信できる仕組みの整備
・実地疫学専門家の育成・登録による感染症危機管理時に国の要請で迅速に派遣できる仕組みの構築
⑦国際的な人の往来に係る検査能力・体制の拡充
・入国時の検査について成田・羽田・関西空港における1万人超の検査能力を確保(9月)
これを受けて,COVID-19対策アドバイザリーボードは,9月から以下のワーキンググループ(WG)を設置して議論を始めた(表3)。
・偏見・差別とプライバシーに関するWG
・感染者情報の活用のあり方に関するWG
・大都市の歓楽街における感染拡大防止対策WG
・指定感染症としての措置・運用のあり方に関するWG
「指定感染症としての措置・運用のあり方に関するWG」では,10月には措置・運用の見直しを行う予定としている。
9月に発出された各種の新たな通知あるいはそれまでの一部改正は,これらの協議内容に応じて出されてきた。
9月25日の分科会では,①社会経済活動と感染防止の両立のための必須条件,②「小規模分散型旅行」
のさらなる推進,③感染拡大に備えて,の3点について「人の移動に関する分科会から政府への提言」が出された。
同日,政府として「新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの接種について(中間とりまとめ)」をワクチン接種に関する分科会での議論を踏まえたものとして発表した。接種目的,ワクチンの確保,接種の実施体制,接種順位,ワクチンの有効性および安全性,健康救済制度,広報,今後の検討等の各項目で政府としての中間とりまとめが記載されている。
表3,政府の会議等(開催順)
⑴ 会議等
府医が主務であった近医連定時委員総会は,9月6日にTV会議システムで開催した。府医で作成した決議文の案は各府県医から事前に承認を得ていた。特別講演を2題,「新型コロナウイルス感染症(COVID-19):その本質と対策」(京都大学名誉教授 川村孝氏),「ウィズ・コロナの時代と医療の未来」(日本経済新聞上級論説委員 大林尚氏)は松井府医会長の座長で行われた。
今冬に季節性インフルエンザが流行する時期にCOVID-19が同時に流行する可能性を踏まえ,また9月4日に厚労省対策推進本部から発出された「次のインフルエンザの流行に備えた体制整備について」を受けて,京都府との協議の前に府医COVID-19対策チーム(府医コロナチーム)で内容等の確認を行った。府医は松井府医会長をはじめとする府医コロナチームと,京都府は健康福祉部から松村淳子部長および複数名の担当者とで,9月19日と10月1日に京都府内の医療・検査体制について意見交換を行った(10月5日に再度協議する予定であり,具体的な内容は来月掲載)。19日の京都府との協議内容(後述)は,地区医会長・感染症担当理事・庶務担当理事合同会議を開催して,説明と質疑応答を行った(なお,10月5日の京都府との協議内容を踏まえて,7日に地区医会長・感染症担当理事と府医との会議を開催し,改めて説明する)。
9月の地区医との懇談会は,綾部,与謝・北丹,福知山とWebで開催し,協議内容はCOVID-19関連のものが主であった。
⑵ 宿泊療養健康管理について
9月からは,すべての府医会員に京都平安ホテル,ホテルヴィスキオ京都の健康管理医を募集し,出務をお願いした。
夏終盤から,中高校生の部活クラスターが発生(9月6日には私立高校のクラスターが発生し9名が入所),未成年の宿泊施設入所にあたっては,保健所,入院医療コントロールセンターとの連携をはじめ,出務医師から保護者への入所状況や入所計画を丁寧に説明し,安心して療養のできる環境整備を行っていただいた。両ホテル合わせて総入所者数が35名に達したものの,その後は徐々に入所者が減少した。
京都平安ホテルは9月17日をもって一旦閉所となった。以降はホテルヴィスキオ京都に集約され,府医会員のご協力を得て運用している。
入所中の症状増悪により,健康管理医の適切なご判断により転院した者が11名いた。家族内感染のため,0歳児,5歳児の入所もあった。
9月30日現在の総入所者数は365名,退所者,転院者はそれぞれ348名,11名である(入所中は2名)。年代別では,10歳未満が8名,~10歳代59名,20歳代154名,30歳代52名,40歳代57名,50歳代32名,60歳代~3名であり,居住地では京都市内277名(75.9%),京都府内が88名(24.1%)である。自宅からの入所は336名(92.1%),医療機関からの入所は29名(7.1%),平均入所日数は約6.3日である。
入所時症状のある者は298名,無症状は67名であり,症状の内容は,発熱,咳,咽頭痛,頭痛,関節痛,味覚・嗅覚障害,倦怠感である。
⑶ 府医PCR検査相談センターの運営
京都府・医師会京都検査センター(府医PCR検査相談センター)における8月末までの申し込み総数は1,731件,検査実施数1,516件(キャンセル,未実施を除く)であったが,9月の申し込み件数は201件,検査実施188件であった(そのうち妊婦はそれぞれ87件,85件)。陽性者は4件(月間陽性率2.1%)と前月に比して減じていた。全国的に感染者数が減少している中で,府医PCR検査相談センターでの検査実施数も前月の半数となった。20代30代が多い傾向にあるが,50代以上の実施が相対的に増えていた。府医検査センターは地区医会員の出務で行われているが,府医相談センターへは出務の申し出がなく府医理事が交替で担当していることが9月も続いた。
PCR検査や抗原検査では,鼻咽頭ぬぐい液が標準であるが,採取に際して十分な感染防御策が必要であることから,府医では一般医療機関では行うことを勧めてこなかった。唾液検体はより安全に採取できるため,集合契約でのPCR検査は唾液の採取を認めてきたという経緯がある。またCOVID-19抗原検査では,抗原定量検査は唾液検体が可能であるが,抗原定性検査(簡易キット)では唾液検体は使えない。インフルエンザの流行期にはインフルエンザ迅速検査を同時に行う機会が増えるため,COVID-19の検査でも唾液以外の検体として鼻腔ぬぐい液であれば,鼻咽頭ぬぐい液よりも安全に採取することが可能である。
9月25日の第47回厚生科学審議会感染症部会において,鼻腔ぬぐい液を用いたCOVID-19検査(厚労省科学研究「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)およびインフルエンザの診断における鼻咽頭拭い液・鼻かみ鼻汁液・唾液検体を用いた迅速抗原検査の有用性の検証のための研究」)に関する報告があり,鼻腔ぬぐい液を新たにCOVID-19検査の検体として活用することが可能,と提言された。これを受け,10月2日に厚労省は鼻腔ぬぐい液をCOVID-19検査で扱えるとした。但し,無症状者対象の検査は,いずれも鼻腔検体は推奨されていない(表4)。
表4 COVID-19に係る各種検査
COVID-19とインフルエンザは臨床的に鑑別することは困難であり,発熱患者への対応を如何にするか,しっかりとした診療と検査の体制づくりが求められる。9月4日付で厚労省COVID-19対策推進本部から「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について」が事務連絡で発出された。
この事務連絡に先駆けて府医コロナチームでは6月から7月のCOVID-19感染拡大の時期に,この冬のインフルエンザ流行期の医療機関での有熱者への対応策として,患者さんが如何に安心,安全に受診できるか,またかかりつけ医である医療機関もまた安心,安全に患者さんを受け入れることができるかの検討を始めていた。検討内容の一部は,京都医報8月15日号に掲載した「インフルエンザ流行期の有熱者への対応」として示した。
9月4日の厚労省事務連絡では,今後のCOVID-19の流行に備えて,またインフルエンザ流行に備えての体制整備を,各都道府県で協議して10月中に完了するよう求めており,また都道府県単位で,医療提供体制の整備について計画することが示された。前述したように,この体制整備について府医と京都府とで複数回の協議を行い,府医案としてまとめた「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について」を,9月23日開催の地区医会長・感染症担当理事・庶務担当理事合同会議で提案した。
ただし,9月末現在では,まだ協議の余地があり確定したものではない(前述のとおり,10月5日京都府との会議でさらに検討を進める)。9月末現在では,以下が概略である。
● 発熱者は,医療機関を直接受診するのではなく,まずかかりつけ医に電話相談する。医療機関は院内感染対策を講じ,患者はマスク装着で受診する。府民・市民と医療機関にこの点を明確に広報する必要がある。
● かかりつけ医を持たない発熱者は「受診・相談センター(仮称)」(主として保健所が担当)に相談する。従来の「帰国者・接触者相談センター」は役割が解消されるが,今後は「受診・相談センター」として,相談する医療機関に迷うあるいは夜間・休日に急に症状が悪化した場合の一般市民の相談先としての体制は維持され,受診可能な医療機関を探す役割を果たす。
● 発熱者を自院で診療と検査を行うには時間的・空間的に動線を分ける工夫が必要。職員はマスク装着,受付での飛沫予防策を講じる。
● 診療には,標準予防策と手指消毒,環境消毒,換気の徹底。
● インフルエンザの検査とCOVID-19の検査は,京都医報8月15日号「インフルエンザ流行期の有熱者への対応」の流れになるが,その地域の流行状況を十分配慮して判断する。
▷ インフルエンザ迅速検査:COVID-19感染拡大第1波の際には,診察医の感染曝露の懸念からインフルエンザ迅速検査を控えるよう,会員にお願いしていた。インフルエンザ迅速検査の検体は,鼻腔ぬぐい液,鼻腔吸引液,鼻汁鼻かみ液,咽頭ぬぐい液のいずれかとなっている。鼻腔ぬぐい液は,鼻腔に挿入して鼻甲介に綿棒を数回こすりつける。この鼻腔からの採取の際には,患者はマスクをしたままで鼻だけを出してマスクの両端を手で押さえる,検体採取時には患者の正面ではなく横から採取する,という方法で,医療者の曝露を限定的なものにすることが可能と考える。府医としては,インフルエンザ迅速検査の検体採取の際は,この対応で鼻腔ぬぐい液を採取することで,より安全に検査を実施することができると考える。
▷ 陽性の場合はインフルエンザの治療を,陰性の場合はCOVID-19の唾液検体PCR検査を実施する。
▷ かかりつけ医が唾液PCR検査をできない場合は「京都府・医師会京都検査センター」(府医PCR検査相談センター)に,紹介してPCR検査を行う。なお,府医PCR検査センターはドライブスルー形式なので,自動車で検査を受けに来ることができない場合は「受診・相談センター」が「帰国者・接触者外来」への受け入れ調整を行う(従来の流れと同様)。
(追記)
10月2日付で,PCR検査で鼻腔ぬぐい液を検体とすることが認められたことと,COVID-19抗原定性検査も鼻腔ぬぐい液を用いることができることになった。鼻腔ぬぐい液採取は,医師の監視の下で患者自身が採取する場合は唾液PCRと同じように曝露が少ないため医療者はサージカルマスクと手袋でよいが,医療者が採取する場合はサージカルマスク,手袋,眼の保護(フェイスガード等),ガウン装着で行うことが示された(表5)。また,COVID-19抗原定性検査キットで採取した鼻腔ぬぐい液の処理液をインフルエンザ抗原迅速検査で使用することが認められ,採取が一度で済むので,さらに医療者の曝露機会が減ることになり,より安全に検査を行うことが可能となる。COVID-19とインフルエンザを1つのプレートで検査できるキットが10月中に発売される予定である。
表5,想定される検体と検査の種類等の例 (新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針(第1版))
<資料>
#「次のインフルエンザの流行に備えた体制整備について」事務連絡(9月4日,厚労省対策推進本部)
#「次のインフルエンザの流行に備えた体制整備(全体像)について」(9月15日,厚労省対策推進本部)
#「「新型コロナウイルス感染症に関する検査体制の拡充に向けた指針」について」事務連絡(9月15日,厚労省対策推進本部)
#「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備に係る医療用物資の配布について」事務連絡(9月15日,厚労省医政局経済課)
#「人の移動に関する分科会から政府への提言」(9月25日,対策分科会)
#「新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの接種について(中間とりまとめ)」(9月25日,内閣官房,厚労省)
#「新型コロナウイルス感染症の鼻腔拭い液を用いた検査について」(9月25日,第47回厚生科学審議会感染症部会(資料2-1))
#「新型コロナウイルス感染症に係るPCR等検査の現状整理」(9月25日,日医)
#「「新型コロナウイルス感染症に対応した医療機関等への更なる支援」について」(9月25日,日医)
#「新型コロナウイルス感染症に係る行政検査の取扱いについて(一部改正)」(10月2日,厚労省健康局結核感染症科)
#「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針(第1版)」(10月2日,厚労省対策推進本部)
#「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理」(10月2日改訂,国立国際医療研究センター国際感染症センター)