「京都府の医師数削減に伴う北部医療の今後」,「保険証の新規発行停止と医療 DX の現状」について議論

 舞鶴医師会と府医執行部との懇談会が3月22日(土),舞鶴医師会館で開催され,舞鶴医師会から9名,府医から6名が出席。「京都府の医師数削減に伴う北部医療の今後」,「保険証の新規発行停止と医療DXの現状」をテーマに議論が行われた。

※この記事の内容は3月22日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

京都府の医師数削減に伴う北部医療の今後について

~医師の絶対数の不足について~
 人口1,000人に対する医師数がOECD平均で3.6人(2019年)に対して我が国は2.5人(2018年)と世界的に見て医師が少ないと指摘されているが,医療の政策目標である「いつでも,どこでも,だれでも」の国民皆保険制度が機能しているため,医療へのアクセスは世界的に見ても優れている。
 近年,医療の高度化・専門化や事務手続きの増加により医師一人の仕事量は増加し,相対的に不足することになっている。また,女性医師の増加については,妊娠・出産というライフイベントもあり,相対的な不足の一因となる一方で,我が国は人口減少が始まっており,現時点の医師養成数の増加は将来の医師過剰をもたらすことを考慮しなければならない。

~診療科別の医師の偏在~
 医師の価値観は変化し,専門分化が進む一方で,労働条件や訴訟リスクなどの影響もあり2010年から2020年の10年間では外科・内科といった包括的な分野の医師が減少している。令和6年4月に開始された医師の働き方改革は,医師の健康を守る上で必要な改革であるが,特定の診療科については医師不足をもたらし,国全体での医療の質の低下につながることが懸念される。

~医師偏在対策をどうするか~
 医師偏在対策について,国民皆保険制度の持続を基本とした上で,現状の不足感を解決する手段として,医師の業務量軽減のためのIT活用,女性医師が働き続けることができるための環境の整備が挙げられる。また,新専門医制度では,地域や診療科によって医師が偏在していることを解決するために専攻医の募集人数を診療科によって制限したり,医師多数地域に定員を設けるなどの取組みがなされている。
 現在,直面している高齢社会を乗り切るためには,地域包括ケアシステムの中で活躍する「かかりつけ医」が求められる。これまでの医学教育は卒後も含めて専門医の養成に視点が置かれていたため,専門分化が進みすぎ,結果として各診療科の医師数が不足することになっている。日医では,それを補うために医師の専門領域にかかわらず,医師が協力し合って「面としてのかかりつけ医機能」を充実させる取組みを進めている。

~地域別の医師の偏在~
 今後も人口減少,人口の移動が継続的に起こることを前提とすると,各医療圏にすべての診療機能を同様に整備することは難しく,地域に必要な医療機能を検討した上で,指導医と医療資源を集約することなどを検討する必要がある。
 必要な医療機能は,救急はもちろん脳卒中,心筋梗塞など発症から治療までの時間が予後に大きく影響する疾患に対応する医療機関と慢性疾患など日常の診療,健康管理を行う医療機関の役割分担を明確にし,地域で勤務する若手医師は専門的な診療とかかりつけ医としての診療との両方を行うことが重要である。
 また,医師としてのスキルアップ・キャリアアップを保証することや育児と子どもの教育の環境を整えるなど若手医師が望む環境を整備する必要がある。

~中丹地域医療再生計画の経過について~
 平成19年から舞鶴市地域医療のあり方検討会が設置され,複数の公的病院のあり方などが検討されてきた。平成22年には国が地域医療再生基金の交付を決定し,舞鶴市における医療提供体制の再編と最適化について,様々な議論が継続的に行われてる。
 令和5年には持続可能な地域医療を考える会,令和6年には舞鶴市医療機能最適化検討会議が設置され,地域医療維持と再編統合に向けた協議が進行中である。令和7年2月には舞鶴市と公的4病院が人口減少する中で地域医療を維持していくため,病院の再編や統合に向けた協議を開始する基本合意書を交わした。

~意見交換~
 地区から,超高齢社会において,看取りの際の家族の負担を軽減し,家族が元気に働ける環境をつくることができるような社会的な対策を構築する必要があるとの意見があった。
 今後,多死社会が進行し,在宅での看取りを担う医師の確保やかかりつけ医機能の強化に向けて,府医では府医在宅医療・地域包括ケアサポートセンターを設置し,在宅医療の支援体制を構築していると説明。近年では包括的な診療科を担う医師の減少が散見され,在宅を専門とする医師も少ないため,在宅医療を専門とする医師の養成を前提に各診療科の専門医,多職種との連携など,チームとなってかかりつけ医の役割を果たし,「面としてのかかりつけ医機能」の強化を図ることが重要とし,地域医療連携推進法人も一つの方法であると紹介した。

保険証の新規発行停止と医療DXの現状について

 今後のマイナ保険証への移行については3つの波があると考えられ,まず4月は就職や転居などが多いため,このタイミングでマイナ保険証に切り替える人が増える。次に8月には国保の保険証の期限が切れるため,ここで数千万人がマイナ保険証に移行することが見込まれ,最後に12月にはすべての保険証の期限が切れる。
 マイナカードの電子証明書には5年間の有効期限があり,そろそろ更新の対象者が出てくる。本人が市町村窓口で電子証明書を更新する必要があるが,更新ができていない場合に,マイナ保険証で受診できないという状況が起きないよう,期限が過ぎても3か月間は資格確認ができ,更新しないままの場合は保険者が「資格確認書」を職権発行することになっている。
 また,国はマイナカードのスマホへの搭載について,実証事業を経て普及を目指している。スマホによるマイナ資格確認に対応する場合,医療機関では現行の「顔認証付きカードリーダー」に加えて「汎用カードリーダー」の設置が必要となる見込みである。
 政府の考える医療DX全体のスケジュールが,遅くとも2030年には概ねすべての医療機関において必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指すといった記載や,電子処方箋について2050年度には概ねすべての医療機関で導入と記載するなど,医療現場の実態を踏まえたスケジュールとは言い難い状況である。これに対して,長島日医常任理事は,医療DXの最大のブレーキは拙速な推進であると指摘。また,日医では「診療所における医療DXに係る緊急調査」を実施し,医師自身がICT対応に当たらざるを得ないという診療所の実態や,システムのメンテナンスにかかる費用負担など,実際の課題を把握している。現場の実態に基づく日医の意見が,今後の政府による医療DXの進め方に適切に反映されるためにも,府医として尽力する考えである。

府医からの連絡事項

・ベースアップ評価料について
 外来・在宅ベースアップ評価料(1)の届出方法について手順を解説し,広く算定することを呼びかけた。

・日医未入会会員への日医入会促進について
 日医では,「医師会の組織強化」を課題に挙げ,さらなる組織率の向上に取組んでいることを紹介し,日医未入会者に対する日医への入会促進に地区医,府医,日医が一丸となって取組む必要があるとして,日医への入会促進に協力を依頼した。

・京あんしんフォンについて
 府医では,「京あんしんネット」のユーザーを対象として,「京あんしんネット」をより安全・安心に,より便利にご活用いただけるよう,専用の医療用ビジネスフォン「京あんしんフォン」を導入したことを紹介。
 携帯端末に「京あんしんネット(MCS)」をはじめ,必要なアプリケーションがあらかじめインストールされており,すぐに利用が可能であり,従来の「京あんしんネット」による連携に加えて,携帯電話としても利用できるため,より充実したコミュニケーションと連携の促進が期待できるとした。
 また,「京あんしんネット」には,MDM(モバイルデバイス管理)サービスを付加し,万一の端末の紛失時には,遠隔から端末のロックが可能であるため,より安全に,より安心して利用いただけるとして,導入を呼びかけた。

保険医療懇談会

 基金・国保審査委員会連絡会合意事項について解説するとともに,個別指導における主な指摘事項について資料提示した。また,療養費同意書の交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書の発行に理解と協力を求めた。

2025年6月1日号TOP