府市民向け広報誌『Be Well』 第92号『知っておきたいたばこの真実』

 府医では府民・市民向け広報誌「BeWell」,VOL.92「知っておきたいたばこの真実」を発刊しました(本号に同封)。
 各医療機関におかれましては,本紙を診察の一助に,また待合室の読み物としてご活用ください。
 本誌に関するお問い合わせは,府医総務課(電話:075-354-6102,FAX:075-354-6074)までご連絡ください。

VOL.92「知っておきたいたばこの真実」
(A3版,見開き4ページ)

解説

肺がん対策委員会     委員       
医療法人啓生会やすだ医院 院長  安田 雄司

我が国のたばこ関連死は毎年約13万人亡くなっている

 私たちは様々な原因で死亡しますが,我が国において外傷や感染症を除く疾患で死亡に至った2大危険因子の1位は「喫煙」で2位は「高血圧」です。たばこが原因で毎年約13万人が亡くなっているだけでなく,年約15,000人が「受動喫煙」で亡くなっています。日常診療では禁煙指導を避けて通れず,そのためには「正しいたばこの知識」を身につけておく必要があります。

たばこには様々な有害物質や発がん物質が含まれている

 ヒ素,シアン化合物,カドミウムや発がん物質のダイオキシンやジメチルニトロソアミンなどが含まれています。とくにニコチンの吸収を高めるためにアンモニアが含まれています。副流煙には主流煙に対して50〜150倍の濃度であり,その刺激性が気管支喘息などの増悪を誘発します。

たばこ肺がんの原因だけでなく多くの発病の原因になる

 喉頭がんや膀胱がん,心筋梗塞,脳卒中,COPD,クローン病や低出生体重児,歯周病など全身におよぶ様々な疾患の発生原因となります。

ニコチン依存症とは?

 なかなかたばこがやめられないのは「ニコチン依存症」のためで,その依存に陥る強さはヘロインやコカインより上なのです。さらに難しいのはこの「ニコチン依存症」は「身体的依存」,「習慣依存」と「心理的依存」が合わさって形成されているからです。

2020年4月から「改正健康増進法」が全面施行された

 この法律が施行されるに至った最もな要因は東京オリンピックです。国際オリンピック委員会IOCと世界保健機関WHOとの協定で「オリンピックが開催される国はたばこ対策をとらなければならない」とされています。それまでの日本は「世界最低レベル」と烙印を押されていました。法律はできましたが,世界から見てまだまだ低いレベルです。

「新型たばこ」に騙されてはいけない

 新型たばこには「非燃焼・加熱式たばこ」と「電子タバコ」に大きく分けられます。前者にはiQOSやPloom TECHなどそれに属します。たばこの葉を加熱して蒸したり,葉の粉末を有機溶剤に溶かしたりして吸引する仕組みです。iQOSの世界消費量の大多数を日本が占めていることも知っておくべきです。後者はカートリッジの液体を吸引するシステムです。いずれにしても日本呼吸器学会など内外の多くの学会から「新型たばこ」の危険性について警告が出されています。

喫煙は新型コロナウイルス感染リスクを高め,肺炎重症化の最大リスクでもある

 WHOや世界中の学会や保健機関から喫煙が新型コロナウイルス感染に対して危険性があることが報告されています。この報告があって卒煙を希望する方が増えており,コロナウイルスが「たばこの危険性」を知らしめてくれたのかもしれません。

最後に,

 「Be Well」4ページに「たばこの知識」をてんこ盛りに入れ込みました。日常診療で禁煙指導が必要になった時には「知っておきたいたばこの真実」を利用していただければ幸いです。患者さんに関心のありそうな箇所を説明すればきっと会話が弾むでしょう。

2020年11月1日号TOP