2020年11月1日号
この度,化学物質取扱業務従事者に係る特殊健康診断の項目が見直されたことを受け,京都労働局より周知がありましたので,ご案内します。
労働安全衛生法および関係法令に基づき,事業者には,一定の有害業務に従事する労働者に対し,特殊健康診断を行うことが義務付けられています。
特定化学物質障害予防規則,有機溶剤中毒予防規則等が制定されてから40年以上が経過し,その間,医学的知見の進歩,化学物質の使用状況の変化,労働災害の発生状況など,化学物質による健康障害に関する事情が変化しています。
このため,今回,国内外の研究文献等の医学的知見に基づき,化学物質取扱業務従事者に係る特殊健康診断の項目が全面的に見直されました。
それぞれの物質について,健康診断を適切に実施いただくようお願いします。
●化学物質ごとの詳細については,京都労働局のホームページをご参照ください。
「化学物質取扱業務従事者に係る特殊健康診断の見直しについて」
https://jsite.mhlw.go.jp/kyoto-roudoukyoku/content/contents/000665998.pdf
尿路系に腫瘍のできる化学物質(11物質)について,同様の障害を引き起こすとされ,最新の医学的知見を踏まえて設定されたオルトートルイジンの項目と整合させました。
対象物質:ベンジジン及びその塩,ベーターナフチルアミン及びその塩,4-アミノジフェニル及びその塩,4-ニトロジフェニル及びその塩,ジクロルベンジジン及びその塩,アルファーナフチルアミン及びその塩,オルトートリジン及びその塩,ジアニシジン及びその塩,オーラミン,パラージメチルアミノアゾベンゼン,マゼンタ
特別有機溶剤(9物質)について,発がんリスクや物質の特性に応じて,項目を見直しました。
対象物質:トリクロロエチレン,四塩化炭素,1,2-ジクロロエタン,テトラクロロエチレン,スチレン,クロロホルム,1,4-ジオキサン,1,1,2,2-テトラクロロエタン,メチルイソブチルケトン
新たに得られたヒトに対して肺がんを引き起こす可能性があるという知見への対応や,腎機能障害の早期発見のため,項目を見直しました。
オーラミン等11物質については,職業ばく露による肝機能障害リスクの報告がないことから,「尿中ウロビリノーゲン検査」等の肝機能検査を必須項目から外しました。
対象物質:オーラミン,シアン化カリウム,シアン化水素,シアン化ナトリウム,弗化水素,硫酸ジメチル,塩素化ビフェニル等,オルトーフタロジニトリル,ニトログリコール,パラーニトロクロルベンゼン,ペンタクロルフェノール(別名PCP)又はそのナトリウム塩
※下線は,二次健康診断において医師判断で肝機能検査を実施する物質
近年,臨床の現場で全血比重検査があまり使われていないため,赤血球系の血液検査の例示から,全血比重検査を削除しました。(6物質)
対象物質:ニトログリコール,ベンゼン等,塩素化ビフェニル等,オルトーフタロジニトリル,パラーニトロクロルベンゼン,弗化水素
有機溶剤について,医師が必要と認めた場合に「腎機能検査」を実施できることとなっていること,また,必須項目の中に他に労働者の有機溶剤ばく露状況等を確認できる項目があり,健康障害のスクリーニングが可能であることから,必須項目から「尿中の蛋白の有無の検査」を外しました。
最新の医学的知見や取扱量の減少等を踏まえ,鉛と同様,長期的なばく露による健康障害の予防とすることとし,鉛則の項目と整合させ,実施時期を「3月以内ごとに1回」から「6月以内ごとに1回」を見直しました。
労働者の化学物質へのばく露状況を確認するため,必須項目に「作業条件の簡易な調査」を追加しました。
「1.尿路系に腫瘍のできる化学物質の特殊健診項目の見直し」の11物質のうち,健康管理手帳制度の対象であるベンジジン等3物質について,健康管理手帳制度における健診項目もオルトートルイジンの項目と整合させました。
対象物質:ベンジジン及びその塩,ベーターナフチルアミン及びその塩,ジアニシジン及びその塩
(※)「健康管理手帳」について
がんその他の重度の健康障害を生ずるおそれのある業務に従事していた労働者に,国が健康管理手帳を交付して,無償で健康診断を受けられるようにする制度。
Q1.今回の改正で新たに追加された「作業条件の簡易な調査」とは,どのような調査ですか?
A1.労働者のばく露状況の概要を確認するため,以下の項目等について,医師が当該労働者から聴取することにより調査をするものです。この調査の問診票については,次ページの「作業条件の簡易な調査における問診票(例)」を参考にしてください。
①前回の特殊健康診断以降の作業条件の変化
②環境中の当該物質の濃度に関する情報*1
③作業時間
④ばく露の頻度
⑤当該物質の蒸気の発散源からの距離
⑥保護具の使用状況
⑦(経皮吸収されやすい化学物質について)皮膚接触の有無*2
*1:当該労働者から聴取する方法のほか,衛生管理者等から作業環境測定の結果等を,あらかじめ聴取する方法があります。
*2:皮膚への付着が常態化している状況や,保護具を着用していない皮膚に固体,液体又は高濃度の気体の状態で接触している状況等がある場合に,過剰なばく露をしているおそれがあるため,必ず皮膚接触の有無を確認してください。
Q2.「作業条件の調査」とは,どのような調査ですか?
A2.労働者のばく露状況の詳細を確認するため,当該労働者のほか,衛生管理者や作業主任者をはじめとした関係者から聴取することにより,調査をするものです。
Q3.「医師が必要と認める場合」に実施する検査項目について,実施の必要性をどのように判断するのですか?
A3.健康診断の必須項目の結果や,前回までの当該物質の健康診断の結果などを踏まえて,医師が判断します。この場合の「医師」は,主に,健康診断を実施する医師,事業場において選任されている産業医,産業医の選任義務のない労働者数50人未満の事業場においては健康管理を行う医師等となります。
条文の参照は,「厚生労働省法令等データベースサービス」で検索
https://www.mhlw.go.jp/hourei/index.html
お問い合わせ先 京都労働局 健康安全課 075-241-3216