保険医療部通信(第406報)– 政府が骨太の方針2025を閣議決定 社会保障関係費は高齢化による伸びに「物価・賃金対応分」を加算歳出改革による目安対応から「足し算」の論理へ大きく前進

 政府は6月13日,「経済財政運営と改革の基本方針2025」(いわゆる骨太の方針)と「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025改訂版」,「規制改革実施計画」をあわせて閣議決定した。
 骨太の方針で焦点となっていた社会保障関係費に関する記載は,「高齢化による増加分に相当する伸び」に,「経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と本文中に明記された。この記載は原案の段階では注釈だったものの,全面的に本文に移行し,歳出改革努力の継続を前提とした記載も修正された。これまで歳出改革によって高齢化相当分に抑える方針が継続されてきたが,今回は経済・物価対応分が別枠で確保されたことから,「目安対応」から大きく前進した。
 また,個別分野に関しては,OTC類似薬の保険給付のあり方の見直しや,現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底など社会保障改革に関する3党合意(自民・公明・維新)の項目が書き込まれたことから,今後も継続して行われる3党協議の内容を注視していかなければならない。
 閣議決定を受けて,松本日医会長は,医療機関の経営危機や,物価高騰,賃金上昇対応について,歳出改革の中での「引き算」ではなく,物価・賃金対応分を「加算する」という「足し算」の論理となったことが非常に重要なポイントであり,年末の予算編成における診療報酬改定に期待できる書きぶりになっていると評価した。また,骨太の方針に「次期報酬改定を始めとした必要な対応策において,2025年春季労使交渉における力強い賃上げの実現や昨今の物価上昇による影響等について,経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう,的確な対応を行う」と記載され,注釈に2025年春季労使交渉の平均賃上げ率5.26%等の数字が明記されたことを挙げ,この数字が次期診療報酬改定において念頭に置かれるとの認識を示した。さらに,医療・介護界が他産業の賃上げに追いつくためにも,公定価格である診療報酬で手当てすることが基本で,しっかりとした対応を求めていくことを強調した。
 府医では,物価高騰や人件費の上昇により多くの医療機関が非常に厳しい経営状況にあることから診療報酬全体の底上げの必要性を主張しており,今回,公定価格の分野の賃上げや経営の安定などを図るために「コストカット型からの転換を明確に図る」と記載されたことは,診療報酬点数の引上げにつながるものと評価している。一方で,6月15日に開催した代議員会の決議でも指摘したとおり,予算編成全体においては歳出改革努力を継続するとの文言が残されており,財務省の財政制度等審議会が5月末に取りまとめた「春の建議」でも具体的な診療報酬点数に言及するなど看過できない提案がされている(6月15日号本誌参照)。次期診療報酬改定に向けて,秋から年末にかけても予断を許さない状況が続くため,日医をはじめとする医療界が一丸となって政府・与党に働きかけていくことが何より重要と認識している。

 経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太の方針)と新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025改訂版,規制改革実施計画の概要は下記のとおり。

◇ 経済財政運営と改革の基本方針2025
 ~「今日より明日はよくなる」と実感できる社会へ~(抜粋)

第3章 中長期的に持続可能な経済社会の実現

1.「経済・財政新生計画」の推進
(「経済・財政新生計画」に基づく今後の取組方針)
 経済あっての財政との考え方の下,財政健全化目標によって,米国の関税措置への対応や物価高への的確な対応も含め,状況に応じたマクロ経済政策の選択肢が歪められてはならない。必要な政策対応を行うことと財政健全化目標に取り組むことを矛盾しないものにしていく。経済を成長させ,そして財政健全化に向けて取り組んでいく。こうした取組を通じて,金利が上昇する局面において,大災害や有事に十分に対応する財政余力を確保し,将来の経済・財政・社会保障の持続可能性を確保していく。
 そうした中,金利のある世界において,我が国の経済財政に対する市場からの信認を確実なものとするため,財政健全化の「旗」を下ろさず,長期を見据えた一貫性のある経済財政政策の方向性を明確に示すことが重要である。このため,2025年度から2026年度を通じて,可能な限り早期の国・地方を合わせたPB黒字化を目指す。ただし,米国の関税措置の影響は不透明であり,その経済財政への影響の検証を行い,的確に対応すべきであり,必要に応じ,目標年度の再確認を行う。その上で,「経済・財政新生計画」の期間を通じて,その取組の進捗・成果を後戻りさせることなく,PBの一定の黒字幅を確保しつつ,債務残高対GDP比を,まずはコロナ禍前の水準に向けて安定的に引き下げることを目指し,経済再生と財政健全化を両立させる歩みを更に前進させる。
 予算編成においては,2027年度までの間,骨太方針2024で示された歳出改革努力を継続しつつ,日本経済が新たなステージに移行しつつあることが明確になる中で,経済・物価動向等を踏まえ,各年度の予算編成において適切に反映する。とりわけ社会保障関係費204については,医療・介護等の現場の厳しい現状や税収等を含めた財政の状況を踏まえ,これまでの改革を通じた保険料負担の抑制努力も継続しつつ,2025年春季労使交渉における力強い賃上げの実現や昨今の物価上昇による影響等について,経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう,的確な対応を行う。具体的には,高齢化による増加分に相当する伸びにこうした経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する。非社会保障関係費205及び地方財政についても,第3章第4節「物価上昇に合わせた公的制度の点検・見直し」も踏まえ,経済・物価動向等を適切に反映する。
 今後も,状況に応じて必要な政策対応を行っていくことに変わりはないが,PBの黒字化を達成した後,黒字幅が一定水準を超えた場合には,経済成長等に資するような政策の拡充を通じて経済社会に還元することをあらかじめルール化することについても検討に着手していく。


204 社会保障関係費の伸びの要因として高齢化と高度化等が存在する。

205 令和7年度予算の非社会保障関係費は,近年の物価上昇率の変化を反映した令和6年度予算の増(+1,600億円程度)と同水準を維持しつつ,公務員人件費の増により実質的に目減りしないよう,相当額(+1,400億円程度)を上乗せし,+3,000億円程度とした。

2.主要分野ごとの重要課題と取組方針
(1)全世代型社会保障の構築
 本格的な少子高齢化・人口減少が進む中,技術革新を促進し,中長期的な社会の構造変化に耐え得る強靱で持続可能な社会保障制度を確立する。このため,「経済・財政新生計画」に基づき,持続可能な社会保障制度を構築するための改革を継続し,国民皆保険・皆年金を将来にわたって維持し,次世代に継承することが必要である。
 医療・介護・障害福祉等の公定価格の分野の賃上げ,経営の安定,離職防止,人材確保がしっかり図られるよう,コストカット型からの転換を明確に図る必要がある。このため,これまでの歳出改革を通じた保険料負担の抑制努力も継続しつつ,次期報酬改定を始めとした必要な対応策において,2025年春季労使交渉における力強い賃上げ207の実現や昨今の物価上昇による影響等について,経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう,的確な対応を行う。
 このため,2024年度診療報酬改定による処遇改善・経営状況等の実態を把握・検証し,2025年末までに結論が得られるよう検討する。また,介護・障害福祉分野の職員の他職種と遜色のない処遇改善や業務負担軽減等の実現に取り組むとともに,これまでの処遇改善等の実態を把握・検証し,2025年末までに結論が得られるよう検討する。また,事業者の経営形態やサービス内容に応じた効果的な対応を検討する。
 持続可能な社会保障制度のための改革を実行し,現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減を実現するため,OTC類似薬の保険給付の在り方の見直し208や,地域フォーミュラリの全国展開209,新たな地域医療構想に向けた病床削減210,医療DXを通じた効率的で質の高い医療の実現,現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底211,がんを含む生活習慣病の重症化予防とデータヘルスの推進などの改革について212,引き続き行われる社会保障改革に関する議論の状況も踏まえ,2025年末までの予算編成過程で十分な検討を行い,早期に実現が可能なものについて,2026年度から実行する。

(中長期的な時間軸を見据えた全世代型社会保障の構築)

 現役世代が急速に減少し,高齢者数がピークを迎える2040年頃を見据えた中長期的な時間軸も視野に入れ,現役世代の負担を軽減しつつ,年齢に関わりなく,能力に応じて負担し,個性を活かして支え合う「全世代型社会保障」の構築が不可欠である。改革工程213を踏まえ,医療・介護DXやICT,介護テクノロジー,ロボット・デジタルの実装やデータの二次利用の促進,特定行為研修を修了した看護師の活用,タスクシフト/シェアなど,医療・介護・障害福祉分野の生産性向上・省力化を実現し,職員の負担軽減や資質向上につなげるとともに,地域医療連携推進法人,社会福祉連携推進法人の活用や小規模事業者のネットワーク構築による経営の協働化・大規模化や障害福祉サービスの地域差の是正を進める。医療機関,介護施設,障害福祉サービス等事業者の経営情報の更なる見える化214を進める。医療・介護・障害福祉分野の不適切な人材紹介の問題について実効性ある対策を講ずる。
 現役世代の消費活性化による成長と分配の好循環を実現するため,各種データ分析・研究を始めEBPMによるワイズスペンディングを徹底し,保険料負担の上昇を抑制するとともに,全世代型社会保障の将来的な姿を若者も含め国民に分かりやすく情報提供する。


207 日本労働組合総連合会の集計によれば,現時点(第6回集計)で定期昇給を含む平均賃上げ率は5.26%(うちベースアップ分のみで3.71%),組合員数300人未満の組合の平均賃上げ率は4.70%(うちベースアップ分のみで3.51%)となっている。

208 医療機関における必要な受診を確保し,こどもや慢性疾患を抱えている方,低所得の方の患者負担などに配慮しつつ,個別品目に関する対応について適正使用の取組の検討や,セルフメディケーション推進の観点からの更なる医薬品・検査薬のスイッチOTC化に向けた実効的な方策の検討を含む。

209 普及推進策を検討し,各地域において地域フォーミュラリが策定されるよう取組を推進する。

210 人口減少等により不要となると推定される一般病床・療養病床・精神病床といった病床について,地域の実情を踏まえた調査を行った上で,2年後の新たな地域医療構想に向けて,不可逆的な措置を講じつつ,調査を踏まえて次の地域医療構想までに削減を図る。

211 医療・介護保険における負担への金融所得の反映に向けて,税制における金融所得に係る法定調書の現状も踏まえつつ,マイナンバーの記載や情報提出のオンライン化等の課題,負担の公平性,関係者の事務負担等に留意しながら,具体的な制度設計を進める。

212 詳細については,「自由民主党,公明党,日本維新の会合意」(令和7年6月11日自由民主党・公明党・日本維新の会)を参照。

213 「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」(令和5年12月22日閣議決定)。

214 経営情報の提出,分析及び公表の電子化を含む。

(中長期的な医療提供体制の確保等)

 2040年頃を見据え,医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大や現役世代の減少に対応できるよう,コロナ後の受診行動の変化も踏まえ,質が高く効率的な医療提供体制を全国で確保する。このため,医療需要の変化を踏まえた病床数の適正化を進めつつ,かかりつけ医機能の発揮される制度整備,医療の機能分化・連携や医療・介護連携,救急医療体制の確保,必要な資機材の更新を含むドクターヘリの安全かつ持続可能な運航体制の確保,大学病院・中核病院に対する支援を通じた医師派遣の充実,臨床実習に専念できる環境の整備,適切なオンライン診療の推進,減少傾向にある外科医師の支援,都道府県のガバナンス強化等を進める。
 地域医療構想については,地域での協議を円滑に進めるため,医療機関機能・病床機能の明確化,国・都道府県・市町村の役割分担など,2025年度中に国がガイドラインを策定し,各都道府県での2026年度以降の新たな地域医療構想の策定を支援する。
 医師の地域間・診療科間の偏在への対応については,経済的インセンティブや規制的な手法といった地域の医療機関の支え合いの仕組みを含めた総合的な対策のパッケージを順次実施し,その効果を検証する。
 こうした医師の適正配置のための支援の在り方について,全国的なマッチング機能やリカレント教育,医学教育を含めた総合的な診療能力を有する医師の育成,医師養成過程の取組と併せて,2025年末までに検討を行う。地域の医師確保への影響にも配慮し,医師偏在是正の取組を進め,医師需給や人口減少等の中長期的な視点に立ち,2027年度以降の医学部定員の適正化を進める。また,偏在対策を含む看護職員の確保・養成や訪問看護におけるICT活用を含む看護現場におけるDXの推進,在宅サービスの多機能化といった在宅医療介護の推進に取り組む。
 医療保険制度について,給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制216を図りつつ,給付と負担の見直し等の総合的な検討を進める。高額療養費制度について,長期療養患者等の関係者の意見を丁寧に聴いた上で,2025年秋までに方針を検討し,決定する。
 妊娠・出産・産後の経済的負担の軽減のため,2026年度を目途に標準的な出産費用の自己負担の無償化に向けた対応を進める。妊婦健診における公費負担を促進する。「出産なび」の機能を拡充するほか,小児周産期医療について,地域でこどもを安心して生み育てることができるよう,最先端の医療を含めた小児周産期医療体制の確保を図るため,産科・小児科医療機関を取り巻く厳しい経営環境を踏まえ,医療機関の連携・集約化・重点化を含めた必要な支援を行う。安全で質の高い無痛分娩を選択できる環境を整備する。
 リフィル処方箋の普及・定着や多剤重複投薬や重複検査の適正化を進めるとともに,保険外併用療養費制度の対象範囲の拡大や保険外診療部分を広くカバーし,公的保険を補完する民間保険の開発を促す。国民健康保険の都道府県保険料水準の統一に加え,保険者機能や都道府県のガバナンスの強化を進めるための財政支援の在り方について検討217を行う。

(がん,循環器病等の疾患に応じた対策等)
 がん対策220,循環器病対策221,慢性腎臓病対策222,慢性閉塞性肺疾患(COPD),慢性疼痛等の疾患に応じた対策,難病対策,移植医療対策223,アレルギー対策224,依存症対策,難聴対策,栄養対策,受動喫煙対策,科学的根拠等に基づく予防接種の促進を始めとした肺炎等の感染症対策225,更年期障害や骨粗しょう症など総合的な女性の健康支援226を推進する。運送業での睡眠時無呼吸対策,睡眠障害の医療アクセス向上と睡眠研究の推進,睡眠ガイド等の普及啓発,健康経営の普及,睡眠関連の市場拡大や企業支援に一層取り組む。
 糖尿病と歯周病との関係など全身の健康と口腔の健康に関するエビデンスの活用,生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に向けた具体的な取組,オーラルフレイル対策・疾病の重症化予防につながる歯科専門職による口腔健康管理の充実,歯科医療機関・医歯薬連携などの多職種連携,歯科衛生士・歯科技工士の離職対策を含む人材確保,歯科技工所の質の担保,歯科領域のICT活用,歯科医師の不足する地域の分析等を含めた適切な配置の検討を含む歯科保健医療提供体制構築の推進・強化に取り組むとともに,有効性・安全性が認められたデジタル化等の新技術・新材料の保険導入を推進する。また,自立支援・在宅復帰・社会復帰に向けたリハビリテーションの推進に取り組む。


216 後期高齢者支援金を含む。

217 調整交付金や保険者努力支援制度その他の財政支援の在り方,現在広域連合による事務処理が行われている後期高齢者医療制度の在り方,生活保護受給者の医療扶助の在り方の検討。

220 「がん対策推進基本計画」(令和5年3月28日閣議決定)に基づく取組。

221 「循環器病対策推進基本計画」(令和5年3月28日閣議決定)に基づく取組。基盤整備及び研究推進や,後遺症支援を含む。

222 腎不全患者の緩和ケアを含む。

223 イスタンブール宣言を踏まえた国内の臓器提供,臓器あっせんや移植実施の抜本的な体制整備を含む。

224 アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎等を含む。)医療の均てん化促進等を含む。

225 小児の感染症を含む。

226 科学的知見に基づき女性の負担にも配慮した乳がん検診の推進などがん検診の受診率の向上に向けた取組を含む。

(予防・健康づくり,重症化予防)
 世界最高水準の健康寿命を誇る我が国の高齢者は,労働参加率や医療費でみても若返っており,こうした前向きな変化を踏まえ,更に健康寿命を延伸し,Well-beingの向上を図り,性別や年齢に関わらず生涯活躍できる社会を実現する。データヘルス計画に基づく保険者と事業主の連携した取組(コラボヘルス)や保険者の保健事業でのICTを活用したエビデンスに基づくPHRや健康経営と共働した効果的な取組を支援するほか,働き盛り世代の職域でのがん検診を広く普及するため,受診率や精度管理の向上の取組を更に推進する。AMEDのプライマリヘルスケア・プラットフォーム等を通じた支援により,エビデンスに基づくヘルスケアサービスを普及する。糖尿病性腎症の重症化予防等の大規模実証事業を踏まえたプログラムの活用を進める。高齢者の社会参加促進や要介護認定率の低下に向け,データを活用したエビデンスに基づく取組として,地域の多様な主体の連携協力や,成果指向型の取組等による効果的な介護予防やリハビリテーションを充実する。

(創薬力の強化とイノベーションの推進)
 政府全体の司令塔機能の強化を図りつつ,医薬品業界の構造改革を進めるとともに,「健康・医療戦略」227に基づき,創薬エコシステムの発展やヘルスケア市場の拡大,創薬力の基盤強化に向け,一体的に政策を実現する。新規ファースト・イン・ヒューマン試験実施施設など,国際水準の治験・臨床試験実施体制を整備する。MEDISO228・CARISO229の体制を強化し,ヘルスケアスタートアップを強力に支援するほか,革新的医薬品等実用化支援基金の対象を拡充することを検討し,創薬シーズの実用化を支援する。国民負担の軽減と創薬イノベーションを両立する薬価上の適切な評価230の実施,承認審査・相談体制の強化,バイオ医薬品を含む医薬品の製造体制の整備や人材育成・確保により,国際水準の研究開発環境を実現し,ドラッグラグ/ロスの解消やプログラム医療機器への対応を進めるほか,PMDAの海外拠点を活用し,薬事相談・規制調和を推進する。大学,ナショナルセンターと医療機関が連携して担う実証基盤を整備するなど産業振興拠点機能及び開発後期や海外展開に向けた研究開発支援を強化し,治療機器やプログラム医療機器を始めとした日本発の医療機器の創出を促進する。
 医薬品の安定供給に向け,抗菌薬等のサプライチェーンの強靱化や取り巻く環境の変化を踏まえた持続可能な流通の仕組みの検討を図るとともに,感染症の流行による需要の急激な増加といったリスクへの対策を講じ,基礎的な医薬品等231の足元の供給不安に対応する。さらに,少量多品目構造解消に向けた後発医薬品業界の再編を推進するほか,バイオシミラーについて,国内生産体制の整備及び製造人材の育成・確保を着実に進め,使用を促進する。当初の医師の診断や処方に基づき症状の安定している患者が定期的に服用する医薬品や,低侵襲性検体である穿刺血を用いる検査薬を含む医薬品・検査薬の更なるスイッチOTC化など,具体的な工程表を策定した上でセルフケア・セルフメディケーションを推進しつつ,薬剤自己負担の見直しを検討する。全ゲノム解析を推進し,2025年度の事業実施組織の設立,ゲノム情報基盤の整備や解析結果の利活用を進める。iPS細胞を活用した創薬や再生・細胞医療・遺伝子治療の研究開発を推進するほか,新規抗菌薬開発に関する市場インセンティブなどにより薬剤耐性菌の治療薬を確実に確保するとともに,ワクチン・診断薬・治療薬など感染症危機対応医薬品等の開発戦略の策定・研究開発を推進する。イノベーションの推進や現役世代の保険料負担への配慮の観点から,費用対効果評価制度について,客観的な検証を踏まえつつ,更なる活用に向け,適切な評価手法,対象範囲や実施体制の検討と併せ,薬価制度上の活用や診療上の活用等の方策を検討する。標準的な薬物治療の確立に向け,休薬・減薬を含む効果的・効率的な治療に関する調査研究を進め,診療ガイドラインに反映していく。医薬品の適正使用や後発医薬品の使用促進のみならず,医療費適正化の観点から,地域フォーミュラリを普及する。小中学生から献血に対する理解を深めるとともに,輸血用血液製剤及びグロブリン製剤,フィブリノゲン製剤等血しょう分画製剤の国内自給,安定確保,適正使用を推進する。アクションプラン232に基づく医療用等ラジオアイソトープの国産化及び利用促進に必要な体制整備等の取組を進める。


227 令和7年2月18日閣議決定。

228 医療系ベンチャー・トータルサポート事業(MEDical Innovation Support Office)。

229 介護分野におけるMEDISOと同様の相談窓口(CARe Innovation Support Office)。

230 2024・2025年度薬価改定において新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象となる革新的新薬について薬価を基本的に維持したことを念頭に置いた革新的新薬の特許期間中の対応に関する創薬イノベーション推進の観点からの検討等。

231 日本薬局方収載医薬品の一部を含む。

232 「医療用等ラジオアイソトープ製造・利用推進アクションプラン」(令和4年5月31日原子力委員会決定)。

4.物価上昇に合わせた公的制度の点検・見直し
 賃上げや投資が増加し,コストカット型経済からの脱却が見えてきた今,政府自身が,物価上昇を上回る賃金上昇の実現に向けて率先すべく,以下の3つの取組を総合的に実行する。その際には,労働の価値,平素からの備えの価値を正しく評価し,価格に表すことの重要性を軸に据えて取組を進める。
 物価上昇が継続していることを踏まえ,予算,税制における長年据え置かれたままの様々な公的制度に係る基準額や閾値について,国民生活へ深刻な影響が及ばないよう,省庁横断的・網羅的に点検し,見直しを進める269。その際,各項目の点検と併せ,政策効果を担保するため,制度の特性に応じた定期的な改定ルールを設け,足元の物価上昇に的確に対応できるような仕組みづくりを行う。
 同時に,本基本方針第2章及び第3章に記載している,
・公定価格(医療・介護・保育・福祉等)の引上げ
・働き手の賃上げ原資を確保できる官公需における価格転嫁の徹底
を省庁横断的に推進する。


269 長年据え置かれてきた公的制度の基準額や閾値の例として,交通遺児育成給付金,子どもの学習・生活支援事業(生活困窮者自立支援制度),食事支給に係る所得税非課税限度額,マイカー通勤に係る通勤手当の所得税非課税限度額が存在し,これらについては速やかに見直しを行う。

◇規制改革実施計画(医療抜粋)
(3) 健康· 医療· 介護

2025年7月15日号TOP