2025年7月15日号
京都府医師婦人会庶務 俵 里実
30 年近く前のこと,某化粧品メーカーのCM で「美しい50 歳がふえると,日本は変わると思う。」というキャッチコピーが打ち出され,話題になりました。その当時と現在とでは年齢の感覚は異なりますが,美しく年齢を重ねたいと願う人の心は変わるものではありません。
標題のタイトルを掲げた京都府医師婦人会主催の講演会が,令和7年6月12 日京都ガーデンパレスで開催されました。講師は,今年で活動70 周年を迎える同会の新屋明美会長。皮膚科医としての活躍のみならず,地区医師会長など,地域医療にも熱心に取組む医師でありながら,キリマンジャロをはじめ世界の山々に挑み,マラソンも笑顔で難なく完走するアウトドア女性。その上,陽の光を存分に浴びているにも関わらず,その肌が美しいのはなぜ……。その「秘訣」を探るべく,興味津々の88 名が会場に集いました。
講演の内容は,老化の概念と考え方,美しさと健康との関連性などについて,皮膚科医の立場でのご解説に交え,ご自身の山の体験やマラソン,ご家族との関係にも触れつつお話しくださるというもの。世間に,アンチエイジングを話題にした記事や講演は多数あれど,この日の講演は,まさに世界に一つでしょう。
見た目の若々しさや健康寿命が,生物学的年齢と深く関わり,しかも遺伝的要素より環境因子の影響が大きいということは,われわれに希望を与えてくれる光です。
また,皮膚や容貌,体型の衰えなどは紫外線や喫煙などと関わる外因性老化であるため,生活習慣や日常生活の心がけで防ぐことができる,そんな事実も人々を前向きにしてくれるものですが,新屋会長の講演は,以上の医学的情報について,経験談を紹介しつつ,わかりやすく教えてくださるものでした。
山や旅先で出会う人々との会話,心が震えるような景色,地図を読む力,計画を遂行する体力,そして好奇心。このような要素が,楽しく,かつ美しく歳を重ねる「秘訣」であると聴衆は気付かされます。つまり,会長の人生そのものがスマートエイジングを実証している!
美容医学についても触れられました。肌の若々しさ,姿の美しさがシニアの幸福感を高めることは明らかであると。
筆者は,上記のCM を想起しました。30年前のコピーは,儚い願望ではなく真実だったのだ,美しく歳を重ねるシニアが増えるなら,社会さえ変わり得るのかも。
シャモニーやエベレストベースキャンプ,ドロミテ……。紹介された沢山の写真にも見入りましたが,ほとんどのお写真には,新屋会長の傍で,夫の久幸医師がにこやかに寄り添っておられます。幸せのエビデンス,これに勝るものはないと感じ入る次第。スマートエイジングのもう一つの極意も教えていただいた講演会でした。