2020年11月15日号
綾部医師会と府医執行部との懇談会が9月12日(土),Webで開催され,綾部医師会から8名,府医から8名が出席。「コロナ禍での開業医の対応について」をテーマに活発な議論が行われた。
新型コロナウイルス感染症における医療機関の対応については,症状の有無によらず予約外の患者については,事前に電話してから受診するよう周知することを原則とする。これはおそらくインフルエンザ流行期にも有効である。
また,院内における感染防止のための設備と対策については,受付のカウンター上に待合室と仕切る透明ビニールを垂らすかアクリルのパーティションを置く,換気を徹底する,患者が触れやすいドアノブ・便座・流しハンドルなどは定期的に清拭する等,対応に取組むことが有効である。
コロナが疑わしい患者への対応については,付き添い家族等に対する検温を実施し,疑わしい患者は,テントや車両等,可能な限り隔離した上で診療を実施することが望ましい。しかし,十分な隔離設備を有する診療所は少ないため,患者の車内での検査や一般患者と時間を分ける等の工夫が必要である。また,隔離が難しい場合は,他の医療機関へ受入れを要請する必要があるため,各地区で受け入れ体制について協議する必要がある。
患者に咳嗽等呼吸器症状を認めるときは,医療従事者はサージカルマスクとアイゴーグルを着用し,本人にもマスクを着用させる。患者が着用するマスクは,布マスクでも,周囲に拡散させる飛沫の量と距離を大幅に減らすことが期待できる。
なお,新型コロナウイルス感染症外来診療ガイドには,キャップの装着は必須ではないと記載されているが,女性看護師は髪を触る機会が多く,感染原因になりやすいため,女性看護師にはキャップの装着も望ましい。
最後に,環境消毒方法について,環境消毒を行うスタッフは,グローブ・サージカルマスク・ガウン・アイゴーグルを着用する。特にグローブとサージカルマスクは必須である。
消毒については,アルコール,界面活性剤のある石鹸で不活化できる。なお,0.05%以上の濃度がある次亜塩素酸ナトリウム水溶液でも代用できるが,金属への腐食や脱色があり,少し使いにくい。近年,北里大学による研究結果によれば,次亜塩素酸ナトリウムで消毒するためには,大量に散布した後,しばらく放置してから拭き取らなければ効果がないため,現実的ではない。
◇ インフルエンザなどの検査のため検体を採取する際に,新型コロナウイルスに感染する可能性があるため,検査をせずに臨床診断によって治療薬を処方するよう求める日医からの通知についてインフルエンザも検査して除外しなければ,判断で困ることがあるため,鼻咽頭のぬぐい液による検査が必要ではないかとの質問が出された。
日医の通知が出された時期は,コロナ流行期で医療物資が不足していたため,今後は対応を変える必要性も考えられる。
また,実際にインフルエンザの検査を行う際,通常,スワブで鼻咽頭のぬぐい液を採取することが多い。迅速診断キットの種類にもよるが,添付文書には,鼻腔ぬぐい液,鼻咽頭ぬぐい液,鼻かみ液,鼻汁採取液の4種類による検査ができるとの記載がある。このことから,多少はエアロゾルが発生しにくく,横からスワブで鼻腔ぬぐい液を採取すれば,感染のリスクが抑えられる。
さらに,鼻腔での採取の場合,サージカルマスクと手袋,目の保護があれば十分に感染を防止できるとの日本感染症学会の見解を示している。
なお,現在,新型コロナウイルスとインフルエンザを同時に検査できるキットが実用に向けて検討が進められており,同キットは同一の容器でインフルエンザも検出できるため,今後,期待できるといえる。
また,次のインフルエンザ流行に備えた体制整備が進められている。コロナの場合は帰国者・接触者相談センターで発熱した患者が相談して検査を受けることが全国的な仕組みだったが,かかりつけ医で診察する体制に変更するよう厚労省から通知があったため,京都でも取り急ぎ,10月中旬から対応できるよう動き出している。
現状に応じてコロナとインフルエンザの両方に対応する必要があるため,府医としても地域ごとに対応できるよう情報提供に努めていく。
◇ 医師自身が発熱した場合の対応について質問が出された。
休業してコロナのPCR検査を実施する。万が一,陽性だった場合は,濃厚接触者の疑いがある従業員も含めて管轄保健所に報告する。