新型コロナウイルス感染症対応下での医業経営状況等アンケート調査

実施期間: 令和2年9月15日(火)~10月22日(木)
方  法: FAX,メールによる回答(無記名)
対  象: 1,606医療機関
       病 院=164件(全病院)
       診療所=1,442件
           ・郵送(無作為抽出)390件
           ・会員ML,FAX情報 1,052件(登録医療機関)

回  答: 491件(回収率:30.6%)
       病 院=111件(67.7%)
       診療所=380件(26.4%)

◇回答項目(基本情報)
 ①所属地区医師会名
 ②医療機関種別(一般病院,精神科病院,有床診療所,無床診療所)
 ③感染症指定医療機関(第一種・第二種),
  新型コロナウイルス感染症PCR検査実施医療機関の該当の有無
 ④主な診療科(診療所のみ,1つだけ回答)

 日医をはじめ,多くの団体が実施した調査により,今般の新型コロナウイルス感染症の影響による医療機関の厳しい経営状況が浮き彫りになっているところですが,府医では,京都府内における実際の状況を把握し,今後の必要な支援を求めていくための基礎資料とすべく,9月から10月にかけて標記のアンケート調査を行いました。
 今回のアンケートは,府内の全164病院と無作為抽出した390診療所あてに調査票を郵送した後,より多くの医療機関の状況を把握すべく,会員メーリングリストおよびFAX情報により登録医療機関あてに調査票を送信し,FAX,メール,郵送等による無記名回答にて実施しました。
 アンケートの集計結果を以下に報告します。多くの医療機関にご協力をいただき,改めまして厚く御礼申し上げます。

◆4月から7月診療分について,診療報酬(社保・国保・後期高齢者のレセプト点数)の昨年同時期との比較では,いずれの月も診療所において85%以上,病院では70%以上が「減額した」と回答。特に5月は,「減額した」との回答が診療所で94.1%,病院で87.4%と極めて深刻な状況が伺えた。5月をピークに,6月から7月にかけて徐々に回復傾向が見られたが,依然として診療所で85.5%,病院で73.0%(7月)が「減額」の回答であった。

◆「減額した主な理由」では,診療所,病院とも「患者の受診控え」が最も多く,「減額した」と回答した医療機関の90%以上がその要因として挙げた。
 その他の理由として,診療所では「長期処方の増加による再診の減少」,「医学管理料算定の減少」のほか,「各種処置・リハビリテーション等の制限・中断」等が挙がった。病院では,「新型コロナウイルス感染症患者入院のための空床確保」や,「救急の受入れ制限」,「外来診療の縮小」等が理由として挙げられた。
 また,手洗い・手指消毒・マスク着用・ソーシャルディスタンス等の感染症対策の励行,休園・休校・通勤制限・外出控え等の影響により,感染症そのものが減少した,との意見も多く見られた。

◆「医療従事者への誹謗・中傷,不当な扱い」では,特に病院において高率に見られ,医療機関・医療従事者への直接的なものだけにとどまらず,保育園の預かり拒否や配偶者の通勤制限等,家族にまでその影響が及んでいる実態が明らかになった。

◇基本情報

【医療機関種別】

【感染症指定医療機関等の該当の有無】
◎感染症指定医療機関(病院)

◎PCR検査実施医療機関

【主な診療科(診療所)】

◆4月から7月診療分までの4ヵ月間,診療報酬(社保・国保・後期高齢者のレセプト点数)は,昨年の同時期と比べてどれぐらい減額しましたか?

◆4月から7月診療分までの4か月間,診療報酬が昨年の同時期と比べて減額したと回答した医療機関数

◆減額した主な理由

【⑦その他】
・長期処方の増加による再診の減少(16件)
・電話受診の増加(3件)
・薬のみ処方による指導料算定の減少
・風邪など感染症,子どもの感染症の減少(10件)
 (手洗い,マスク着用,ソーシャルディスタンス等の感染症対策の徹底による衛生環境強化,休園・休校・外出控え等による影響)
・消毒等に要する時間がかかるため,予約数を制限
・リハビリテーションの制限,中断
・処置(ネブライザー等)の中断
・分娩数の減少
・新型コロナウイルス感染者入院のための空床確保のため(他1件)
・救急の受入れ制限
・外来診療の縮小
・診療報酬改定,薬価改定による影響

◆診療科別の状況

◆従業員の給与(ボーナス含む)への影響

◆その他

【医療従事者への謂れのない中傷,不当な扱い(具体的回答)】

・唾液PCR検査を行う際に近隣住民からクレームを受けた。
・診察室への入室を嫌がる患者が数名いた。
・高血圧の患者にいつもどおり看護師が血圧を測りに行くと,嫌な態度をとる患者がいる。
・医療従事者が触ったものを不清潔として,配布物の受け取りを拒否された。
・アクリル板がないことで医療従事者と患者の距離が不快に感じると言われた。
・訪問診療・訪問看護の拒否,出入り業者の取引制限
・老人介護施設のスタッフから,訪問診療に来るならPCR検査を受けてからと言われた。
・連絡もせず来院した発熱患者に,一旦院外に出るよう指示したところ,暴言をはかれた。
・患者等からの暴言
「コロナ患者からウイルスをもらって,医師や受付事務員もまき散らしているのではないか」,「電車・バス通勤でウイルスを運んでないか」,「コロナがうつるから近寄るな」,「感染した汚い病院」,「医療従事者のくせにコロナに感染するのか。管理ができていないのではないか?」など
・陽性となった職員の氏名と所属の病棟を教えろと電話があった。
・関連病院の職員が陽性となった際,「職員の氏名と通勤経路を公表しろ。子どもが安心して学校に通えない」と匿名の電話があった。
・当院で新型コロナウイルス感染者が出たとのデマ,感染させられたとの誹謗,中傷する内容の投函
・従事者の他院での受診拒否
・深夜出勤時,タクシーに行き先(勤務先の医療機関名)を伝えると乗車拒否された。
・飲食店,美容室等への入店拒否
・スタッフがSNS上で誹謗中傷を受けた。
・家人より「家に帰ってこないで」と言われた。医療従事者だからと実家への帰省を断られた。
・保育園から預かりを拒否された。
・保育園から「お迎えには別の家族が来てください」と言われた。
・看護師の子どもの保育園の親から「医療機関で働く人の子どもと一緒の保育は困る」と言われた。
・小学校で医療従事者差別があり,席を離してほしいと保護者より学校側に要望があった。
・一部職員の子どもが軽いイジメに遭った。
・看護師の子どもが「コロナがうつるから一緒に遊んではダメ」と他の子の母親に言われた。
・家族に医療従事者(看護師)がいることで,「出社不可」の会社があり,看護師が休業することになった。
・スタッフの配偶者・家族が勤務先から勤務制限を受けた(自宅待機命令,リモートワーク等)。
・子どもが塾に通うのを拒否された。

2020年12月1日号TOP