介護老人福祉施設等における診療行為に係る報酬の給付調整に関する厚労省作成リーフレット

 介護老人福祉施設における介護報酬と診療報酬の給付調整については,「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」(平成18年3月31日保医発0331002号厚生労働省保険局医療課長通知令和6年3月27日一部改正)および「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」(平成18年4月28日老老発第0428001号・保医発第0428001号厚生労働省老健局老人保健課長・厚生労働省保険局医療課長通知令和6年3月27日一部改正)等において取り扱いが示されているところです。
 令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(令和5年12月19日)において,「介護報酬と診療報酬の給付調整について正しい理解を促進する観点から,配置医師が算定できない診療報酬,配置医師でも算定できる診療報酬であって介護老人福祉施設等で一般的に算定されているものについて,誤解されやすい事例を明らかにするなど,分かりやすい方法で周知を行うこと」とされたことを踏まえ,今般,「特別養護老人ホームにおける診療行為に対する報酬の給付調整」に関するリーフレットが厚生労働省において作成されましたので,参考までにお知らせします。
 なお,内容は通知等から抜粋して整理されたものであり,算定にあたっては医科点数表の解釈なども併せてご確認ください。

特別養護老人ホームにおける診療行為に対する報酬の給付調整について

特別養護老人ホームにおける給付調整について
  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は,基準上,入所者に対し,健康管理および療養上の指導を行うために必要な数の医師を配置することとされており,この配置医師が行う健康管理および療養上の指導は介護報酬で対応されているため,初診・再診料等については,診療報酬の算定はできません。
    ※府医編注:特別の必要があって行う診療の場合はこの限りではない。
  • 一方で,配置医師以外の医師(外部医師)は,緊急の場合と配置医師の専門外の傷病の場合に,「初・再診料」「往診料」等の算定が可能です。
  • また,末期の悪性腫瘍の場合または在宅療養支援診療所等の医師による看取りの場合に限っては,看取りに関する診療報酬の算定が可能です。
  • こうした入所者に対する医療行為の報酬上の評価の取扱いについては,「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」(平成18年3月31日保医発0331002号厚生労働省保険局医療課長通知令和6年3月27日一部改正)で規定しています。
    (※) 在宅療養支援診療所,在宅療養支援病院および協力医療機関

 このリーフレットは,令和6年度介護報酬改定に係る審議報告において「診療報酬との給付調整について正しい理解を促進する観点から,配置医師が算定できない診療報酬,配置医師でも算定できる診療報酬であって介護老人福祉施設等で一般的に算定されているものについて,誤解されやすい事例を明らかにするなど,わかりやすい方法で周知を行う」という意見を踏まえ,作成したものです。

参考:協力医療機関について

 令和6年度介護報酬改定において,介護保険施設内で対応可能な医療の範囲を超えた場合に,協力医療機関との連携の下でより適切な対応を行う体制を確保する観点から,在宅医療を担う医療機関や在宅医療を支援する地域の医療機関等と実効性のある連携体制を構築するために,以下の要件を満たす協力医療機関を定めることが義務づけられました(施行の経過措置は令和9年3月末まで)。複数の医療機関を定めることにより要件を満たすこととしても差し支えありません。

  • 入所者の病状が急変した場合等において医師または看護職員が相談対応を行う体制を,常時確保していること。
  • 当該指定介護老人福祉施設からの診療を求めがあった場合において診療を行う体制を,常時確保していること。
  • 入所者の病状が急変した場合等において,当該指定介護老人福祉施設の医師または協力医療機関その他の医療機関の医師が診療を行い,入院を要すると認められた入所者の入院を原則として受け入れる体制を確保していること。
特別養護老人ホームにおける医療行為と報酬評価例について

❶ 急変時に配置医師以外の医師が往診する例

 配置医師が不在の時間帯に特養入所者の体調変化があり, 協力医療機関の医師に往診を依頼し,診察の結果,様子観察となった。

:診療報酬による評価
緊急の場合であり特養の求めに応じて行った診療であるため,診療報酬の診「初診料(または再診料)」「往診料(※1)「介護保険施設等連携往診加算(※2の要件を満たす場合に限る)」の算定が可能。
また,検査や投薬等を行っている場合には,それらの診療報酬の算定が可能。

  • 特養含む介護保険施設等の求めに応じ,緊急で往診し「緊急往診加算」「夜間・休日往診加算」「深夜往診加算」を算定する場合は,以下の(1)(2)のいずれかに該当する患者(入所者)であること。この対象以外では点数が異なるため,留意すること。
    • 次のアおよびイに該当していること。
      •  介護保険施設等において,当該往診医療機関が往診を行う場合に,往診を行う患者の診療情報等を,あらかじめ患者の同意を得た上で,当該介護保険施設から往診医療機関に適切に提供されており,必要に応じて往診医療機関がICTを活用して患者の診療情報等を常に確認可能な体制を有していること。
      •  往診を受ける患者が入所している介護保険施設等と当該往診医療機関において,当該入所者の診療情報等の共有を図るため,年3回以上の頻度でカンファレンスを実施していること。なお,当該カンファレンスは,ビデオ通話が可能な機器を用いて実施しても差し支えない。
    • 当該患者が入所している介護保険施設等と当該往診医療機関において,当該入所者の診療情報等の共有を図るため,月1回以上の頻度でカンファレンスを実施していること。なお,当該カンファレンスは,ビデオ通話が可能な機器を用いて実施しても差し支えない。
  • 次の要件を満たす場合に算定が可能。(施設基準の概要)
    • 当該医療機関が介護保険施設等から協力医療機関として定められている等,緊急時の連絡体制及び往診体制等を確保していること。
    • 次のいずれかの要件を満たすもの。
      •  次の(イ)及び(ロ)に該当していること。
        • 往診を行う保険医療機関に所属する保険医が ICT を活用して当該診療情報及び病状急変時の対応方針を常に確認可能な体制を有していること。
        • 介護保険施設等と協力医療機関において,当該入所者の診療情報及び急変時の対応方針等の共有を図るため,年3回以上の頻度でカンファレンスを実施していること。
      •   介護保険施設等と協力医療機関において,当該入所者の診療情報及び急変時の対応方針等の共有を図るため,1月に1回以上の頻度でカンファレンスを実施していること。
    • 介護保険施設等に協力医療機関として定められており,当該介護保険施設等において療養を行っている患者の病状の急変等に対応すること及び協力医療機関として定められている介護保険施設等の名称について,当該保険医療機関の見やすい場所及びホームページ等に掲示していること。

参考 急変時に配置医師以外の協力医療機関の医師が往診した結果,協力医療機関に入院した場合

 介護保険施設等の入所者の病状の急変時に当該介護保険施設等に協力医療機関として定められている保険医療機関であって,当該介護保険施設等と平時からの連携体制を構築している保険医療機関の医師が診察を実施した上で,入院の必要性を判断し,入院をさせた場合,上記や入院に係る費用の他「協力対象施設入所者入院加算(下記要件を満たす場合に限る)」の算定が可能。

【施設基準の概要】

  • 当該医療機関が介護保険施設等から協力医療機関として定められている等,緊急時の連絡体制及び入院受入体制等を確保していること。
  • 次のいずれかの要件を満たすもの。
    •  次の(イ)及び(ロ)に該当していること。
      • 入院受入れを行う保険医療機関の保険医が ICT を活用して当該診療情報及び病状急変時の対応方針を常に確認可能な体制を有していること。
      • 介護保険施設等と当該介護保険施設の協力医療機関において,当該入所者の診療情報及び急変時の対応方針等の共有を図るため,年3回以上の頻度でカンファレンスを実施していること。
    •   介護保険施設等と協力医療機関として定められている医療機関において,当該入所者の診療情報及び急変時の対応方針等の共有を図るため,1月に1回以上の頻度でカンファレンスを実施していること。
  • 上記(※2)の(3)と同様

❷ 特養内で診療が完結する例

  • 入所者が発熱したため,配置医師が診察。
  • 数日前から風邪症状が出現。軽度の脱水症状があるため特養内で注射用抗菌薬および電解質製剤を投与した。
  • 入所者に対する健康管理および療養上の指導に係る評価は介護報酬の基本サービス費に含まれる。
  • 診療報酬の「薬剤料」「点滴注射」の算定は可能(配置医師の診療日以外の日に配置医師の指示のもと看護師等が点滴を行った場合は「薬剤料」のみ算定可能。)。

❸ 特養内での配置医師による処置の他,外部医師が介入する例

  • 入所者が居室の扉に手を挟み,表皮剥離を起こしたので,配置医師により応急的に洗浄,ガーゼで剥離部を保護し,経過観察。
  • 数日が経過しても治癒する様子がなかったため,配置医師の指示のもと皮膚科受診し,加療を行った。
  • 入所者に対する健康管理および療養上の指導に係る評価は基本サービス費に含まれる。
  • 皮膚科が配置医師の専門外である場合,受診先の診療所において「初診料」および「創傷処置」等の処置に係る診療報酬算定が可能。
  • 上記事例における皮膚科医が往診に対応している場合は「往診料」が算定可能(往診に要した交通費は,入所者からの実費)。

❹ 特養内で末期の悪性腫瘍の入所者に対し診療および看取りを行う例

  • がん末期の診断を受けた入所者に対し,配置医師が定期的に健康管理を行い,最終的に特養内で看取り,死亡診断を行った。

:介護報酬による評価

  • 「在宅患者訪問診療料」「在宅ターミナルケア加算(※2)」および「看取り加算(※3)」の算定が可能。
  • 「看取り介護加算(Ⅱ)」を算定していない場合に算定できる。
  • その他,在宅(この例では特養も含む)での療養を行っている患者が在宅(特養)で死亡した場合であって死亡日に往診を行い,死亡診断を行った場合は「死亡診断加算」の算定が可能。ただし,「看取り加算」を算定している場合には算定できない。
  • 在宅(この例では特養も含む)で死亡した患者(入所者)に死亡日および死亡前14日以内の計15日間に2回以上往診若しくは訪問診療を行った患者または退院時共同指導料1を算定し,かつ,訪問診療を行った場合に算定する。
    なお,がん末期でない患者(入所者)の場合は,在宅療養支援診療所,在宅療養支援病院および協力医療機関の医師による看取りの場合に限る。さらに看取りを行う特養は,「看取り介護加算」の施設基準(常勤の看護師1名を配置,24時間連絡体制を確保すること,看取りに関する指針を定め,入所者または家族に説明・同意を得ている,看取りに関する指針の見直し,看取りに関する職員研修の実施,個室または静養室を利用できるような配慮)を満たす必要がある。
  • 事前に当該患者またはその家族等に対して,療養上の不安等を解消するために十分な説明と同意を行った上で,死亡日に往診又は訪問診療を行い,当該患者を看取った場合に算定する。(在宅患者訪問診療料を算定している場合に限る。)

参考資料
医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項および医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」(令和6年3月27日付け通知老老発0327第1号保医発0327第8号)(別紙1より抜粋)

算定可能な報酬は「○」と表記。

  • 死亡日からさかのぼって30日以内の患者については,当該患者を当該特別養護老人ホーム(看取り介護加算の施設基準に適合しているものに限る。)において看取った場合(在宅療養支援診療所または在宅療養支援病院若しくは当該特別養護老人ホームの協力医療機関の医師により行われたものに限る。)に限る。
  • 当該患者によるサービス利用前30日以内に患家を訪問し,在宅患者訪問診療料,在宅時医学総合管理料,施設入居時等医学総合管理料または在宅がん医療総合診療料(以下「在宅患者訪問診療料等」という。)を算定した保険医療機関の医師(配置医師を除く。)が診察した場合に限り,算定することができる(末期の悪性腫瘍の患者以外の患者においては,利用開始後30日までの間に限る。)。
    また,保険医療機関の退院日から当該サービスの利用を開始した患者については,当該サービス利用開始前の在宅患者訪問診療料等の算定にかかわらず,退院日を除き算定できる(末期の悪性腫瘍の患者以外の患者においては,利用開始後30日までの間に限る。)

「介護保険施設等連携往診加算」「協力対象施設入所者入院加算」の算定の際には以下の事務連絡もご参照ください。

2025年12月15日号TOP