2025年12月15日号
伏見医師会と府医執行部との懇談会が10月27日(月)伏見医師会館で開催され,伏見医師会から15名,府医から8名が出席。「2026年度診療報酬改定」,「OTC類似薬に関する問題」,「医師会に入会されない新規医療機関への対応」をテーマに活発な議論が行われた。
次期診療報酬改定に向けて,中医協では,総合的な議論を行う「第1シリーズ」の検討を経て,個別具体的な項目について検討する「第2シリーズ」の協議が10月から開始されており,12月中旬には「基本方針」の策定と改定率の決定が見込まれている。
「外来」をテーマにした中医協総会における議論で,診療側は,かかりつけ医機能報告制度は診療報酬上の評価と切り分けることが大前提であると主張とした上で,生活習慣病管理料の療養計画書の対応に医療現場が難渋している実態を指摘し,取り扱いの見直しを求めた他,不適切なオンライン診療への対応を求めている。一方で支払側は,既存のかかりつけ医機能を評価する点数について,かかりつけ医機能報告制度と関連付けた見直しを求めるとともに,機能強化加算や外来管理加算の見直しや廃止を主張している。
また,財務省や中医協の支払側は,病院と診療所は経営状況等が異なることを踏まえて,「メリハリある改定」を主張しており,診療所は経営が安定しているとして,診療所に係る点数を引下げて,病院の評価を手厚くすることを狙っているものと思われる。
これに対して,日医は診療所の経営も厳しい状況にあることを訴え,補助金と診療報酬の両面からの早急な対応を求めると同時に,物価・賃金等が急激に高騰している昨今の状況下においては,改定2年目に大きな乖離が生じる可能性が高いとして,対応のための具体案を提示し,財源を上乗せする「真水の対応」を求めている。また,物価高騰・人件費上昇などの影響により,医療機関の経営が厳しい中で,来年の診療報酬改定は非常に重要であり,日医も当然ながらプラス改定に加えて,基本診療料の引上げや,点数の引上げと同時に要件を追加しない「純粋な引上げ」を強く訴えている。
府医としても,9月の近医連の会議において,①使途を限定しない基本診療料の大幅な引上げ,②生活習慣病管理料の算定要件の見直し:具体的には療養計画書の交付は医師の裁量とすることや,特定薬剤治療管理料や傷病手当金意見書交付料など対象疾患と直接関連のない医学管理料の包括の見直し,③財務省が主張する,外来管理加算を再診料に包括化した上で他の管理料・加算と整理・統合することや,機能強化加算の廃止,処方箋料の適正化等は到底容認できないこと―を訴えたほか,「メリハリある改定」を主張していることを問題視し,診療所の診療報酬を引下げて病院に充当するといった医療界の分断を招くような方法に懸念を示し,出席した日医役員と共有したところである。
政局が不透明で予断を許さない状況下であるが,医療界が一致団結して訴えていくことが必要である。
~意見交換~
その後の意見交換で,府医より,病院も診療所も経営の危機に陥っている状況を受けて,日医では診療報酬だけでなく,緊急の手当を要望していることを紹介し,こうした窮状をしっかりと訴えていくことが大事であるとした。また,これらの要望の実現には,まず医師会員を増やして組織強化を図り,医療全体の意見として受け入れられる必要があると指摘。政権与党内で医療の窮状が共有されなければ実現は難しいことから,医政活動の重要性を改めて強調し,協力を求めた。
本年5月に財政制度等審議会が示した「春の建議」では,日本の外来医療費は諸外国と比べて高いため,「セルフメディケーションを推進する余地がある」との趣旨が述べられており,財務省は①スイッチOTC化の加速,②OTC類似薬の保険給付の見直し―の二点を推進策として打ち出している。
「春の建議」の本文では,諸外国の例を挙げながら「OTC類似薬に係る保険給付の在り方を具体的に進めていくべき」との記述にとどまり,具体的な手法や除外範囲は示されていないが,併せて提示された資料には,「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」の品目の中に,比較的リスクが低い医薬品として漢方薬,ビタミン剤,解熱鎮痛剤,胃腸薬,ステロイド外用薬等が挙げられている。財政審における建議の策定過程において,財務省から「保険外併用療養費制度の柔軟な活用・拡大」が提案され,OTC類似薬の保険適用除外の具体的な方法として,①単純に保険適用から外す方式で,混合診療の原則禁止の下,薬剤費と技術料なども全額自己負担とする案と,②保険外併用療養費制度を活用し,薬剤費は全額自己負担にしつつ,技術料などについては保険外の自費と保険診療の自己負担を組み合わせた案の二案が提示されている。
「春の建議」が提示された後,6月11日の三党合意で「類似のOTC医薬品を持つ医薬品(OTC類似薬)の保険給付の在り方の見直し」の文言が入り,6月13日の「骨太の方針2025」では,OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し等に係る改革について,2025年末までの予算編成過程で十分な検討を行い,早期に実現可能なものは2026年度から実行する旨が記載された。
日医は当然,保険外しには断固反対の立場であり,松本日医会長は保険適用除外となった場合の問題点を指摘するとともに,三党合意や骨太の方針に記載されたのはあくまで「給付の見直し」であって,「保険適用除外」が前提ではないと主張し,見直しを行った上で,現行の仕組みを維持するという結論もあり得るとしている。ただ,三党合意が行われた6月時点と現在とでは,連立与党内での力関係が変わっているため,今後の議論への影響が懸念されるところである。今後,厚労省・社会保障審議会の医療保険部会で一定の方向性を決め,その方向性に基づいて中医協で具体的な方策が検討されることになるため,日医としても医療保険部会の段階で,医学的な見地や患者負担の問題などをしっかりと訴えていく考えを示している。
OTC 類似薬の保険給付見直しをはじめ,社会保障の「給付と負担」に係る議論の中で,一部の勢力が主導する「負担」ばかりに着目した議論はバランスを欠いている。医療現場は給付の現場であり,給付を受ける国民と直接向き合う立場から,その声を国の協議の場に届けることは極めて重要である。政治情勢が大きく動く中でこそ,医療界は日医を中心にしっかりとまとまり,給付と負担に係る国民的議論を正しい方向にリードしていく必要がある。
~意見交換~
その後の意見交換で地区からは,セルフメディケーションといっても,そう簡単にできるわけではないとの意見や,OTC類似薬の保険適用除外によって,難病や小児の医療費助成を受けている場合,助成の対象外となってしまう可能性があることに懸念が示された。
府医は,セルフメディケーションの推進は,最終的に「医師はずし」につながるため,我々として守るべき部分を明確にしておくことが重要であるとの考えを示した。
医師会の入会金の負担や入会後に職務が割り当てられることを懸念して,医師会に入会しない新規医療機関が増加しているとご報告いただいたが,医師会への入会に際して,近年は特に「入会のメリット」や,コスパ・タイパを重視して判断される傾向が強くなっていると感じている。
先般の十四大都市医師会連絡協議会の総務担当理事者会議において,医師会未入会の医療機関に対する各都市の取組みについて意見交換を行ったが,どの医師会も対応に苦慮していることが伺えた。入会金の負担を理由とするものや信念をもって入会を拒否されるケースの他,美容系医療を標榜する医療機関やいわゆる「メガ在宅」の医療機関の入会が極端に少ないこと,さらには,コンサルタント業者が医師会に入会しなくてもよいと誘導する事例や,全国展開するグループや大規模な法人の医療機関では本部の方針で所属医師の医師会入会を妨げる事例などが報告され,現状では,入会する機会がなかったという医療機関に対して入会案内を送付する等の対応しかできていないとのことであった。
府医においても会員数の増加,組織強化は重大な課題と認識しているが,現状では対応が難しく,理想論ではあるが,医師会に入会する意義として,日本の医療はすべて制度や政策の上に成り立っており,医療界が求める制度・政策を実現するためには,医療政策の決定プロセスに深く関わることが重要であり,日医を通じて医療界の意見をその決定プロセスに反映させていく必要があるということ,また,より説得力のある議論を展開するためには,その発言力を高めるべく組織力の強化が必要であり,そのことが診療報酬改定や,ひいては自身の職務を存分に全うできる環境の実現につながるということを懇切に説明し,理解を促していくしかないと考えている。
未入会の先生方に対してどのようなアプローチが可能か,引続き地区における問題点やご意見を伺いながら,課題解決に向けて一緒に検討していきたい。
~意見交換~
府医では,価値観が多様化する中で,地域医療を担うにあたって医師会に所属することは当然であるというコンセンサスを醸成していくことが重要であるとの考えから,新研修医オリエンテーション等を通じて,研修医の段階からできるだけ早期に医師会活動に触れる機会を創出し,長期的な視点で地道に理解を深めていく取組みを開始していることを紹介した。
地区からは,患者の立場からも医師会に所属する医療機関を受診した方がメリットがあると感じられるような差別化ができないかとの意見が挙がった。
初・再診料の加算や生活習慣病管理料と他の点数の併算定の可否等について整理し,算定にあたっての留意点を説明するとともに,算定漏れを防ぐなど適正な運用により健全な医業経営を呼びかけた。また,療養費同意書の交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書の発行に理解と協力を求めた。