2020年12月1日号
与謝・北丹医師会と府医執行部との懇談会が9月26 日(土),Web で開催され,与謝医師会から15 名,北丹医師会から4名,府医から9名が出席。「新型コロナウイルス感染症が拡大している中,開業医のできることは,しなければいけないことは何か」,「新型コロナウイルス感染症に係る医療機関の減収」をテーマに活発な議論が行われた。
〈注:この記事の内容は9月26 日現在のものであり,現在の状況とは異なる部分がございますのでお含みおきください〉
今年の冬は,季節性インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行を踏まえた感染症対策や医療提供体制づくりが重要である。
府医では,7月からインフルエンザ流行に備え,医療機関における対策の検討を行ってきた。京都医報8月15 日号に「インフルエンザ流行期の有熱者への対応」を掲載し,会員への周知に努めた。
また,厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部より,9月4日に「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について」の通知が発出され,各都道府県に次のインフルエンザ流行に備えた体制整備を進め,10 月中を目処に体制整備を完了することが求められることとなった。このことから,京都府では,患者と医療従事者がより安心・安全に受診・診察ができるよう協議を進めている。
医療機関でできる感染防止対策は,まず,発熱患者は電話での相談を原則とし,受診時間をずらしたり,待合室を分ける等可能な限り隔離した上で,医療従事者はサージカルマスクやゴーグル等を着用する。さらに,換気の徹底や環境消毒,受付にパーテーション設置等,日常的に感染防止に係る取組みを実施することで院内感染を防ぐことができる。
インフルエンザ流行期においては,検査を行わずしてインフルエンザかコロナかを診断することは不可能で,その時の流行状況によってどちらを優先するか判断することになる。地域で,インフルエンザの方が流行していれば,インフルエンザであることが疑わしく,まずはインフルエンザの迅速検査を実施し,陰性であれば,コロナの唾液検査を実施する。
また,実際にインフルエンザの検査を行う際は,通常,スワブで鼻咽頭のぬぐい液を採取することが多いが,迅速診断キットの種類によっては,鼻腔ぬぐい液,鼻咽頭ぬぐい液,鼻かみ液,鼻汁採取液の4種類による検査ができると添付文書に記載があるものもある。横からスワブで採取した鼻腔ぬぐい液か鼻かみ液であれば感染リスクが抑えられる。
さらに,コロナと疑わしい患者は,府医検査センターに相談すれば,ドライブスルー検査を実施できるが,ドライブスルーによる検査が難しい患者の場合は,受診・相談センターに相談し,受診可能な近隣医療機関を紹介してもらうこともできる。
理由もなく発熱患者を診ないことは応召義務の観点からも不可であり,医療機関における感染防止対策と,唾液によるPCR 検査がより重要となるので,集合契約に参加していただきたい。京都府では,公表されることもないので,前向きに検討していただきたい。
◇「インフルエンザかコロナか分からない時点で,キャップも医療用ガウンも必要ないのか」と質問が出された。
日本感染症学会によれば鼻腔での採取であれば,サージカルマスクと手袋,目の保護があれば十分に感染を防止できるとの見解を示しているが,髪を触る機会が多い女性医療従事者は感染原因となるので,キャップが必要であると考える。また,飛沫感染のリスクが高いと判断した場合は,ガウンやキャップ等の着用が必要であると言える。
◇ 「唾液検査で陰性だった場合,鼻咽頭ぬぐい液によるドライブスルー検査も必要なのか」と質問が出された。
唾液検査は,発症後9日以降から精度が落ちるため,偽陰性があり得る。医師がコロナとして疑わしいと判断した場合は,鼻咽頭ぬぐい液による検査も必要だと考える。
しかし,他都道府県に比べて充実した検査体制を構築できているものの,京都北部には現在ドライブスルーでPCR 検査ができる検査場がない。今後,北部地域にも検査場の設置が必要と考えているとした。
◇ 「施設職員に対して念のため,PCR 検査をした場合,14 日間の経過観察のため休業するよう指示した方が良いのか」と質問が出された。
念のための検査の場合は,疑似症届を提出しなければならないわけではなく,提出しても,陰性であれば,必ず14 日の経過観察が必要なわけではない。
◇ 「寝たきり患者への唾液検査が不可能なため,どうすれば良いか」と質問が出された。
実際に検体の容器やPPE を手渡してかかりつけ医に鼻腔ぬぐい液を採取してもらい,府医検査センターに提出してもらった。また,厚労省が鼻前庭ぬぐい液での検査も認めるなど少しずつ検査方法が変わっていくことも想定できると回答。
府医では,新型コロナウイルス感染症対応下での医業経営状況等アンケート調査を実施。
9月15 日に診療所390 件(無作為抽出),全病院164 件に郵送。9月17 日に府医会員メーリングリストおよびFAX 情報にて送信した。回答期限は10 月9日(金)で,集計結果は京都医報にて報告を予定。
9月24 日現在の回答数は368 件。4月から7月診療分までの4か月間で診療報酬が昨年の同時期と比べて減額したと回答した医療機関数は362件(診療所284 件,病院78 件)で,減額率は5月に最も悪化しているが,6・7月は4月よりも回復している傾向がみられる。
診療科別では,4・5月には小児科,耳鼻咽喉科において4~5割減,5割減以上との回答が多く,深刻な状況が伺えた。
日医が9月9日に発表した診療所経営への影響調査の結果においても,4月は前年同月比▲13.3%,5月は▲ 16.5%,6月は▲ 8.0%で,5月に大きく落ち込み,診療科別では,内科は▲10.7%,外科は▲ 9.4%,整形外科は▲ 13.0%,眼科は▲ 3.4 % であったが, 耳鼻咽喉科は▲34.5%,小児科は▲ 26.0%と大きく落ち込んだ。
今後も医療提供体制維持のために,診療報酬と国による補正予算を用いた対応の必要性を軸に考えることが重要であると説明。
(詳細は,令和2年8月5日付日医ニュース第1414 号8面参照)
日医の上記調査によると,交付金等と融資の申請をしたのは25.0%,交付金等のみを申請したのは35.9%,いずれも申請していない・無回答は39.0%であり,交付金等か融資を申請した診療所に対策が十分か聞いたところ,「やや不十分」と「不十分」を合わせると77.7%であった。
新型コロナウイルス感染症の拡大により,収入が減少し,資金繰りに苦慮する医療機関が増加していることに対応し,福祉医療機構等から融資が実施されるまでの間の資金繰り対策として,4月診療分の診療報酬が支払われる際に,加えて5月診療分の診療報酬の一部について概算前払いを実施することが5月末時点で通知されている。
社会保険診療報酬支払基金の発表によると,5月診療分の概算前払いを実施した医療機関(医科)は615 件で,7月末までに344 件が精算済,残る271 件は8月以降に調整される。
入院に関して,救急医療管理加算を従前の3倍として,算定日数についても継続的な診療が必要な場合は15 日目以降の算定可としたり,新型コロナウイルス感染症患者の対応のため,一般病床に移ったICU 患者については,引続きICU の点数の算定を可能とするなどの対応が取られた。
診療所においては,新型コロナウイルス感染症が疑われる患者に対応した場合に,受診の時間帯や施設基準の届出の有無にかかわらず,院内トリアージ実施料(300 点)の算定が可能とされたほか,慢性疾患を有する定期受診患者に対する特定疾患療養管理料の算定について,電話や情報通信機器を用いた診療を行う場合100 点ではなく,許可病床100 床未満の病院の場合の点数である147点に引上げるといった特例的な取り扱いがされている。
収入が減額となったものの最たる理由は,病院・診療所ともに患者の受診控えであり,この傾向は新型コロナウイルス感染症収束後も続く。
国による補正予算を用いた対応や特例的な保険点数の特例的な取り扱いは,限定的なものであり,診療報酬の引上げの議論は避けて通れない。
しかし,診療報酬の一律の引上げには,患者負担の増加をともなうため慎重な議論が必要であり,今回のコロナ禍に乗じた拙速な対応は奈良県のような事例につながりかねない。
府医としては,近医連の場で「初・再診料の引上げ」を重点的に取り上げることを提案している。
支払基金と国保連合会双方における審査の平準化をはかるために開催している「基金・国保審査委員会連絡会」の状況について解説するとともに,個別指導における主な指摘事項についての資料を提供した。
また,療養費同意書交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書発行に理解と協力を求めた。