「診療報酬改定に望むもの」,「電子カルテ情報共有サービス」,「医療扶助における要否意見書と医療券申請の実務整理」について議論

 京都北医師会と府医執行部との懇談会が 11 月 12 日(水),京都ブライトンホテルにて開催され,京都北医師会から 17 名,府医から9名が出席。「診療報酬改定に望むもの」,「電子カルテ情報共有サービス」,「医療扶助における要否意見書と医療券申請の実務整理」をテーマに活発な議論が行われた。

※この記事の内容は令和7年 11 月 12 日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

診療報酬改定に望むもの

 四病院団体協議会が10月6日に公表した「2025年度病院経営定期調査―中間報告(集計結果)―」では,2023年度と2024年度を比較し,医業利益の赤字病院割合は69.9%から73.8%に,経常利益の赤字病院割合も51.1%から63.6%に悪化しており,また,日医が9月17日に公表した「令和7年診療所の緊急経営調査」の結果では,2023年度から2024年度にかけて,医療法人全体では,医業利益の赤字割合が31.3%から45.2%に,経常利益の赤字割合は24.6%から39.2%に悪化,さらには医業利益率・経常利益率ともに平均値および中央値が悪化し,医療機関の経営が大変厳しい状況下にあることが示されている。
 10月29日の中医協総会では,医療法人経営情報データベースシステム(MCDB)を基にした2023・24年度の病院・診療所の経営状況を踏まえた議論がなされ,収益の増加以上に材料費や給与費を中心に費用が増加し,医業利益が減少している状況で,医療機関経営の悪化が読み取れる内容であったことを受けて,診療側委員である江澤日医常任理事は「過去に例のない危機的な状況」であるとした上で,国民の命と健康を守り,地域医療を支えるため,適正化を行うことは全くの論外であり,物価高騰・賃金上昇に見合った診療報酬上の高い評価を強力に推し進め,実現するしか選択肢はないと強く主張している。
 こうした医療機関の窮状を踏まえ,日医は次期診療報酬改定に向けて,①補助金と診療報酬の両面からの早急な対応,②物価・賃金が大きく上昇した場合に適切に対応する新たな仕組みの導入,③医療費削減ではなく財源を純粋に上乗せするいわゆる「真水」による対策―を主張している。特に②については,改定2年目は実調の調査から3年間のずれがあり,物価・賃金等が急激に高騰している昨今の状況下においては大きな乖離が生じる可能性が高いことから,その対応策として,改定2年目の推計値を含めた改定水準とする案と,改定2年目の分を機動的に上乗せする案を提示している。
 府医としても,「骨太の方針2025」に記載された「高齢化による伸びに物価・賃金対応分を加算する」という目安対応から足し算の論理への転換や,「公定価格の分野の引き上げ」が確実に実施されることが必要であると考えている。9月に開催された近医連の会議では,①使途を限定しない基本診療料の大幅な引上げ,②財務省が求める外来管理加算を再診料に包括化した上で他の管理料・加算と整理・統合することや,機能強化加算の廃止,処方箋料の適正化などは到底容認できないこと,さらに,③診療所の診療報酬を引下げて病院に充当するといった医療界の分断を招くような方法ではなく,適切に外来医療を評価すること―を訴えるとともに,④生活習慣病管理料の算定要件の見直し,具体的には療養計画書の交付は医師の裁量とすることや,特定薬剤治療管理料や傷病手当金意見書交付料など対象疾患と直接関連のない医学管理料の包括を見直すべきであると発言し,出席した日医役員とも問題点を共有したところである。
 しかし,直近の財政制度等審議会においても,診療所が病院に比べて高い利益率を維持しているとして,病院を重点的に支援すべく診療所の診療報酬の適正化が必要との議論がなされており,松本日医会長が即座に反論しているものの,予断を許さない状況である。
 11月20日(木)には日医が各医療団体などと連携した総決起大会を開催する予定で,より多くの参加者を得るため,日医の要請を受けて府医においても府医会館にサテライト会場を設置することとした。各地区医や関係団体にも参加を呼びかけており,多くの参加を得て,医療界が強く反発していることを示していく必要がある。

~意見交換~
 意見交換では,次期診療報酬改定への具体的な要望内容や財源について提案等がなされた。
 診療報酬単価を1点10円から11円へ引上げることに関して,府医としては反対を表明し,その理由として,診療報酬単価を上げ下げする前例を作ることで,今後,「医療費適正化」を盾に,1点単価の切り下げや,地域別診療報酬の導入に利用されることを強く懸念すると説明し,まずは診療報酬体系のひずみを是正することが先決であるとの考えを示した。

電子カルテ情報共有サービスについて

 電子カルテ情報共有サービスは,当初,令和7年度中の本格稼働を予定し,モデル事業が展開されていたが,特に進捗状況等に関する情報もなく,本年10月に医療DX推進体制整備加算の施設基準要件が改正され,電子カルテ情報共有サービスの導入期限が本年9月30日から来年5月31日に延長されたことからも,政府の思うように進んでいない状況が伺える。
 共有される情報の内容については,厚労省が示した資料の中に,「診療情報提供書,退院時サマリー,健康診断結果報告書,臨床情報(傷病名,感染症,薬剤アレルギー等,その他アレルギー等,検査,処方)」が列記されており,診療情報提供書と退院時サマリーは紹介先との共有,その他についてはマイナ保険証での本人確認/同意を利用することで,全国の医療機関等が閲覧できる仕組みとされている。医療機関等が閲覧できる情報は,患者が同意した範囲に限られ,利用目的外で患者の医療情報を閲覧することは認められていない。
 導入に係る補助は,現在のところ病院のみを対象とし,例によって導入コストの半額補助で,ランニングコストは医療機関の負担となっている。これに対して日医は,「導入や維持,セキュリティーの費用は,本来,国が全額を負担すべき」と一貫して主張している。
 既存の電子カルテでそのまま同サービスを利用できるわけではなく,既存の電子カルテを改修した上で利用することが前提となる。診療情報提供書に関しては,紹介元が能動的に登録することが必要であるが,その他の情報(傷病名,感染症,薬剤アレルギー等,その他アレルギー等,検査,処方)は自動的に共有される。しかし,日医は,自動的に傷病名が共有されると患者に混乱が生じると指摘し,その混乱を避けるために,「提供しない」というフラグを立てる手間が発生することに懸念を示している。
 国は,「2030年には概ねすべての医療機関で電子カルテ導入」と目標設定しており,「概ね」というところに一応の配慮はあるものの,医師会としては,医師,患者とも「誰一人取り残さない医療DX」でなければならず,義務化により医療機関が廃業を余儀なくされるといった事態は絶対に避けなければならないという姿勢で臨んでいる。
 府医が10月11日に開催した医療政策懇談会では,講師にお招きした勝目やすし衆院議員から電子カルテについて言及があり,「医療の効率化,重複の排除という観点で,医療DXは今後の医療に不可欠であり,概ねすべての医療機関が電子カルテを導入すること,そしてその情報共有の方向性もその中で位置づけられている。導入,対応していくことが望まれるものの,医療機関がそこに投資する余力がなくてはどうしようもないという課題があることは認識している」といった趣旨が述べられた。医師会としては,まさにその課題への対応を国に求め続ける必要がある。

~意見交換~
 その後の意見交換では,電子カルテ情報を国が集約することで,「データがエビデンスに変わっていく」との懸念が示され,「効率的な医療」と称して診療内容をコントロールしていこうとする動きに注意が必要であるとの意見が挙がった。

医療扶助における要否意見書と医療券申請の実務整理について

 医療要否意見書の電子化については,京都市から府医に対し,検討中との説明があり,府医からは実現に向けた取組みを求めるとともに,電子化への対応が困難な医療機関のために,引続き紙ベースでの対応も要望したところである。
 電子申請システムの導入にはまだ時間を要する見込みであり,電子化までの第一歩としてのWord・Excel形式による様式化については,京都市も前向きに検討するとの回答を得たものの,様式化した場合でも,従来どおり福祉事務所の押印がある要否意見書依頼書と併せて「別紙」として提出する必要がある。なお,現在も「主要症状及び今後の診療見込」欄に全部を記載することができない場合は,別紙として各医療機関の独自様式で対応することも可能とされている。
 医療要否意見書は,医療扶助の決定に際し重要な判断材料であり,主治医の記載した医療要否意見書をもとに保険福祉センターや福祉事務所の嘱託医が認定審査を行う際,記載が不十分な場合は判断できず,主治医へ照会あるいは医療要否意見書の再提出を求めることで,かえって主治医にとって煩雑になることもある。府医では毎年,京都医報12月1日号の保険医療部通信において記載方法の周知を行っており,要否意見書の記載にあたって確認を呼びかけている。
 その他,移送に関する証明書やおむつ証明書等の書類についても電子化の要望を伝えたところ,京都市からは各種書類の電子化を推進したいという前向きな回答を得たところであるが,当面は要否意見書の電子化に注力し,検証を進める方針とのことであった。
 医療券の発行については,京都市から改めて,①本人の来所による事前申請,②本人からの電話での申請(事後も含む),③医療機関からの申請―という優先順位が示され,基本的には患者本人による対応を依頼しているが,未発券により請求事務に支障が出ることを避けるため,医療機関から連絡いただいても差し支えないとのことであった。まずは患者本人に申請を促し,どうしても対応が難しい場合や請求事務に影響が出そうな場合には,医療機関から福祉事務所へ連絡いただくようお願いしたい。

保険医療懇談会

 初・再診料の加算や生活習慣病管理料と他の点数の併算定の可否等について整理し,算定にあたっての留意点を説明するとともに,算定漏れを防ぐなど適正な運用により健全な医業経営を呼びかけた。また,療養費同意書の交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書の発行に理解と協力を求めた。

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