2026年1月15日号
相楽医師会と府医執行部との懇談会が 11 月 15 日(土),ホテル日航奈良で開催され,相楽医師会から30 名,府医から7名が出席。「相楽医師会における経営状態の現状」,「5歳児健診」,「相楽医師会公式LINE 使用による当地区の災害時受援体制」をテーマに活発な議論が行われた。
※この記事の内容は令和7年 11 月 15 日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。
冒頭,相楽医師会より,独自に実施した経営状況に関するアンケート結果が報告された。家賃・光熱費などの固定費,人件費,医薬品・消耗品費等の支出が10~15%以上増加する一方で,収入は15~20%減少し,多くの医療機関で収支バランスが悪化し,特に内科・小児科での減収は著しく,危機的な経営状況にあることが示された。さらに,人件費高騰に診療報酬が追いつかず,医療機関は「持ち出し」で対応せざるを得ない限界的な状況にあり,資金繰りの逼迫から診療報酬債権の売却(ファクタリング)の利用まで検討されるほど,現場は極めて厳しい経営環境に置かれているとして,地域医療の存続が危機に瀕していると訴えた。
府医からは,日医の緊急経営調査結果などに基づき,深刻な実態を説明。四病院団体協議会の「2025年度病院経営定期調査(中間報告)」によると,医業利益の赤字病院割合が令和5年度69.9%から令和6年度73.8%へ,経常利益の赤字割合も51.1%から63.6%へと悪化しており,日医の「令和7年診療所の緊急経営調査」でも,医療法人の医業利益赤字割合が令和5年度31.3%から令和6年度45.2%,経常利益赤字割合が24.6%から39.2%へ増加し,診療所を含めて経営環境が大きく悪化していることを報告した。
10月29日の中医協総会では,医療法人経営情報データベースシステム(MCDB)に基づく分析から,収益増を上回る材料費・給与費の増加により23~24年度の医業利益が減少していることが示され,江澤日医常任理事は「過去に例のない危機的状況」と指摘し,物価高騰・賃金上昇分を反映した診療報酬の十分な引上げを強く求めたことを紹介した上で,日医は次期診療報酬改定に向け,補助金と診療報酬の両面での早急な対応,物価・賃金上昇に即応する新たな仕組み,医療費削減ではなく「真水」での財源確保などを主張していると説明。府医としては,骨太の方針2025の「高齢化による伸び+物価・賃金対応」という目安方式から,足し算の論理による確実な公定価格引上げが実行される必要があるとの考えを示した。
~意見交換~
意見交換では,地域医療の現場が抱える構造的な問題と今後の対応策について活発な議論が交わされた。ベースアップ評価料などの現行の支援策は現状では実質的な経営改善効果が乏しく,財務省がコロナ禍の特異な収益データを用いて「診療所は高収益」との論調を展開していることに対し,現場の実態とは大きくかけ離れているとの指摘がなされた。医療機関は地域社会を支える不可欠なインフラであり,その経営基盤が揺らいでいる事実を国民や行政に正しく理解してもらうための広報活動の展開を求める声が上がった。
また,次期診療報酬改定に向けては,医療費の枠内での配分調整ではなく,物価高騰や賃金上昇に見合った「真水」による財源確保と,基本診療料の大幅な引上げを求める声が強く上がり,この危機を打開するには,医療界全体が結束して取組む必要があるとの意見が示された。
国の方針により,こども家庭庁主導で5歳児健診の全国展開が進められている現状について報告。府内では京都市が来春からモデル事業を開始する予定であり,全対象者への問診で絞り込まれた約15%の要支援児に対し,医師が診察を行う「2段階方式」が採用されることを紹介した。
相楽医師会からも意見が出されたとおり,地域によっては小児科医自体が不足しており,発達障害の診断や療育を担う専門医・専門機関に至っては圧倒的に足りていない課題があるとして,受け皿が未整備の状態で早期発見だけを進めれば,保護者の不安を煽るだけで「健診難民」を生み出し,現場に混乱を招くだけであると指摘。特に,「グレーゾーン」の判断は専門医でも難しく,多忙な一般小児科医が日常診療の合間に長時間を要する評価を行うことは物理的に不可能であるとした。
健診の目的は発見ではなく支援につなげることであり,療育体制の拡充こそが急務であるとの見解を示し,行政に対しては,現場の医療機関の善意に甘え過重な負担を強いる制度にならぬよう十分な予算確保と専門機関の整備を先行させるべきであり,府医としても資質向上のための研修会等は実施する一方で,実効性のある持続可能な制度設計が必要であるとの考えを示した。
~意見交換~
意見交換では,人口規模の大きい地域であっても小児科医が極端に不足している現状において,手間のかかる新たな健診業務を担うことに対する懸念が示され,発達障害の疑いがある子どもの数が増加傾向にある中,診断後の療育やサポート体制が整っていない状態で早期発見だけを先行させることは,保護者の不安を煽り,現場に混乱を招くと改めて指摘された。医療機関の自助努力に頼るのではなく,行政が責任を持って受け皿となる療育施設や相談体制を拡充することへの要望が強く出された。
相楽医師会より,相楽医師会公式LINE使用による当地区の災害時受援体制について,Googleマップやフォーム等の無料ツールを連携させ,会員の安否や避難所の状況を即座に可視化する独自のシステムを構築したと報告された。災害時には,国や行政の広域システムが入力の煩雑さ等から機能不全に陥るリスクへの懸念を示し,使い慣れたLINEを活用することで,現場の窮状を迅速に発信し,支援を求める地域としての「受援」体制を確立する狙いを説明した。
府医としては,現在は国主導で情報集約システム「D24H」等の整備が進められている現状を踏まえつつ,相楽医師会の取組みは初動のスピード感や操作性の面で極めて先進的であるとの見解を示した。一方で,収集された情報が地域内で完結しては外部からのJMAT派遣等の支援につながらないため,府医災害対策本部や行政のシステムといかに連携させるかが課題であるとした。