「2026 年度診療報酬改定」,「地域医療構想のこれからの展望」,「新型コロナワクチンの高齢者公費負担の今後の見通し」について議論

 東山医師会と府医執行部との懇談会が11月19日(水),ウェスティン都ホテル京都にて開催され,東山医師会から12名,府医から7名が出席。「2026年度診療報酬改定」,「地域医療構想のこれからの展望」,「新型コロナワクチンの高齢者公費負担の今後の見通し」をテーマに議論が行われた。

※この記事は11月19日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

2026年度診療報酬改定について

 2025年度病院経営定期調査(四病院団体協議会・10月6日公表)によれば,2023年度から2024年度にかけて病院の経営状況は一層悪化し,医業利益の赤字割合は69.9%から73.8%へ,経常利益の赤字割合も51.1%から63.6%へと増加した。さらに,日本医師会(日医)が9月17日に公表した「令和7年診療所の緊急経営調査」でも,医療法人全体で医業利益の赤字割合が31.3%から45.2%,経常利益の赤字割合が24.6%から39.2%へと悪化し,利益率の平均値・中央値も低下していることが示され,医療機関の経営は極めて厳しい状況にある。
 10月29日の中医協総会では,MCDB(医療法人経営情報データベースシステム)を基にした分析から,収益の増加以上に材料費や人件費が膨らみ,医業利益が減少している実態が明らかとなった。これを受け,診療側委員の江澤日医常任理事は「過去に例のない危機的状況」であると強調し,物価高騰・賃金上昇に見合った診療報酬の高い評価を強力に推し進めるべきだと主張した。
 日医は次期診療報酬改定に向けて,①補助金と診療報酬の両面からの早急な対応,②物価・賃金上昇に機動的に対応できる新たな仕組みの導入,③医療費削減ではなく「真水」による財源上乗せ―の3点を提案している。特に②については,改定2年目に実調との間で3年間のずれが生じるため,急激な物価・賃金高騰に対応できるよう推計値を含めた改定水準とする案や,改定2年目に追加上乗せする案を提示している。
 府医も「骨太の方針2025」に記載された「高齢化による伸びに物価・賃金対応分を加算する」という目安から,足し算の論理への転換や,公定価格の分野の確実な引上げが必要だと考えている。近医連の会議では,①基本診療料の大幅引上げ,②外来管理加算の再診料包括化や機能強化加算の廃止,処方箋料の適正化など財務省の提案は容認できないこと,③診療所の診療報酬を引下げて病院に充当するような分断策ではなく外来医療を適切に評価すべきこと,④生活習慣病管理料の算定要件見直し(療養計画書交付を医師の裁量とすること,対象疾患と直接関連のない医学管理料の包括見直し)などを訴え,日医役員とも問題点を共有した。
 一方,財政制度等審議会では「診療所は病院より高い利益率を維持している」として診療所の診療報酬適正化を求める議論がなされ,松本日医会長が即座に反論したものの,予断を許さない状況が続いている。各医療団体と連携し,医療界全体としての総意を示す必要がある。

~意見交換~
 財務省の恣意的なデータを診療報酬改定の判断材料とするのではなく,日医が実施した「令和7年診療所の緊急経営調査」などを活用すべきではないかとの意見があがった。
 これに対して,自治体病院において令和6・7年度の人事院勧告による賃上げが実施されたものの,診療報酬は近年ほぼ据え置きとなっていることから,賃上げと物価高騰が病院経営を圧迫しており,少なくとも診療報酬を10%程度引上げなければ厳しいとの意見が中医協で示されていることを紹介した。その一方で,財務省は財政審などで恣意的なデータを用い,診療所の利益率が病院より高いと主張し,病院への財源の付け替えを求めているとして,日医は緊急経営調査の結果を提示し,病院・診療所にかかわらず医療機関全体が厳しい経営状況にあると訴えていると説明した。
 また,毎年の薬価引下げが医薬品の供給不足を深刻化させており,産業構造の見直しなど根本的な政策が必要ではないかとの意見が出された。これに対して,薬価が引下げられることにより,医薬品メーカーは収益確保のため,医療機関向けの薬よりも薬局などで販売されるOTC薬の製造にシフトする傾向が見られると述べた上で,結果,医療現場では薬剤が十分に供給されず,安定供給が困難となっていることから,薬価抑制政策は国民負担軽減に寄与する一方で,医薬品供給の持続可能性を損なうリスクを抱えており,薬価制度の見直しや産業構造改革が不可欠であるとした。
 他にも,有料職業紹介業者による紹介手数料が医療機関の経営を圧迫していることなどにも議論が及んだ。

地域医療構想のこれからの展望について

 従来の地域医療構想は,団塊の世代が75歳以上となる2025年を目標に,病院完結型から地域完結型の医療への転換を進め,将来の医療需要に応じた病床機能の分化と連携を推進することを主要な目的としてきた。しかし,2026年から検討が始まる新たな地域医療構想では,85歳以上人口の急増と人口減少が一層進む2040年以降を見据えた政策転換が求められている。新たな地域医療構想は医療計画の上位に位置づけられ,入院医療にとどまらず,外来・在宅医療や介護との連携を含む医療提供体制全体の課題解決を対象とする。「治す医療」と「治し支える医療」の役割分担を明確化し,医療機関の連携や再編,集約化を推進することで,限られたマンパワーによる持続可能な医療・介護体制モデルの構築が大きな方向性として示されている。
 京都市全体では人口がすでにピークを過ぎ減少局面に入っているが,東山区では85歳以上人口が今後も増加する見通しで,医療・介護需要の一層の拡大が予測される。府医の在宅医療・地域包括ケアサポートセンターが2024年度に行った調査によると,現在の東山区の在宅医療は60〜70代の医師が中心となって支えているが,医師の高齢化にともない訪問診療の担い手不足が深刻な課題として浮き彫りになっている。地域医療体制を維持するためには,一人の医師ですべて対応する従来の形から,地域全体で支える仕組みへの転換が不可欠とされる。
 今年度から開始される「かかりつけ医機能報告制度」では,各医療機関の対応可能範囲(時間外診療,在宅医療の提供範囲など)を明確化し共有することで,各医療機関の役割分担と相互補完の体制を構築することが期待されている。診療科や施設形態を問わず外来を担うすべての医師がそれぞれの機能を発揮し連携することによって,地域全体としての医療提供力向上につなげることが目的である。
 府医では従来の「地域ケア委員会」を「地域医療対策委員会」へ改組し,新たな地域医療構想への対応を強化するとともに,在宅医療・地域包括ケアサポートセンターを中心に,研修会の開催や多職種・行政を含む「京都在宅医療戦略会議」の定期開催,「在宅療養あんしん病院登録システム」や「京あんしんネット」の活用促進など,地域の在宅医療・介護基盤の充実に取組んでいる。
 今後の地域医療構想において重要となるのは,各医師がかかりつけ医機能を高めつつも,個々の努力に依存しない地域全体の連携体制の構築であり,医師会主導でチームとして地域の医療ニーズに応える体制“面としてのかかりつけ医機能”を発揮することが,持続可能な医療・介護提供体制を実現する鍵となる。

~意見交換~
 少子高齢化にともない在宅医療の需要は高まることが予測されることから,府医では在宅医療・地域包括ケアサポートセンターの設置などの取組みを進めてきたことを紹介。今後は,各医療機関が従来のように外来で患者を待つだけではなく,医療需要の変化を受け入れ,主な診療を在宅医療へとシフトしていくことも視野に入れる必要があるのではないかといった意見が挙がるなど,活発な意見交換が行われた。

新型コロナワクチンの高齢者公費負担の今後の見通しについて

 新型コロナワクチンは現在5社から提供されており,接種実績はファイザー製が最多である。令和8年4月から価格改定が予定されており,製薬会社によって納入価格に差が生じる可能性があるが,高齢者の自己負担額は今年度と同額となる見込みである。なお,令和6年度京都市の接種率は,接種者約7万4千人で約18.9%であった。
 国の審議会では令和8年度に向けて議論が進められており,高齢者肺炎球菌定期接種については,現在使用されているPPSV23価からPCV20価への変更が検討されており,令和7年8月にはPCV21価が薬事承認されている。今後定期接種の対象ワクチンに含める方向で検討が進められる予定である。
 さらに,インフルエンザ定期予防接種においては高用量インフルエンザワクチンの追加が検討されている他,予防接種のデジタル化については京都市と現在調整中である。

~意見交換~
 秋以降,インフルエンザ,コロナ,帯状疱疹のワクチン接種が重なり,現場が混乱するとの意見が出された。これに対して,府医では例年行政には意見しているとしつつも,国の予算編成の都合上,案内が夏頃になるため,接種時期の分散は難しいのが現状であるとして理解を求めた。

2026年2月1日号TOP