「かかりつけ医機能報告制度」,「外来データ提出加算」,「予防接種事務のデジタル化」について議論

 乙訓医師会と府医執行部との懇談会が12月1日(月),乙訓医師会会議室で開催され,乙訓医師会から13名,府医から7名が出席。「かかりつけ医機能報告制度」,「外来データ提出加算」,「予防接種事務のデジタル化」をテーマに議論が行われた。

※この記事の内容は,12月1日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

かかりつけ医機能報告制度について

 かかりつけ医機能報告制度は,医療法に規定されたもので,各医療機関がその機能や専門性,地域の実状に応じて連携しつつ,自らが担うかかりつけ医機能の内容を強化することによって,必要なかかりつけ医機能を確保することを目的としている。より多くの医療機関が自院の医療機能を報告することによって,各地域の医療提供体制の実状を可視化させ,面としてのかかりつけ医機能を発揮することを目指すものである。
 一部の医療機関を優良なものと認定したり,患者の受療行動に制限を加える等の趣旨のものではなく,フリーアクセスの下で,国民・患者がそのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるよう,従来の「医療機能情報提供制度」をよりわかりやすく刷新し,情報提供を強化するものである。
 病院・診療所の別や診療科にかかわらず,ほぼすべての医療機関が報告でき,報告する項目はすでに多くの医師が実践している内容である。報告する医療機関が少ない場合,財務省は医療費抑制を目的として,かかりつけ医と非かかりつけ医の分断を図り,かかりつけ医を登録制として患者一人当たりの定額払い制を導入する「かかりつけ医の制度化」を強力に推し進めてくることが予想される。
 今後のスケジュールとしては,令和8年1月より医療機関から都道府県への報告が開始され,同年4月にはウェブサイト等で結果が公表される予定である。府医としても,「かかりつけ医機能報告制度に係る説明会」を開催し,周知を図る予定である。
 報告する内容には,「1号機能」と「2号機能」があり,1号機能を有する医療機関が2号機能を報告することとなっている。1号機能については,「日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能」として,①「具体的な機能」を有することおよび「報告事項」について院内掲示により公表していること,②かかりつけ医機能に関する研修の修了者の有無,総合診療専門医の有無,③17の診療領域と一次診療を行うことができる疾患,医療に関する患者からの相談対応―等を報告事項としており,②については,あくまで「有無」を報告すればよく,「無」であっても要件を満たさないというものではない。
 2号機能については,1号機能を有する医療機関が報告するもので,(1)通常の診療時間外の診療,(2)入退院時の支援,(3)在宅医療の提供,(5)介護サービス等と連携した医療提供(主治医意見書の作成など)―等への対応の可否が報告事項となっている。
 上述のとおり,かかりつけ医機能報告制度の報告内容は,従前から各医療機関が地域の中で実践しているものであり,新たに取組みを要するものではない。従来どおり,地域の中で医療機関同士が連携を深め,それぞれの役割を理解して相互に助け合うことで,地域における面としてのかかりつけ医機能のさらなる充実を目指していくことが重要である。

~意見交換~
 その後の意見交換で,この報告制度は,かかりつけ医を「制度化」し,コントロールしやすい形にするという財務省の目論見を阻止したものであり,「かかりつけ医」と「非かかりつけ医」という分断をさせないためにも,すべての医療機関に報告していただきたいと呼びかけ,従来どおり,地域の医療機関がお互いの医療機関情報を活用しながら横の連携を深め,面としてのかかりつけ医機能を発揮して患者を支えていくことが重要であるとの考えを示した。

外来データ提出加算について

 外来データ提出加算は,データを定期的に国に提出することを評価するもので,生活習慣病管理料の加算として一人50点が加算される。他にも,在宅,リハビリについて同様の加算が設定されている。
 施設基準の届出の時点で,試行データの提出を期限までに行う必要があるなど,大変煩雑である上に,届出後も毎月データを作成して国に提出する必要がある。また,提出が遅延したり,データが規格に合わなかったりすると算定できなくなる。最近では,レセコンによって提出用データをある程度まで自動生成できるものもあるが,医療機関として費用対効果を検討した上で,レセコン業者等にご相談いただく必要がある。
 10月17日の中医協総会で,かかりつけ医機能に係る評価について議論された際,機能強化加算について,「データ提出についての評価を行うことをどのように考えるか」という記載があり,暗に機能強化加算の要件に「外来データ提出」を追加しようという意図が見え,支払側が外来データ提出を強く求めていることがわかる。厚労省も外来データ提出加算の届出率が4%弱という状況を受けて,「非常に少ないのが実態」と説明している。
 また,11月26日の中医協総会では,入院におけるデータ提出加算は,すでに8割近い病院が届出していることが示されており,データ提出加算で国に吸い上げられたデータは,「DPC制度の影響評価」や「制度の評価基準の再整理」にフル活用され,改定のための基礎データとして扱われている。厚労省はより多くのデータを集めるため,毎回の改定でデータ提出加算の届出を要件とする入院料を拡大している状況である。実データに基づく政策判断に対しては,診療側の「肌感」や「診療の実態」といった論理では反論が難しく,入院ではすでにデータ提出加算によって集められたデータが大きな影響を及ぼしている。
 外来データ提出加算が普及し,より多くの医療機関が算定すると,国は外来診療に係る「より精度の高い情報」を取得することとなる。ただでさえNDB(レセプトデータ)からの情報が恣意的に利用される傾向がある中で,さらなる影響が懸念される。生活習慣病診療データを収集して政策立案や質評価に利活用する狙いが見て取れるため,医師会としてはやや慎重な姿勢を示している。

~意見交換~
 その後の意見交換では,国が情報を収集するだけで,患者へのフィードバックがないのであれば意味がないと指摘があり,現在は外来データ提出加算の算定に手間がかかる状況であるが,「効率的な医療」や創薬等の二次利用に向けて,国が医療情報プラットフォームで情報収集に本腰を入れるのであれば,施設基準等のハードルを下げていくのではないかとの意見が挙がった。

予防接種事務のデジタル化について

 予防接種情報の管理方法が自治体ごとに異なり,転居時の履歴引き継ぎや接種漏れ防止のための情報共有に課題があることや,新型コロナワクチン対応を通じて,接種データが迅速に共有される仕組みの重要性が改めて明確となったこと等を背景として,厚生労働省が「予防接種事務のデジタル化」を中長期的な政策として位置づけ,自治体と医療機関双方の業務効率化,住民の利便性向上を目指して取組みが進められている。新たなシステムを構築し,マイナンバーカードを活用することで,紙の予診票と予診票への接種記録の記入や請求処理を電子で実施する仕組みの導入が検討されている。
 デジタル化のメリットとして,接種対象者については,スマホ等で接種のお知らせの受取りや接種記録の閲覧が可能となる,デジタル予診票の利用により手書きの負担が軽減される,里帰り出産等の住所地外接種を希望する場合の事前申請手続きが不要となる―,また,医療機関については,接種記録をシステムで容易に確認でき,接種間隔チェックを効率化できる,ワクチン情報がバーコード読取で登録可能となり,有効期限もシステムで自動チェックが可能となる,さらには,接種記録を登録することで自動的に請求が行われ,業務が効率化される―等が挙げられている。自治体においても,デジタル通知等により,効率的な勧奨が可能となる,接種記録がシステムに直接登録されるため登録作業が不要になる―としている。
 国は,令和8年6月までに予防接種のデジタル化ができる環境を整える予定としており,一部の自治体では,令和8年6月以降,一定の準備期間を経てデジタル化を予定しているとのことであるが,デジタル化には各自治体の健康管理システムを国が定める標準様式に適合させる必要があるため,多くの自治体では令和10年度以降となる見通しである。
 デジタル化に向けた医療機関での対応として,主に①集合契約の締結と,②医療機関アプリの活用が考えられる。全国の医療機関と全国の自治体間で,予防接種委託契約の集合契約を締結することが検討されており,委任状の提出が必要となる。
 また,医療機関において,パソコンまたはタブレットにアプリをダウンロードすることで,予防接種事務を実施することが検討されており,予防接種の資格確認,予診,接種記録の作成・登録,費用請求をアプリで実施することが想定されている。現時点での説明では,デジタル化の後も,デジタル予診票を紙に打ち出すことや,従来どおり紙の予診票での接種,予診票による請求を継続することも可能とされている。
 デジタル化には期待が大きい一方で課題もあり,特に小規模医療機関では,電子カルテ・レセコンの対応状況に差があることが考えられ,具体的には,ベンダーによる対応の遅れ,費用負担,事務作業の新機能への対応(運用定着)等が障壁になるのではないかと考えている。また,自治体ごとでシステムに差が生じたり,過渡期においては導入スケジュールや運用方法が異なるなどの混乱が生じる可能性もある。デジタル化が進んだとしても,高齢者への対応も含め,引続き紙による案内や対面確認が求められることや,システム障害時の対応など,デジタル化が足を引っ張る場面も出てくることが想定される。
 上記のような課題が考えられる中で,行政との協議を踏まえた現在の府医の認識としては,まだ詳細が最終決定したものではないものの,自治体としても国の原案は実現が困難なことを感じており,特にデジタル化の費用を医療機関が負担することは現実的でないと考えている。当面は紙ベースで運用を継続することも可能であることから,行政の動向を注視しつつ,慎重に対応すべきと考えている。

保険医療懇談会

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