2026年3月15日号
府医では,在洛新聞放送編集責任者会議(月曜会)との懇談会を2月5日(木),京都市内のホテルで開催し,府医から7名,月曜会から10社11名が出席した。
本懇談会は,医療・介護・福祉など社会保障を取り巻く問題について各新聞社・放送局等幹部と意見交換を行い,国民の目線に立った医療のあり方について相互に理解を深めることを目的として平成20年度から始まったもので,今回で14回目の開催となった。
懇談会では,「社会保険料と消費税を下げるとどうなるか」をテーマとして,活発な意見交換が行われた。
松井府医会長は冒頭の挨拶で,医療現場が直面する課題について我々の思いを伝えることにとどまらず,府民の健康を守るという使命をマスコミの方と共有し,平素から情報交換していきたいとの意向を示し,忌憚のない意見を求めた。
最初に米林府医副会長と廣嶋府医理事より,「社会保険料と消費税を下げるとどうなるか」を漫談形式にて問題提起した上で,米林府医副会長より社会保険料や消費税の引下げを巡る議論について説明した。
社会保障制度は,年金・医療・介護を中心とする社会保険,社会福祉,公的扶助,そして保健医療・公衆衛生から成り,全世代の生活を生涯にわたって支える国のセーフティーネットある。
近年,少子化と人口減少により,将来この社会保障が維持できるのかという不安が強まっている。特に現役世代では,給付を実感しにくい一方で負担感が大きく,インターネット上の情報の影響もあり,「低福祉・高負担」という印象が広がっている。
一方で,社会保険料の軽減を図ろうとすれば,公費での代替,自己負担の増加,あるいは医療水準の引下げといった選択を迫られ,現状では財源の多くを赤字国債に依存しており,単純な減税や保険料引下げは現実的ではない。また,日本の医療費はGDP比で主要先進国と同程度であり,高齢化率を考えれば決して過大とは言えない状況である。
公的保険の給付範囲を縮少するOTC類似薬の保険適用除外や高額医療を民間保険に委ねることは,結果的には国民負担の増加につながり,社会保障制度そのものの基盤を揺るがすことになる。
国民意識調査では「国民は負担増を一切容認していない」という通説とは異なり,給付と負担をセットで問う調査では,負担増を一定程度容認する回答が4割から6割を占めている。また,現役・若年世代だけが特に給付削減を望んでいるという傾向も確認されていない。
医療提供側として重要なのは,国民皆保険制度の理念,すなわち所得の多寡にかかわらず公平な医療を受けられるという考え方を守ることである。制度の見直しにあたっても,医療の質と安全を損なわないことが大前提であり,そのためには国民との対話と社会保障教育が不可欠である。
以上を踏まえ,負担だけを切り取った議論ではなく,給付と負担を一体として捉え,国民皆保険の理念を将来にわたり維持していく視点が重要である。
~意見交換~
社会保障制度の仕組み等を日医から国民への啓発活動はどのように考えているかとの質問に対して,社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとするためには,国民負担のあり方と給付のあり方を一体として検討する必要があり,負担を軽減するのであれば,給付をどのように見直すのかという議論は避けて通れないとの見解を示した。
府医としては,医療・介護・福祉を担っていく上で,社会保障財源は国民にとって極めて貴重な財源であるという認識を共有していただくことが不可欠であることから,制度の仕組みや基本的な考え方について,できる限り分かりやすく国民に示していく必要があると指摘した。そのため単に紙面で情報を発信し,手に取っていただくだけでは十分とは言えず,今後は対話形式など双方向のコミュニケーションを取り入れながら理解を深めていただく取組みを検討していく必要があるとの考えを示した。
また,医師会として国に対して意見を述べたり,何か働きかけ等はしているかとの質問に対しては,医療政策に関して政権与党に意見を申し述べる立場にあるとし,医療は公定価格である診療報酬や各種政策によって運営が左右される分野であり,政権与党に地域医療の実情を説明し,理解を求める働きかけを行い政策形成に関わっていると説明した。