2026年5月1日号
府医では,3月14日(土),標記代議員会をWeb会議にて開催。議案の決議は書面による議決権行使をもって行われた。
松井府医会長の挨拶に続き,「令和7年度庶務および事業中間報告」,「令和8年度京都府医師会事業計画」,「令和8年度京都府医師会予算」が報告され,その後地区からの代表質問ならびにその答弁が行われた。
議事に移り,第1号議案「令和8年度京都府医師会費の賦課徴収および減免に関する件」は,事前に議決権行使書による採決が実施され,賛成多数で可決された。
日医代議員・予備代議員選挙は,「日本医師会定款第16条」ならびに「一般社団法人京都府医師会における日本医師会代議員・日本医師会予備代議員選挙規定」に基づいて行われた。府医からの代議員・予備代議員の定数は各7名であり,下記のとおり当選した(記載は届出順)。
続いての協議では,2040年に向けて必要な医療を安定的かつ継続的に提供できる体制の確立に資する診療報酬体系の構築と,給付と負担のバランスについて政治的・社会的合意形成に向けた国民的議論の展開を求める決議が採択された(別掲)。
冒頭,令和8年度の診療報酬改定では,約30年ぶりに3.09%のプラス改定となったことについて触れ,物価の高騰,賃金の高騰に,公定価格である診療報酬がずっと置き去りにされてきた結果,医療機関の経営が危機的状況に追い込まれたことを日医が強く訴え,政府に働きかけた結果であり,高く評価されるものであるとの見解を示した。今後,インフレ基調に転ずる社会情勢の中で,他業種に後れを取らない賃上げの仕組みとして,現状のベースアップ評価料という方法の是非を含めて議論し,医療現場で働く人材の確保のための対応と,光熱費や医療材料費等の高騰を補填する仕組みが必要との認識を示し,引続き日医を通じて国に働きかけていく必要があるとした。
昨年12月の医療法の一部改正は,高齢化にともなう医療ニーズの変化と人口減少を見据え,地域での良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を構築することを目的として,①2040年頃を見据えた地域医療構想の見直し,②医師偏在是正に向けた総合的な対策,③医療DXの推進―の3つの柱で構成されていると説明。
2040年を見据えた新たな地域医療構想は,これまでの地域医療構想が入院医療,病床の機能分化・連携が焦点であったのに対し,外来医療,在宅医療・介護の連携,さらには人材確保にまで広げ,医療提供体制全体の将来ビジョンへとアップグレードするもので,中長期的な人口構造の変化やそれにともなう医療ニーズの質・量の変化を見据え,今後どのような医療提供体制に見直していくかを検討する,「医療提供の将来像」を各医療圏で想定することが求められているとした。
また,本年1月からスタートした「かかりつけ医機能報告制度」については,地域の医療機関が担う役割が可視化され,それぞれの医療機関が協力し合って,面としてのかかりつけ医機能の充実に役立てられることに期待を示すと同時に,当該地域でどのような機能が不足し,補填が必要であるかの参考にもなるとして,医療圏ごとに必要な医療と提供可能な医療を検討し,将来像について議論を進める材料とすべきとの考えを示した。
医師偏在の解消に向けて,外来医師過多区域での新規開業に際して新たなルールが示されるとともに,京都・乙訓医療圏がその外来医師過多区域に指定されたことに言及し,外来医師が常態的に多い地域における無床診療所の新規開業を一律に禁止するものではなく,開業前に都道府県へ医療機能等を示して届け出た内容を踏まえて,都道府県から外来医療に係る協議の場への参加や地域で不足する外来機能の提供を要請できることがポイントであるとした。地域医療への協力や医師多数区域でも不足する機能への協力を求めるものであり,場合によっては,医療圏内あるいは別の医療圏への医師少数地域への応援も「地域医療への協力」に含めることができるのではないかとの見解を示した。
国は,全国医療情報プラットフォームの構築に向けて,マイナ保険証への一本化,電子カルテ情報の標準化,診療報酬改定DXの実用化を内容とする医療DXを推進しており,例えば,既往歴やアレルギー等の情報把握により,救急患者に対する迅速な処置が可能になることや重複投薬の防止が期待できること,出生時からの予防接種や検査結果等,生涯にわたる健康情報をパーソナルヘルスレコードとして個人で管理できること,さらには蓄積されたビッグデータを解析し,より精度の高い診断補助や創薬に利用すること―等が想定されると説明。方向性は明確であるものの,セキュリティの問題や現場の経済的負担,作業負担の問題など多くの課題があると指摘した上で,日医は,医療DXを進めるにあたって,誰一人取り残すことなく,政策として進める以上は政府が経済的負担を担うべきと主張していることを紹介した。
最後に,2040年向けて少子高齢社会が一層加速していく中で,政府が矢継ぎ早に打ち出す様々な政策の意義を適切に捉え,需要に応じた医療提供体制をより具体的に構築していくことが急務であるとし,府医としても会員各位への迅速な情報提供と対策の共有に努める意向を示し,挨拶を締めくくった。
代表質問では,下京西部,上京東部,京都市西陣の3地区から代議員が質問に立ち,医療が抱える課題について質疑が行われた。質問内容および執行部の答弁(概要)は次のとおり。
◆中野 昌彦 代議員(下京西部)
〔災害対策について〕
災害対策に関して,下京西部と下京東部の両医師会と下京区,南区の行政担当者との間で開催している災害担当理事連絡協議会において,京都駅周辺の膨大な数の被災者対応がしばしば議題に挙がる。宿泊の過半数を外国人が占める現状では,災害時医療におけるツーリスト対策を地区医と地域行政だけで論じるには難が大きい。
自然災害は,複数の市町村,行政区にわたる問題であり,特に京都市域や重点区域の準広域の災害医療に関しては,発災直後および以降において,対応可能な診療所や病院の把握,地域固有の医療課題への準備・対応,関連行政との折衝等について,府医が率先してガイドラインを策定することが望ましいと考える。
また,日進月歩で進化する通信ディバイスについて,現時点の最良手段を用い,府医主導で早急に取組む姿勢が大事と考える。
◇髙階府医理事
自然災害は行政区または地区医の区域を越えて,広範囲に影響及ぼすものであり,府医としても地区単位のみで対応するには限界があることを認識している。また,各地区医と各行政区が現場レベルで協議を重ねていくことは極めて重要であり,府医はそれら全体を俯瞰し,調整していく役割を果たすべきと考えている。
府医では,令和7年1月に「京都府医師会防災業務計画」を策定し,京都府,京都市,また地区医との関係を連携させた災害医療支援体制という基本的な枠組みを整理するとともに,災害時には府医に災害対策本部を設置し,各地区医と連携しながら被災状況を確認すること,あるいはJMATの派遣を行う体制の構築に取組んできた。
平時においても,府医の救急災害危機管理対策委員会および災害対策小委員会を開催し,地区医からの委員を増員して,地区医からの意見を反映できるように体制強化を図っている。
行政との連携・協働体制について,特に京都市域においては,地区医と行政の区分けが異なるという大きな課題が存在しているため,京都市が各区を横断的にまとめ,府医と実効性のある協働体制を構築していくことが重要であると同時に,各地区医においては,隣接する医師会との連携を一層強化していく必要があると考えている。府医としては,各地区の個別の活動を否定するものではなくて,それらを尊重した上で,広域的な視点から統合・調整を行うことを想定している。
京都駅周辺をはじめとする地域においては,観光客,外国人,いわゆる帰宅困難者の医療対応が大きな課題になっており,京都市では,清水・祇園地域および嵯峨・嵐山地域における「帰宅困難観光客避難誘導計画」を策定して大規模災害に備えているものの,医師会等の連携など医療分野については必ずしも十分とは言えない状況にある。この点は,各地区医と行政との間で,当該地域の問題として連携を深めていただきたいと考えている。
本日いただいたご指摘を踏まえ,府医では引続き災害対策小委員会において,都市型災害医療への対応,また地区医を超えた準広域的視点での災害医療体制の整備および医療連携,発災直後における医療機関の稼働状況の把握等を検討し,対応の強化に努める所存である。
最後に,通信機器について,情報共有手段は日進月歩で進化しており,機材選定に苦慮しているところである。スターリンクを基本として,さらに進んだものが来年度にかけて出てくる予定で,その中でどれを選択するかということである。それらを見据えて,遅きに失することのないよう対策していきたいと考えている。今後も各地区医のご意見を伺いながら,より実効性のある災害医療体制構築に取組んでいきたいと考えている。
◆任 書熹 代議員(上京東部)
〔今後の医師会活動の維持・発展に向けたビジョンについて〕
マイナ保険証やかかりつけ医機能報告制度の開始など,急激な制度変化に翻弄され,日常診療や医師会活動において対応すべき業務が増加している。地区医のマンパワーは不足し,多くの会員に何らかの役職を担っていただくことで,医師会業務を維持している状況である。
今般,京都・乙訓地域が外来医師過多区域に指定されたが,当地区においても,将来的にA会員のさらなる減少が危惧される。このような状況下において,今後,医師会活動を長期的に維持・発展させていくために,府医としてどのようなビジョンで対応していくのかを伺いたい。
◆金光 京石 代議員(京都市西陣)
〔外来医師過多区域における新規開業者への対応について〕
令和8年4月1日施行の改正医療法により,外来医師過多区域での新規開業に対する規制が強化されることとなり,京都・乙訓医療圏が候補区域として提示された。新規開業者に地域医療への協力を要請するということであるが,外来医師数は単純な人数指標に過ぎず,診療科目等の実態を反映していない等,様々な問題が山積している。
地域医療への協力要請内容のうち,多くは地区医が担っている業務であり,新規開業者が医師会に入会の上,それらの業務を実施していただくことが理想的であるが,協力要請には応じるものの,医師会には入会しない新規開業者が出てくることが想定される。地区医として,新規開業者にどのように接し対応すべきか,現時点での府医の考えをお聞かせいただきたい。
◇禹府医副会長
4月1日から施行される改正医療法に関して,厚生労働省から昨年12月25日付で「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」が公表され,この中で,実効性のある総合的な医師偏在対策の推進が,医療法に基づく医療提供体制確保の基本方針として位置づけられている。
医師偏在対策は,新たな地域医療構想と一体的に取組む必要があり,今回,全国の二次医療圏の中から国が指定する9か所の外来医師過多区域の候補区域の1つとして,京都市・乙訓医療圏が選定されたが,京都市・乙訓医療圏の中でも,医師数や診療科の偏在があるため,おしなべて「医師過多」とは言えないと考えている。
この改正医療法第30条18の6の第3項には,無床診療所の開設を希望する者は,開設日の6か月前までに,当該地域における地域外来医療の提供に関する意向などを都道府県知事に届け出なければならないとあり,同第4項には,この届出者が地域外来医療の提供をしない場合は,協議の場において,その理由の説明を求めることができるとしている。また,同第6項で都道府県知事は,理由等がやむを得ないものと認められない場合,期限を定めて当該区域における地域外来医療の提供を要請することができるとしている。
具体的な流れとしては,新規開業希望者は開設6か月前までに事前届を出す際,都道府県に事前相談を行い,地域外来医療の提供に関する意向等を示した事前届出を提出する。これは,開業予定地域において,どのような医療機能を担ってもらうとバランスが取れるのかを判断するための情報提供であると言える。
当該地区医においては,例えば,学校医や産業医等の公衆衛生活動,各種検診事業への参加,感染症対応としての発熱外来への協力,在宅医療連携や地域によっては休日・夜間の輪番制への参加,また,当該地域における診療所および診療科の分布状況など,地域で求められるニーズの情報整理が求められる。学校医の場合は,学校名に加えて児童生徒数や年間の出務回数,業務内容など具体的な情報提供も必要となる。また,医師会の班会議や各種委員会への参加方法,地域における既存の連携ルート等の提示も必要であり,不足している機能を整理し,地域医療への参加の入り口を整備するのが地区医の役割になると考えている。
京都府が圏域ごとに設置する協議の場に地域代表として地区医が参加し,新規開業の届出内容の確認や地域で不足する医療提供の議論が行われる予定である。外来医師過多区域で新規開業希望者が出た場合,開業の許可・不許可,あるいは行政処分,勧告などの権限行使は基本的に都道府県の領域であり,地区医の役割はあくまで調整,合意形成,フォローが中心となる。
日医および府医は,自由開業制の堅持,フリーアクセスの確保のため,各地域における面としてのかかりつけ医機能を発揮することを重視している。診療科目にかかわらず,すべての診療所の医師はかかりつけ医としての機能を有しており,診療科目以外の診療科や専門領域以外については,地域あるいは地域外の診療所または病院への紹介・連携によって,その患者を地域で支えることになる。新規開業希望者にもかかりつけ医機能を発揮していただき,地域医療に協力していただけるようメニューを提示するためには,各地域のニーズの具体化が不可欠になる。協議の場において,地域医療への協力の意向確認,地域医療への参加の入り口整備が地区医の実務的な役割になると考えている。
今後も地区医の活動を維持するためのマンパワーが重要であることは言うまでもなく,医師会活動への参画についても,具体的な活動内容の整理とともに,参画を得るためには提示の仕方にも工夫が必要になると考える。良心的とは言えない開業コンサルタントや,いわゆるディベロッパーに言われるがまま,医師会に入会せず新規開業する事例は,これまでも各地区医から報告を受けており,地域医療がどのようなものであるのか,医師会がどのような役割を果たしているのかを十分に理解されていないのではないかと考えている。
今回の改正医療法で新規開業希望者に対する協議の場が設置されることは,新規開業希望者に対して医師会に関する説明の機会が与えられることになる。地区医からの十分な説明とアピールによって,医師会に入会することの意義を理解していただける良い機会となり,それにより医師会への入会者が増えることが期待できると考えている。
最後に,3月3日に開催された厚生労働省の地域医療構想及び医療計画等に関する検討会において,2027年度から始まる第8次後期の医師確保計画と外来医療計画の見直しに向けた取りまとめ案が大筋で了承された。この中で,地域で不足する医療機能などを提供するとした診療所が,実際にそれを提供しているかどうか,国は医療関係団体等と連携しながら確認するための方法を検討すると記載していることを申し添える。
令和8年度診療報酬の本体改定率はプラス3.09%で決着した。医療機関の厳しい経営状況を踏まえ,改定の重点課題とされた物価高騰・賃金上昇に対処するため,30年ぶりに3%を超えたことは評価できる。
今後,医療・介護の複合ニーズを抱えた高齢者を支えていくためには,地域包括ケアのさらなる深化・推進が必要であり,将来の人口減少と疾病構造の変化を考慮すると,医療機関の役割を明確化し,連携と機能分化の検討を進めていかなければならない。働き手世代が激減する中で地域完結型の医療提供体制を構築するには,必要である診療行為にかかる材料や設備などのコストと人件費が診療報酬で正当に評価されるべきであり,そのあり方について見直す必要がある。
一方,「骨太の方針2025」において,現役世代の社会保険料負担の軽減は,持続可能な社会保障制度の重要な取組の一つとして位置付けられたが,OTC類似薬の患者負担の引き上げをはじめとする一連の動きは,医療保険の給付範囲を縮小させ,国民皆保険制度の理念から外れるものである。皆保険制度は個人のリスクに備えるだけでなく相互扶助の機能を併せ持つことへの国民の理解が必要であり,給付と負担のバランスをとる政治的・社会的合意形成に向けた国民的議論こそが重要であると考える。
2040年に向けて,必要な医療を安定的に届け続けられる体制の確立と現場の実情を十分に反映した診療報酬体系を構築するために,以下を強く要望する。
記
以上
2026 年3月 14 日
京都府医師会 第 215 回臨時代議員会