第161回 日医臨時代議員会

「診療報酬改定について〜残された課題への今後の日医の対応〜」
~米林府医副会長が代表質問~

 令和8年3月 29 日(日),日医臨時代議員会が開催され,松本日医会長挨拶の後,令和8年度事業計画および予算について報告された。なお,同日の代表質問では,近畿ブロックを代表し,米林府医副会長が質問に立ち,診療報酬改定について〜残された課題への今後の日医の対応〜について日医の見解を求めた。
 また,松本日医会長は,本臨時代議員会で,6月の日医次期会長選に向け,3期目を目指し出馬を表明した。

松本日医会長 挨拶

1.令和7年度補正予算・令和8年度診療報酬改定

松本 日医会長

 令和7年度補正予算は,医療・介護分野で約1.4兆円規模となり,医療分だけでも1兆円を超える大規模な措置となった。これを受け,日医は,補正予算を診療報酬改定財源の先取りとするのではなく,インフレ下における賃金・物価上昇に対応したさらなる財源の上乗せが必要であると強く主張してきた。
 その結果,令和8年度診療報酬改定は本体3.09%となり,賃上げ・物価対応のための財源が一定程度確保された。本改定は,厳しい経営環境に置かれてきた医療機関にとって,今後の方向性を示す重要なものとなっている。
 なお,補正予算や改定の効果については今後の検証が必要だが,まずは経営の下支えとなり,持続可能な医療提供体制の確保に寄与することが期待される。

2.医療法等の改正

 医療法等の一部改正法が令和7年12月に公布され,本年4月より順次施行される。
 「新たな地域医療構想」に加えて,医師偏在対策では外来医師過多区域に関する新たな仕組みが導入される予定であり,日医では説明会や情報提供を通じて対応を進める。
 今後も地域の実情に応じた医療提供体制の構築に向け,制度運用や必要な支援策について継続的に関与していく。

3.健康保険法等改正法案

 健康保険法等の一部改正法案が閣議決定され,国会での審議が予定されている。主な論点は以下のとおりである。
・OTC医薬品との代替性が特に高い薬剤を用いた療養等に関する一部保険外療養の創設
・出産費用の自己負担軽減と周産期医療体制の確保
・国民健康保険組合への国庫補助の見直し
 特にいわゆるOTC類似薬については,保険適用除外は回避されたものの,患者負担の増加が懸念されており,引続き慎重な対応が求められる。
 また,出産費用については「無償化」と「安全で質の高い周産期医療提供体制の確保」の両立が明確化されており,今後の給付水準の議論が重要となる。

4.組織強化と会費の有効活用

 会員数は過去最高を更新している一方で,会員構成の変化を踏まえ,会費の有効活用が重要となっている。
 その一環として,日医雑誌・ニュースの電子化推進やメール配信の活用,WEB会議のさらなる導入など,効率的・効果的な運営を進めていき,コスト削減と利便性向上を図り,医師会活動の充実につなげる。

5.かかりつけ医機能報告制度

 令和7年4月より開始された「かかりつけ医機能報告制度」は,ほぼすべての医療機関が対象となっている。
 1号機能は「日常的な診療を総合的かつ,継続的に行う機能」であり,ほぼすべての医療機関が有している機能となっており,本制度の適切な運用には正確な報告が不可欠であるが,操作の分かりにくさや誤報告の事例も指摘されている。
 日医では上記の注意点や具体的な手順などについて説明会を開催し周知を図ってきたが,都道府県医等においても期限内の報告および修正への協力をお願いしたい。

代表質問(主な代表質問に対する回答を記載)

◇「診療報酬改定について〜残された課題への今後の日医の対応〜」について代表質問

米林府医副会長

米林 府医副会長

 令和8年度診療報酬改定は,約30年ぶりとなる3.09%のプラス改定となり,物価高騰や人件費上昇に直面する医療機関の経営に一定の配慮が示された。しかしながら,診療報酬と実コストの乖離はなお残されている。
 少子高齢化と人口減少の進展により,医師偏在,働き方改革,地域医療構想の再構築といった課題が一層深刻化している中では,単なる人員配置の調整にとどまらず,医療資源の再配分や機能分化・連携の強化を通じた持続可能な医療提供体制の構築が求められる。
 また,過去30年間の診療報酬改定は財源論が優先されてきた側面があり,必要な医療を提供することで経営が成り立たない事例が存在する。診療報酬は本来,医療に要するコストを適切に反映すべきものであり,人口構成や疾病構造の変化に対応した持続可能な医療提供体制を確保するための今後の診療報酬改定のあり方について,日医の見解を質問した。

茂松日医副会長

茂松 日医副会長

 これに対し,茂松日医副会長は,令和8年度診療報酬改定について「30年ぶりに3%を超えるプラス改定が実現した」と評価した上で,その背景には,地域の医療提供体制の存続に対する強い危機感のもと,医療界が一丸となって対応したことがあると述べた。
 今回の改定は,①インフレ下における賃金・物価上昇への対応を別枠で確保したこと,②純粋に財源を上乗せする,いわゆる「真水」による対応としたこと,③令和7年度補正予算の土台を「発射台」としたこと,の3点が大きな柱であり,今後の指針となる重要な改定であるとした。
 特に,物価対応料や外来・入院ベースアップ評価料については,令和8年度に加え,令和9年度にはその倍の点数設定を見込むなど,これまでにない対応が行われている点が特徴であると説明。
 また,救急搬送件数や全身麻酔手術件数を評価指標に用いるなど,新たな地域医療構想に先行した内容も盛り込まれており,こうした動きが,これまで築かれてきた地域医療の役割分担や連携体制に与える影響については,今後も注視・検証し,必要に応じて見直しを行う必要があると答弁した。

◇日医かかりつけ医機能研修制度の研修修了申請時期の変更について

城守日医常任理事

城守 日医常任理事

 日医のかかりつけ医機能研修制度は,基本研修・応用研修・実地研修の3区分で構成され,3年間ですべての要件を満たすことで修了となる。
 基本研修の修了要件となる日医生涯教育認定証は12月1日付で発行され,修了申請の受付は原則として12月から翌年1月までの2カ月間とされている。一方,修了証の発行日は4月1日付であるため,実務上は各都道府県医において12月から3月までの間で申請受付が行われているのが現状である。
 今後,修了申請時期については,各都道府県の運用状況を踏まえ,必要に応じて柔軟な対応(申請期間の延長等)を検討する。
 また,国のかかりつけ医機能報告制度では,「研修修了者の有無」が報告項目の一つとされており,これに対応するため日医は,2025年度から従来とは別に新たな研修を設けている。
 本制度は医療機能情報提供制度に追加され,G-MISで報告される仕組みで,内容は院内掲示や診療領域等の「1号機能」と,時間外対応や在宅医療,介護連携等の「2号機能」の2区分。
 目的は,各医療機関が機能や専門性を活かして連携し,地域に必要な医療機能を確保することであり,患者の受療制限や医療機関の格付けを行うものではないが,報告を行わない際の診療報酬の減算については,財務省が財政審で提案している。医療機関を区別し,登録制などにつなげる狙いがあることから,すべての医療機関が積極的に報告することが極めて重要である。名称が類似するため混乱もあるが,制度の趣旨が異なるため,正確な把握と対応に理解をお願いしたい。

松本日医会長

 かかりつけ医の「制度化」と「機能報告制度」は別のものである。日医は,かかりつけ医の制度化については反対の立場をとっている。制度化が進めば,登録制・認定制・包括払いといった仕組みに傾く可能性があり,地域の実情に応じた柔軟な医療提供が損なわれかねない。
 一方で,かかりつけ医の機能を報告する制度については,各医療機関が担う役割を可視化し,地域における医療提供体制を維持・強化する観点から重要であると考えている。
 このように,制度化には反対しつつも,機能報告を通じて地域医療を守っていくという考え方であることをご理解いただきたい。

◇医療 DX の推進と現場とのギャップ

長島日医常任理事

長島 日医常任理事

 医療介護総合確保推進法の改正(昨年12月のいわゆる医療法改正)において,政府は2030年末までに電子カルテ普及率「概ね100%」の達成を掲げ,医療機関の業務における情報の電子化を推進する責務を明確化した。ここでいう普及率とは,「電子診療録等情報に係る電磁的記録を利用する体制を整備している医療機関の割合」と定義されている。
 現在,政府が開発を進める「標準型電子カルテ(導入版)」は,紙カルテや既存の電子カルテを使用している医療機関であっても,電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスなどの医療DXに係る電磁的記録の閲覧・共有・提供を可能とする機能を備えるとされており,この定義に合致するものと考えられる。
 一方で,こうしたDX推進にともなうセキュリティ対策や維持管理費用に対する政府の具体的な支援策は,現時点では明らかではない。電子カルテの普及が法律上,政府の責務とされた以上,その費用は本来,国が全額負担すべきであるとの主張を,引続き強く求めていく。実際,オンライン資格確認におけるカードリーダー更新費用についても,昨年9月に三師会共同で全額補助を求める要望書が提出されている。
 医療DXの推進にあたっては,地域医療を守る観点から,すべての医師が現状の体制のままでも医療を継続できる環境を確保することが大前提である。

 この他,「MAMISについて」,「ACPとDNARの普及」など合わせて19の代表質問があり,活発な質疑応答が展開された。

2026年5月1日号TOP