2021年3月1日号
11月14日(土),各専門医会長との懇談会がWebで開催され,各専門医会から17名,府医から29名が出席。「新型コロナウイルス感染症」,「各専門医会からの意見・要望」をテーマに,活発な意見交換が繰り広げられた。
〈注:この記事の内容は11月14日現在のものであり,現在の状況とは異なる部分がございますのでお含みおきください〉
季節性インフルエンザと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が同時に流行した場合を想定し,府医では,できるだけ多くの医療機関に発熱患者等の診療を担っていただきたいとの基本的考えを示した上で,京都方式の診療・検査体制を説明した。
発熱患者の外来診療を担う「診療・検査医療機関」は,集合契約医療機関(行政検査実施)として申し出た中から京都府が指定。医療機関名は原則非公表であり,自院患者のみならず,紹介患者も受け入れる医療機関の調査が実施される。また,診療・検査医療機関には国からPPEが支給される。さらに,診療・検査医療機関では新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G-MIS)および新型コロナウイルス感染症等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)に必要な情報を入力・報告が必要である。
発熱患者は,まず,かかりつけ医に電話相談し,受診時にはマスクを装着する。医療機関は感染対策を講じ,他の患者と時間的・空間的動線を分ける工夫をする。
かかりつけ医を持たない患者は「きょうと新型コロナ医療相談センター」(以下,センターという)に連絡する。このセンターは,従来の帰国者・接触者相談センターに相当し,京都府・市は,別々にセンターを運営していたが,今回,府市協調でひとつに統合され,新たに設置された。
診療・検査が可能な医療機関においては,インフルエンザ迅速抗原検査に加えて,鼻腔拭い液を用いたCOVID-19抗原定性・定量検査または唾液によるPCR検査を実施。診療・検査が不可能な医療機関においては,京都府・医師会京都検査センターに連絡することにより,ドライブスルーによるPCR検査または,診療・検査が可能な医療機関へつなぐことになる。
最後に,インフルエンザ,COVID-19の疑い患者の検査について,それぞれの検体採取方法について図表を用いて説明し,かかりつけ医の感染防止を第一に考え,対応していただくよう協力を求めた。
◇内科医会より「きょうと新型コロナ医療相談センター」の役割と「京都府・医師会京都検査センター」の役割について質問があった。
「きょうと新型コロナ医療相談センター」は,基本的にかかりつけ医がいない患者を対象としており,また,夜間・休日も対応可能で,PCR検査が可能な医療機関を紹介している。
一方,「京都府・医師会京都検査センター」は医療機関からの相談を対象としており,PCR検査を実施している。現在,診療・検査できない医療機関から診療・検査可能な医療機関へ府医が紹介できる体制構築について検討している。
◇循環器医会より抗原検査とPCR検査を同時にする必要がある場合もあるだろうが,保険点数の制度上,できないようになっているため,改善が必要ではないかとの意見があった。
上記意見のとおり特殊な場合があるため,審査機関にも要望したいと考えているが,一般診療所での緊急性が高いわけではないため,要望がとおりにくい傾向にある。
◇精神科医会より新型コロナウイルス関連の情報共有について改善を求める意見があった。
個人情報保護の問題もあり,公表されにくく情報共有が難しい。例えば,学校でクラスターが発生しても,風評被害を避けるため行政区までは公表されない。これは全国的に起こっている問題であるが,府医として近隣医療機関には周知するべきと考えており,行政に強く要望していた結果,最近になって,行政区までは行政から地区感染症担当理事に報告されるようになった。
◇形成外科医会より新型コロナウイルスの感染症分類を見直すよう意見があった。
2類感染症から新型コロナウイルスを外した場合,感染者数や感染経路の追跡が難しくなるだけでなく,確実な治療薬もないため,リスクが高いため,今後の状況を見て段階的に下げていく必要があると考えている。
各専門医会から事前に提出のあった意見・要望について,府医の各担当役員が回答に応じた。詳細は次のとおり。
令和2年度診療報酬改定により小児外来診療料の算定対象が3歳未満から6歳未満に拡大された。京都府以外の市町村では,自己負担額が低額であることから,府医として京都市に対し子育て医療助成制度の拡充を予算要望している。
新生児聴力検査については,すでに京都府・京都市に公費負担を要望しており,京都市では今年度より公費助成が開始されている。一方,京都市外においては,与謝野町および井根町以外の体制整備が不十分であり,公費助成は行われていないため,京都府には引続き,要望している。
ハイリスク妊娠連携指導料は,精神疾患を合併した妊産婦(ハイリスク妊産婦)に対して,産科,精神科および自治体の多職種が連携して患者の外来診療を行う場合の評価として平成30 年度に新設された。
産婦人科医会は,ハイリスク妊娠連携指導料の算定基準が厳しく,算定のハードルが高い点を指摘し,一度,精神科医会との連携・協議の場の必要性を強調した。
精神科医会としても,産婦人科との情報共有は書面のみとなっており,十分な連携ができていないことを問題視していると述べた。特にカンファレンスの実施が重要と考えており,リモートでの実施も認められるような算定要件の緩和が必要との認識を示した。
両専門医会による協議の場を設けて積極的に連携することを確認した。
眼科医会より3歳児検診での屈折検査導入を推奨する動画の紹介の後,標記について説明があった。
平成3年度より弱視の早期発見を目的として,母子保健法による3歳児眼科検査が都道府県実施主体として開始され,平成19年度より市町村が実施主体となり,現在に至る。
視力は3歳までに大人と同等までになり,6歳までに完全に成熟すると言われている。ただし,これは乳幼児期に適正な視性刺激を受けた正常な場合であるため,早期発見が弱視の予防に重要であると言える。なお,弱視の主な要因は,屈折異常(特に遠視や乱視)である。
現在の3歳児検診における視力検査の一次検査の受診率は95%と高いものの,同検査が各家庭で行われているだけでなく,眼科医や視能訓練士といった専門家が参加しておらず,二次検査も保健師によって実施されているため,見逃されやすい状況にあり,実際に2~3割が見逃されていると言われている。また,子どもによっては,検査方法自体が難解である等実施が難しい場合もあるため,改善が必要であると考えられる。
その改善策としてフォトスクリーナーが有効であると言える。精度が高く,簡単に実施できるため,府医から京都府・京都市に導入に関して要望してほしい。
府医として,フォトスクリーナー発売当時から話題になっていたため,どのようなものか実態は把握している。新生児の聴覚検査と合わせてフォトスクリーナーの予算要望を行政にしている。小児科の半数以上がフォトスクリーナーを所持しており,自費になるが1ヶ月検診に活用している医師もいる。今後とも府医として推奨していく意向を示した。
京都府の現状について報告。
京都府においても,防災マップ等の作成を検討しているが,現状は各地区医での取組みを取りまとめるには至っておらず,地区によってばらつきがあることが課題である。今後,統合に向けてアプリの作成も含め検討を進めているが,このアプリも各医療機関の協力が必須となるため,各診療科においてそれぞれの課題が発生すると考えている。府医としては,専門医会の意見も反映させた上で行政と協議を進めていきたいとした。
府医が活用しているWeb会議システム(Cisco Webex Meetings)はライセンスの又貸しができないため,各専門医会でライセンスを取得する必要がある。
府医としてできるサポートとして,関連業者の紹介をすることはできる。一方,Webを活用した研修会におけるノウハウについては,現在のところサポートは行っていないが,今後は実施していきたい。
循環器病に関する基本法は平成30年度に制定され,本年10月27日に「循環器病対策推進基本計画」が閣議決定されたことにより,各都道府県で同計画を策定することが必要となった。
同計画における目標は,国民の健康寿命の延伸,年齢調整死亡率の低下であり,地域の実情に合った実効性のある計画を策定するために国から都道府県循環器病対策推進協議会の設置が求められている。
「循環器病対策推進基本計画」は,6年を目途に再検討を行うこととなっているが,京都府では,「保健医療計画」が3年目を迎えており,「循環器病対策推進基本計画」の閣議決定にともない,本年から内容の見直しを行うとともに,「循環器病対策推進協議会」の設置の準備も進められている。府医としても,同協議会の参画者の選定について協力しており,循環器や糖尿病の医師等の専門家や医師に参画してもらうことで,幅広く協議できるようにしたいと考えている。
循環器疾患では薬価が1点の抗血小板薬から高薬価の抗血小板薬,抗凝固薬まで同じ効能であっても多種ある。また,高血圧症,糖尿病,高脂血症,高尿酸血症,心房細動,心不全は合併する患者が多く,かかりつけ医として内科全般の管理をしてその投薬をすることになると,多数の内服薬を使用せざるを得ないことが多い。
府医では濱島副会長が委員として参画している日医社会保険診療報酬検討委員会からの要請を受けて,診療報酬改定の度に,専門医会や地区医に診療報酬改定に対する重点要望項目を伺い,近医連としてとりまとめた上で,日医へ提出している。
例えば,京都医報令和元年6月1日号に掲載しているように,内服薬7種類以上の処方箋料の逓減制の廃止を求めており,府医として今後も求めていく。
1つの案として,逓減制の廃止を要望するだけではなく,かかりつけ医は主病名が複数ある患者を診ているため,例えば「主病名1つにつき7種類まで認めること」を要望すれば,認められる内服薬の種類を拡大できることから,この方法も視野に入れて要望していきたい。
メーリングリストの運用については,低コストで運用開始できるものの,メールアドレスの管理等管理・運営には手間がかかる。また,会員全員にメーリングリストで情報を行き渡らせることは難しく,封書による方法も残した方が良い。
府医が行う事業と勤務医への支援などにおいて専門医会の協力が不可欠であることから,年に1度,会員数に応じて助成を行っている。
しかし,助成対象条件は府医会員数が専門医会会員数の半数であることだが,これを下回っている専門医会もわずかに見受けられる。今後,見直しの必要性も考えていることから,今後も府医会員への入会促進にかかる協力を専門医会に求めた。