2021年3月15日号
乙訓医師会と府医執行部との懇談会が11月16日(月),Webで開催され,乙訓医師会から23名,府医から8名が出席。「新型コロナウイルスワクチン」,「在宅医療を行っている医師が新型コロナウイルスに感染した場合のバックアップ体制」をテーマに活発な議論が行われた。
〈注:この記事の内容は11月16日現在のものであり,現在の状況とは異なる部分がございますのでお含みおきください〉
9月15日に新型コロナウイルスワクチンの接種を迅速に多くの国民に接種することを目的とした予算が閣議決定され,ワクチン接種体制確保事業を実施することが示された。
現在,各国で新たな手法によるワクチンを開発中だが,米モデルナ社・米ファイザー社・独ビオンテック社の3社が先行している。国内の研究開発・生産体制整備については,国が支援を行っている。
10月29日に米モデルナ社と日本で初の正式契約を結び,米ファイザー社・英アストラゼネカ社とは基本合意している。この3社が開発に成功すると,1億人分以上のワクチン接種量が確保されることになるが,現時点で有効性・安全性については不明確である。
接種に用いるワクチンは,新たな技術を活用した開発が進められており,これまで日本で承認されたワクチンとは大きく性質が異なるものと考えられる。また,接種実績が限られる状況では,ワクチンの有効性および安全性に係る情報も限られることも想定される。ワクチン接種の是非については,接種によって得られる利益(有効性)と副反応などのリスク(安全性)の比較衡量(リスク・ベネフィット)により判断する必要がある。最終的には個人の判断で接種されるものであることから,総合的に判断できる情報を提供することが必要である。
国の主導のもと必要な財政措置を行い,市町村が接種事務を実施し,都道府県は広域的観点から必要な調整を行う。各地区医は,地域の特性を踏まえて接種実施体制構築の検討・調整を市町村と行うことになる。
現時点で受託医療機関に必要な体制として,「ワクチンの冷蔵施設」,「予約時間枠の設定・被接種者の動線の検討等による3密対策」,「国が用意するシステムでの接種状況等の報告」などが想定される。これらに加えて,ワクチンには−70℃での保管が必要なもの,一度の配送量が多く,温度維持のためドライアイスの補充が必要なもの等,その特性に応じて体制を整えねばならず,輸送・管理体制の構築が今後の課題である。
2009年のインフルエンザワクチンの時とは異なり,一般医療機関や診療所で接種可能なのかも不明で,受託医療機関の決定方法等も未定である。集団接種で実施するとしても,会場の整備・人員確保の問題がある。接種整備体制について府・市と協議が必要と考えているが,診療・検査医療機関のG-MIS,HER-SYSのID発行や,陽性者増によるクラスター追跡で手一杯である。府・市と協議ができるよう,府医からは今後も現状を確認していく。
現在,府医では決まったバックアップ体制はなく,地区それぞれが運用している。今回,宇治久世医師会の取組みを紹介した。
宇治久世医師会では,在宅医療を行っている医師(以下,「在宅医」という)が感染した場合のバックアップ体制の構築に向け,協力医をリストアップし,患者の状態に応じてバックアップ対応できる医師を選出するなどの運用が検討されている。
在宅医の入院(療養)が短期間の場合と長期間となり,新たに主治医を決めなければならない場合に分け,短期間であれば,バックアップ医は看取り,医療的処置,緊急事態に限って対応する条件とされており,現在は少数の診療所で試験運用中だが,今後,希望される診療所に拡大する予定である。
なお,2月末現在,バックアップ体制はすでに運用を開始しているものの,幸い発動はされていない。
バックアップ体制の検討課題として,まず,医師が感染した場合の情報管理が挙げられる。「誰が・どこに・誰に・どこまで」説明と周知をするかは非常に難しいところだが,感染した場合,いずれはその地区に知れ渡る可能性が高く,様々なケースを想定し,どのように知らせるかの整理が必要である。
また,バックアップ医の報酬についても,コロナに限らず在宅医の事故・急病時も含め,診療報酬を標準に検討すればよいのではないかとの認識を示した。
支払基金と国保連合会双方における審査の平準化と個別指導における主な指摘事項についての資料を提供した。
また,療養費同意書交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書発行に理解と協力を求めた。