府市民向け広報誌『Be Well』第95号『子宮頸がん』

 府医では府民・市民向け広報誌「BeWell」,VOL.95「子宮頸がん」を発刊しました(本号に同封)。
 各医療機関におかれましては,本紙を診察の一助に,また待合室の読み物としてご活用ください。
 本誌に関するお問い合わせは,府医総務課(電話:075-354-6102,FAX:075-354-6074)までご連絡ください。

VOL.95「子宮頸がん」
(A3版,見開き4ページ)

解説

京都大学医学部附属病院 産科婦人科  山ノ井康二

1.子宮頸がんの疫学と予後
 子宮頸がんは,特に妊娠が可能な若い年代に多いことが特徴です。治療の主体は,早期の場合は手術療法,進行期の場合は手術療法と術後補助療法,または同時放射線化学療法,さらに進行している場合は化学療法になります。基本的には妊孕能を喪失する可能性は極めて高いです。また癌が子宮頸部に留まる場合の予後は比較的良好ですが,それを超えて拡がる場合は,予後が良いとは言えません。

2.発がんの予防とリスク軽減
 子宮頸がんが起きる原因は,ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染がほぼすべてです。100種類以上ある中で「ハイリスク」とされているものが13個あります。子宮頸がんはHPV関連のがんなので,その感染予防で発がんをかなり予防できます。実際に2000年以降世界中でワクチン接種が行われており,ワクチン接種後の子宮頸がん患者は明らかに減少傾向です。ワクチンの改良は年々進んでおり,最新のものは9価ワクチンと呼ばれるもので,より多くの型に対応しています。日本でも一時期は7割を超える接種率がありましたが,副事象への懸念から現在の接種率は1%以下になっています。近い将来,日本でのワクチン接種が普遍的に行われることが強く望まれます。
 子宮頸がんは,正常組織から突然がんに変化するのではなく,子宮頸部異形成と呼ばれる前がん病変を経てがんへと進展します。前がん病変からがんへの進展は年単位と比較的緩徐で,前がん病変の段階で見つけて治療することが十分可能です。前がん病変特有の自覚症状は基本的になく,検診以外では見つかりません。そのため,検診が非常に大事になります。

3.子宮頸がんに関わる検診とは
 子宮頸部は,診察で直接視認し,細胞を採取することが可能です。そのため,検診の有効性が科学的に証明されている,数少ないがんの一つです。検診ではがんを早期発見すること以上に,前述の前がん病変の段階を捉え,発がんを予防することが非常に大きな目的になっています。

4.がん検診の定期受診と早期発見・早期治療
 現在我が国のがん検診の受診率は決して満足のいくものではありません。対象年齢に達した方は定期的に子宮頸がん検診を受け,もし精密検査が必要と判定されたら,必ず精密検査を受けることが重要です。精密検査の対象の多くは,前がん病変の疑いであり,適切な治療によりほとんどが治癒可能で,妊娠する能力を保持した形の治療も十分検討できます。がんとなった状態では,前述のように非常に大きな治療を要することがあるため,前がん病変の段階で治療を適切に行うことが,非常に大事です。

 子宮頸がんは,予防可能ながんです。ぜひ検診および精密検査の受診勧奨のために,同封のBeWellを活用してください。

2021年3月15日号TOP