2021年3月15日号
新型コロナウイルスの感染が拡大している状況を踏まえ,臨時的な診療報酬の取り扱い(その35・36/2月26日付)が示されましたのでお知らせします。
具体的には,その35では,乳幼児感染予防対策加算(100点)の延長のほか,医療機関において「特に必要な感染症対策」を講じた上で診療を実施した場合,4月診療分から「医科外来等感染症対策実施加算(5点)」,「入院感染症対策実施加算(10点)」を算定できることなどが示されています。
また,その36では,①宿泊療養・自宅療養における診療の実態等を踏まえた対応として,「往診・訪問診療に係る評価」,「訪問看護に係る評価」,「酸素療法に係る評価」について②体外式心肺補助(ECMO)以外の重症管理を要する患者について,算定日数の上限を超える特定集中治療室管理料等の取り扱いなどについて示されています。
◇臨時的な取扱いその35
1.小児の外来における対応
「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その31)」(令和2年12月15日厚生労働省保険局医療課事務連絡。以下,「12月15日事務連絡」という。)において,6歳未満の乳幼児に対して,小児の外来診療等において特に必要な感染予防策を講じた上で診療を行い,「A000 初診料」,「A001 再診料」,「A002 外来診療料」,「B001-2 小児科外来診療料」又は「B001-2-11 小児かかりつけ診療料」を算定する場合,現行の要件を満たせば算定できる加算に加えて,乳幼児感染予防対策加算(100点)をさらに算定できることとされているが,新型コロナウイルス感染が拡大している間,小児の外来における診療等については,特に手厚い感染症対策を要することを勘案し,本取扱いを令和3年9月診療分まで継続する。
2.転院を受け入れた医療機関に係る評価
12月15日事務連絡で示した,新型コロナウイルス感染症から回復した後,引き続き入院管理が必要な患者を受け入れた医療機関において,必要な感染予防策を講じた上で実施される入院診療を評価する観点から,当該患者について,いずれの入院料を算定する場合であっても,二類感染症患者入院診療加算の100分の300に相当する点数(750点)を算定できることとすることについて,当面の間,継続すること。
3.各医療機関等における感染症対策に係る評価
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,全ての患者及び利用者の診療等については,特に手厚い感染症対策を要することを勘案し,特に必要な感染症対策を講じた上で診療等を実施した場合,令和3年4月診療分から9月診療分まで以下の取扱いとする。
なお,その診療等に当たっては,患者及び利用者又はその家族等に対して,院内感染防止等に留意した対応を行っている旨を十分に説明すること。
(1)外来診療等及び在宅医療における評価
①特に必要な感染予防策を講じた上で診療を行い,下記の点数を算定する場合,「医科外来等感染症対策実施加算(5点)」をさらに算定できることとする。(ただし,★印については,アからウまでに該当する点数と併算定しない場合に限る)。
ア 初診料 イ 再診料(電話等による再診を除く) ウ 外来診療料
エ 小児科外来診療料 オ 外来リハビリテーション診療料 カ 外来放射線照射診療料
キ 地域包括診療料 ク 認知症地域包括診療料 ケ 小児かかりつけ診療料
コ ★救急救命管理料 サ ★退院後訪問指導料 シ 在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(Ⅱ)
ス ★在宅患者訪問看護・指導料,同一建物居住者訪問看護・指導料
セ ★在宅患者訪問点滴注射管理指導料 ソ ★在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料
タ ★在宅患者訪問薬剤管理指導料 チ ★在宅患者訪問栄養食事指導料
ツ 在宅患者緊急時等カンファレンス料 テ ★精神科訪問看護・指導料
②特に必要な感染予防策を講じた上で訪問看護を行い,訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の下記の費用を算定する場合,30回の算定につき「訪問看護感染症対策実施加算」(1500円)をさらに算定できることとすること。
ア 訪問看護基本療養費 イ 精神科訪問看護基本療養費
(2)入院診療における評価
特に必要な感染予防策を講じた上で診療を行い,下記の点数を算定する場合,1日につき「入院感染症対策実施加算」(10点)をさらに算定できることとすること。
ア 医科点数表の第1章第2部第1節に規定する入院基本料
イ 医科点数表の第1章第2部第3節に規定する特定入院料
ウ 医科点数表の第1章第2部第4節に規定する短期滞在手術等基本料
4.その他の診療報酬の取扱いについて
問1 3について,患者及び利用者の診療等において,「特に必要な感染予防策」とは,どのようなものか。
(答) 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」等を参考に,感染防止等に留意した対応を行うこと。
(感染防止等に留意した対応の例)
・状況に応じて,飛沫予防策や接触予防策を適切に行う等,感染防止に十分配慮して患者及び利用者への診療等を実施すること。
・新型コロナウイルス感染症の感染予防策に関する職員への周知を行うこと。
・病室や施設等の運用について,感染防止に資するよう,変更等に係る検討を行うこと。
問2 3(1)①について,外来診療において特に必要な感染予防策を講じて診療等を行う医療機関において,「新型コロナウイルスの感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(令和2年4月10日厚生労働省医政局医事課,医薬・生活衛生局総務課事務連絡)に基づき,電話や情報通信機器を用いた診療を実施した場合,医科外来等感染症対策実施加算を算定することができるか。
(答) 算定できない。
問3 3(1)②について,特に必要な感染予防策を講じた上で訪問看護を行う訪問看護ステーションにおいて訪問看護感染症対策実施加算を算定する場合にどのような取扱いとなるか。
(答) 各利用者について,令和3年4月1日以降に,1回目の訪問看護を行い,訪問看護基本療養費又は精神科訪問看護基本療養費を算定した日に訪問看護感染症対策実施加算を算定することができる。その後は,訪問看護基本療養費又は精神科訪問看護基本療養費の30回の算定につき1回,訪問看護感染症対策実施加算を算定することができる。
訪問看護療養費明細書の訪問看護情報提供療養費2の記載欄に算定回数及び算定金額を記載するとともに,「心身の状態」欄に以下の例により訪問回数を記載すること。
「心身の状態」欄への訪問回数の記載例:
例1)訪問1回目(4月1日)につき,訪問看護感染症対策実施加算を算定
例2)訪問31回目(5月10日)につき,訪問看護感染症対策実施加算を算定
例3)訪問1回目(5月1日)及び31回目(5月31日)につき,訪問看護感染症対策実施加算を2回算定
問4 3(1)①の在宅患者訪問看護・指導料,同一建物居住者訪問看護・指導料,精神科訪問看護・指導料及び3(1)②の訪問看護基本療養費,精神科訪問看護基本療養費について,特に必要な感染予防策を講じた上で訪問看護を行う医療機関又は訪問看護ステーションにおいて,「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その14)」(令和2年4月24日厚生労働省保険局医療課事務連絡)問7又は「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その21)」(令和2年6月10日厚生労働省保険局医療課事務連絡)問2に基づき,看護職員が電話等で病状確認や療養指導等を行い訪問看護管理療養費又は訪問看護・指導体制充実加算のみを算定した場合,医科外来等感染症対策実施加算又は訪問看護感染症対策実施加算を算定することができるか。
(答) 算定できない。
なお,訪問看護ステーションにおいては,当該電話等による場合について,訪問看護感染症対策実施加算の算定に係る30回の訪問看護の回数に算入しないこと。
問5 3(2)について,入院患者の外泊期間中はどのような取扱いとなるか。
(答) 外泊期間中は,入院感染症対策実施加算は算定できない。
問6 3(2)について,DPC対象病院の病棟においては,どのような取扱いとなるか。
(答) 厚生労働大臣が指定する病院の病棟における療養に要する費用の額の算定方法(平成20年厚生労働省告示第93号)により算定する患者についても,入院感染症対策実施加算は算定できる。
問7 1及び3,2及び3について,それぞれの算定要件を満たした場合,併算定できるか。
(答) 併算定できる。
◇臨時的な取扱いその36
問1 在宅医療の部に掲げる診療報酬点数のうち,算定できる患者を,通院が困難な者であること又は疾病・負傷等のために通院による療養が困難な者としているものについて,対象となる患者が,感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第44条の3第1項又は第2項の規定に基づき,宿泊施設又は当該者の居宅若しくはこれに相当する場所から外出しないことを求められている者(以下「自宅・宿泊療養を行っている者」という)である場合には,当該要件を満たすものと考えてよいか。
(答) よい。
問2 自宅・宿泊療養を行っている者に対して,当該患者又はその看護に当たっている者から新型コロナウイルス感染症に関連した訴えについて,往診を緊急に求められ,速やかに往診しなければならないと判断し,これを行った場合,緊急往診加算は算定できるか。
(答) 算定可。
問3 自宅・宿泊療養を行っている者に対して,主治医の指示に基づき訪問看護ステーション又は医療機関が緊急に訪問看護を実施した場合,緊急訪問看護加算を算定できるか。
(答) 算定可能。なお,当該加算は診療所又は在宅療養支援病院の保険医による指示である場合に限って算定が可能であるが,この場合において,新型コロナウイルスの感染が拡大している状況に鑑み診療所又は在宅療養支援病院の保険医以外の主治医からの指示に基づく場合であっても算定可能とする。
問4 自宅・宿泊療養を行っている者に対して,主治医の指示に基づき訪問看護ステーション又は医療機関が訪問看護を実施した場合,「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その14)」(令和2年4月24日厚生労働省保険局医療課事務連絡。以下「4月24日事務連絡」という)問6に係る特別管理加算等の算定はどのような取扱いとなるか。
(答) 4月24日事務連絡問6の取扱いと同様に算定可能。
問5 自宅・宿泊療養を行っている者に対して,在宅酸素療法に関する指導管理を行った場合,在宅酸素療法指導管理料2「その他の場合」(2,400点)を算定できるか。
(答) 算定可。ただし,この場合において,新型コロナウイルス感染症の自宅療養・宿泊療養に係る対応である旨及び在宅酸素療法が必要と判断した医学的根拠をレセプトの摘要欄に記載すること。
問6 問5の場合において,酸素ボンベ加算,酸素濃縮装置加算,液化酸素装置加算,呼吸同調式デマンドバルブ加算又は在宅酸素療法材料加算を算定できるか。
(答) 使用した場合には算定可。
問7 自宅・宿泊療養を行っている者であって,「在宅酸素療法指導管理料 2 その他の場合」以外の第1款各区分に掲げる在宅療養指導管理料のいずれかの所定点数を算定するものに対して,在宅酸素療法を行う場合に,酸素ボンベ加算,酸素濃縮装置加算,液化酸素装置加算,呼吸同調式デマンドバルブ加算又は在宅酸素療法材料加算を算定できるか。
(答) 使用した場合には算定可。ただし,この場合において,新型コロナウイルス感染症の自宅・宿泊療養に係る対応である旨及び在宅酸素療法が必要と判断した医学的根拠をレセプトの摘要欄に記載すること。
問8 新型コロナウイルス感染症患者を障害者施設等入院基本料を算定する病棟に入院させた場合,どの入院基本料を算定するのか。
(答) 「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」(令和2年2月14日厚生労働省保険局医療課事務連絡)問1の「診療報酬上の施設基準の要件を満たさない患者が入院した場合」の「特定入院料を算定する病棟の場合」に準じ,障害者施設等入院基本料を算定する病棟のうち,7対1入院基本料又は10対1入院基本料を算定する病棟に入院させた場合は急性期一般入院料7,13対1入院基本料を算定する病棟に入院させた場合は地域一般入院料2,15対1入院基本料を算定する病棟に入院させた場合は地域一般入院料3をそれぞれ算定することとして差し支えない。なお,入院料の変更等の届出は不要である。
問9 令和3年1月22日付事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その34)」の問3において,「新型コロナウイルス感染症患者として入院措置がなされている患者であって,特定集中治療室管理料等(救命救急入院料,特定集中治療室管理料,ハイケアユニット入院医療管理料,脳卒中ケアユニット入院医療管理料,小児特定集中治療室管理料,新生児特定集中治療室管理料,総合周産期特定集中治療室管理料又は新生児治療回復室入院医療管理料をいう。以下同じ)の算定日数の上限を超えてもなお,体外式心肺補助(以下「ECMO」という)を必要とする状態である場合や,ECMOは離脱したものの人工呼吸器からの離脱が困難であるために特定集中治療室管理料等を算定する病室での管理が医学的に必要とされる場合」に,「算定日数の上限を超えても,特定集中治療室管理料等を算定してよい」とされているが,人工呼吸器管理に加えて急性血液浄化を必要とする状態である場合及び急性血液浄化から離脱したものの人工呼吸器からの離脱が困難であるために特定集中治療室管理料等を算定する病室での管理が医学的に必要とされる場合について,どのように算定すればよいか。
(答) 算定日数の上限を超えても,特定集中治療室管理料等を算定してよい。なお,この取扱いは,本事務連絡(新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その36))の発出日以降適用される。